投資信託あれこれ

将来、投資信託は『分配金』出すべしと義務化される可能性について

2024年5月17日

 

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

株式には「配当金」があります。

その流れで
投資信託に「分配金」があってしごく当然でしょう。

 

米国の投資信託、米国のETFとも
年2回とか年4回とか、
定期的に「分配金」を出しています。

※これは法令で義務付けられています。

 

日本国内で設定されるETFも
コモディティ系でない限り、
基本「分配金」を出しています。

 

 

 

 

 

ところが、
国内設定のインデックスファンドは、

この10年ほどで
とみに『分配金』を出さなくなりました。

 

これは別に
『分配金』の原資が枯渇したとかではなく、

わざと『分配金』を出さないようにしているわけです。

 

 

わざと『分配金』を出さないようにしている。

 

この部分の日本語表現には
実は深い「意味」があります。

 

 

ファンド運用会社は決して、

当ファンドは『分配金』を出しません。

とは明言しません。

 

通常、以下のような言い方をします。

 

 

 

画像元:フィデリティ・日本成長株・ファンド
第26期 運用報告書

 

 

そして、
このフィデリティ・日本成長株・ファンドは

第1期から第26期まで、
毎年上記のような文言を繰り返して、

結果一度も「分配金」を出していないわけです。

 

 

 

 

画像元:フィデリティ投信

 

 

どうして
当ファンドは『分配金』を出しません。と明言しないの?

 

とあなたは思われるかもしれません。

 

 

もし『それ』を宣言してしまうと、
投資信託という製品の「ガイドライン」から外れることになってしまうためです。

 

投資信託という製品のガイドライン(分配金について)

 

・投資信託は毎期「決算」を行います
・決算毎に「分配金」を出す機会が訪れます
・「分配金」を出すか出さないかは運用会社が任意に決めます
・「分配金」を出す場合は
普通分配金、元本払戻金のいずれかになります
(※課税されるのは「普通分配金」のみ。)

 

これが『ガイドライン』です。

 

 

 

 

 

「分配金」を出すか出さないかは
運用会社が任意に決める。

とありますが、

 

さすがに
『分配金を出さない』をずっと続けるのも、運営形態として不自然です。

 

不規則でもいいですから、
『分配金』は出してくださいね。

 

という暗黙の了解が、
投資信託を監督する官庁にはあるのではないでしょうか。

 

 

いや、もっとはっきり言いますと、

 

米国にしろ日本にしろ、

 

世界中でなぜ、
投資信託やETFに『分配金』というしくみが内在するかといえば、
『分配金』が国にとって
徴税機会となるためです。

 

 

何も驚くことはありません。

 

 

個別株式の場合は
「配当金」が出来るたびに、国は徴税機会を得ています。

 

 

 

 

 

投資信託は『分配金』ありき。

 

有価証券の税制全般から見れば、
上記はしごく自然な姿に見えます。

 

 

だったらなぜ、
毎年毎年『無分配』にして、
結果長年「分配金」を出していない姿勢が容認されているの?

 

 

ハイ、いいご質問です。

 

(これはあくまで個人の推測ですが)
『無分配』としている投資信託が、
まだまだ少数派だからでしょう。

 

 

昨今、インデックスファンドの隆盛が顕著ですが、

仮に、
投資信託の純資産残高において、

「分配金」を出さないインデックスファンド、「分配金」を出さないアクティブファンドの比率が大きくなってしまえば、

 

国としては、
潜在利益(税収)の『逸失』が顕著になります。

 

 

以下、あくまで私見であることを
ご承知おきください。

 

今後、インデックスファンド(分配金なし)の影響度があまりに大きくなれば、

私は『分配金』を出すことを義務付ける方向に、法令が改正される可能性があると考えます。

 

 

 

 

 

もちろん、
個人投資家にとっては
『無分配』のほうが有利なのですよ。

 

株式インデックスファンドが持つ、

何百、何千という個別株式から出る「配当金」を原資として、ファンドの外に『分配金』を吐き出すと、

それに対して、
課税されます(普通分配金の場合)。

 

 

いっぽう『無分配』であれば、

個々の株式の「配当金」が
ファンド内で再投資されるため、
より効果的に運用ができることになります。

 

「税」をめぐる攻防は、ヒトが紡いできたもっとも古い物語の一つなのです。

 

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