投資信託あれこれ

アメリカ人が最初から投資好きだったわけではありません

2024年9月27日

 

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

 

日本とアメリカを
「投資」という物差しで比べると、

アメリカ人 ⇒  投資になじんでいる
日本人   ⇒  投資が不得手

という『印象』があるかもしれません。

 

でも、ホントにそうなのでしょうか?

 

 

 

 

 

1960年代終わりから1970年代にかけて、
ベトナム戦争の泥沼にはまった米国は、
株式市場の「冬の時代」を迎えていました。

 

※ ダウ平均は1972年に
1000ドルに達しますが、

1982年になるまでなんと10年間も
「長期の停滞相場」から抜け出せませんでした。

 

 

 

 

 

当時、米国人の個人金融資産に占める
『投資信託の割合』は
1%~2%ほどしかなかったのだそう。

 

規制緩和や抜本的な改革は、
その分野が行き詰まっている時に起こるといいますが、

1971年にアメリカではMMF
【マネー・マーケット・ファンド】が誕生します。

 

 

MMFとは
米国債、譲渡可能定期預金証書(CD)、
コマーシャル・ペーパーなどを組み入れた、
アメリカ人にとっての
元本確保型投資信託のこと。

 

 

預金に比べ
高めの利回りが期待できるため、
まだ株式にアレルギーがある人たちに好意的に迎え入れられました。

 

 

 

 

 

 

このMMFこそが
アメリカ人のお金が、

銀行業界から、
証券業界へシフトする
『きっかけ』を作ったのです。

(その後、MMFの隆盛によって
預金金利自由化の流れも堅固になっていきます)

 

※ そういえば日本でも、
1980年代に、

中期国債ファンド
公社債投信などの
元本確保型の『投資信託』が流行りましたね。

 

 

現在、アメリカは
『投資信託王国』というにふさわしいほど、
投信のマーケット規模が巨大になっています。

 

国際投資信託協会(IIFA)によると、
2024 年6月末現在の
世界の規制オープンエンド投資信託の残高は70.20 兆ドル。

そのうち半分以上、
約36.2兆ドルがアメリカの投資信託です。

 

 

 

画像元:投資信託協会

 

 

「やっぱアメリカ人って投資が好きなんだ。」
と思われがちですが、

 

実は「投資」を促すインセンティブが
時代とともに少しずつ浸透し、
国民が徐々に重たい腰を上げた。というのが実情なのです。

 

 

では、どんな【インセンティブ】があったのか?

 

 

1.1975年に
株式の売買委託手数料が自由化。
(金融市場に『競争原理』が働き始める)

2.1978年に、
確定拠出年金制度
401(k)プランが導入される。

 

3.1974年、税制優遇がある
個人退職口座(IRA)が誕生。

4.1980年代以降、
アメリカ株式市場が長期の右肩上がりに。

 

特に、
確定拠出年金(401(k)プラン)の整備が重要でしょう。

 

 

 

 

 

401(k)プランには『税制優遇』があり、
(雇用主が)マッチング拠出をしてくれれば、
その拠出分は実質「ただ」で投資が可能になったのです。

 

401(k)プランの
マッチング拠出の威力については
こちらの記事で詳述しています。

 

 

 

歴史を振り返れば、
多くのアメリカ人は
401(k)プランを通じて【投資】と出会っている。といっても過言ではありません。

 

そういえば、

フィデリティ・インスティテュートの浦田春河さんの『コラム』には次の一節があります。

 

 

米国の確定拠出年金(DC)マーケットで
ターゲットデートファンド(TDF)がデフォルトファンド(指定運用方法)の9割を超え、

 

新規掛金の6割、資産残高の4割を占めていることをお伝えしました。

 

 

ターゲットデートファンドとは、
年齢が上がるに従って
株式の比率が下がっていく『バランスファンド』のことです。

 

多くのアメリカ人は
このようなシンプルな投資信託で、シンプルに運用しているわけです。

 

 

 

 

 

米国人が特別「投資」に詳しいとか、
「リスク選好タイプ」というわけでは決してありません。

 

国全体で『便利なインフラ』が少しずつ構築され、

投資をコツコツ続ける→リターンとして報われるという『成功体験』を、時間をかけて多くの人が共有してきたにすぎないのです。

 

 

日本でもようやく「資産形成」が

地に足のついた、一般人の行いとして浸透してきています。

 

投資信託を保有し、
長期投資にいそしむ人が今後増えていくことは間違いないでしょう。

 

それはとても喜ばしいことです。

 

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