指数のお話

ダウ平均と日経平均株価は、既得利権の株価指数なのか?

2023年5月24日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

『平均』とは単純そうに見えて、
なかなかに複雑です。

まずはこんな練習問題から。
(ロイター記事 4月18日付)

 

 

記事は、
3月の首都圏新築分譲マンションの平均価格が、前年に比べて2.2倍の1億4360万円になった。と伝えています。

 

 

でもこれって・・?

 

『単純平均』ですね。

 

 

 

 

マンション価格が相対的に高い東京の、
しかも一等地にある、

「三田ガーデンヒルズ」や世界貿易センタービル跡地の「ワールドタワーレジデンス」の販売価格が『平均』を押し上げている旨、記事は記しています。

 

平均価格 1億4360万円!
と言われても、

首都圏の新築マンション価格の、
本当の「平均価格帯」が伝わりにくい側面があるのです。

 

 

これと同じように、
日経平均株価や米国のダウ平均も
『単純平均』の株価指数であるため、

マーケットの温度感が(実は)伝わりにくい面があります。

 

 

 

 

ウォール・ストリート・ジャーナルの記事

 

投資家はなぜ間違った株式市場を追うのか?
ダウは必ずしも最適な目安ではない

 

から拾ってみましょう。

 

 

ダウの精彩を欠くパフォーマンスは
その特異な設計にある。

 

 

同指数を構成する30銘柄の比重は
時価総額によって決定されず、
S&P500のように大企業ほど比重も大きくなる仕組みではないのだ。

 

 

ダウでは、株価が高い銘柄ほど大きな比重を占める。

 

最後の、

ダウでは、株価が高い銘柄ほど大きな比重を占める。

がポイントになります。

 

 

米国『ダウ平均』で、
もっとも大きな比重を占める企業は「アップル」ではなく、
医療保険大手の「ユナイテッドヘルス・グループ」なのだそう。

その理由は、
株価が480ドル前後と高いためです。

 

 

 

 

 

いっぽう『日経平均株価』も、
同じような構造を持ちます。

 

日経平均では、
株価が高い銘柄ほど大きな比重を占めるようになります。

 

日経平均株価で
最も大きな比重を占める企業は

トヨタではなく、
ユニクロのファーストリテイリングです。

(株価が35000円前後と高いためです)

 

 

ところで、株価指数 = 市場平均ですが、

 

今日の『市場平均』の考え方の主流は
もはや日経平均株価やダウ平均ではありません。

 

 

株式市場における、
各上場会社の「影響度」に沿った、

いわゆる 時価総額(会社の規模)の大きさに『比例』した、市場平均を構成するという考え方が主流になっています。

 

 

これが
『時価総額・加重平均方式』です。

 

 

 

 

S&P500やナスダック指数、
日本だとTOPIX(東証株価指数)がこの時価総額加重平均方式に則っています。

 

この種の「市場平均」のほうが効率性に勝り、また
マーケットの温度感をよりフェアに伝えることが可能です。

 

過熱してしまった市場の「昂ぶり感」や、
収縮してしまった市場の「冷え込み感」がより如実に現れやすいのです。

 

 

 

 

 

次に、
『金融商品』という観点で捉えてみましょう。

 

ここでは
米国の「インデックスファンド」や「ETF」にフォーカスします。

 

アメリカ人が金融商品として
どの『市場平均』を選好するかでいえば、
これはもう、
時価総額加重平均型の「株価指数」の圧勝です。

 

 

それが証拠に、

単純平均である「ダウ平均」の
インデックスファンドやETFはほんのわずかしかありません。

 

米国のETFやインデックスファンドのほとんどが、
S&P500をはじめとする
時価総額加重平均型の『平均』を採用しているのです。

 


(ちなみに、
マイクロソフト、アップル、アマゾン、
グーグル(アルファベット)、メタ、エヌビディアの6社のうち、

『ダウ平均』に採用されているのは
マイクロソフトとアップルのみです。)

 

 

 

 

 

このように投資家目線からは
『単純平均』の魅力はもはや乏しくなっているのに、

どうして「ダウ平均」は
米国のニュースで『第一の』市場平均として伝えられるのでしょうか?

 

 

それは
この100年がそうだったから。

 

としか言いようがありません。

 

 

つまり「単純平均」の株価指数は、

 

すでに市場平均を伝える最適な指数ではなくなっているのに、その知名度の蓄積から、いわば既得利権化し、
(アメリカでは)市場平均=ダウ平均と、(日本では)市場平均=日経平均株価となっているため、これら既成事実に、誰もNOと言えなくなっている状態なのです。

 

 

私たち投資家は、より効果的、かつ網羅的な『市場平均』を、第一の指数として見聞きする権利はないのでしょうか。

いや、まずは私たち自身が「単純平均」にNO、「加重平均」にYESと声を上げていく必要があるのです。

 

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