投資信託あれこれ

超高齢化の影響をやっぱり受けてる?(なぜ投資信託の『純資産額』はぐんぐん伸びていかないのか?)

2023年4月19日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

今日はマクロの話です。

 

わたしは時々『投資信託協会』のサイトを見ます。

同協会のコンテンツ
数字で見る投資信託」をチェックするためです。

 

 

ここで注目するのは 総合計(公募投信全体)の『純資産残高』です。

 

2023年2月末現在、それは

164兆8600億円でした。

 

 

 


次に、公募投資信託全体の『純資産額』を時系列で拾ってみましょう。

(単位は兆円。%の数字は前年同月比の増減率です)

 

 

23年2月  164.8 +6.6%
22年2月  154.5 +5.9%
21年2月  145.9 +25.9%

20年2月  115.9 +2.9%
19年2月  112.6 +2.8%

 

いかがでしょうか?

 

2020年2月から21年2月の増加率が凄まじいですね。

いわゆる『すごもり需要』です。

 

後年振り返ってみると、「ワタシ、ちょうどコロナの時に積立投資を始めたんです!」という人がかなり多かったことを実証できるかもしれません。

 

 

 

 

 

ちなみに『つみたてNISA』のスタートは2018年なのですが、コロナ前は純資産残高は大して増えていません。

 

 

コロナ禍が契機となって、投信全体への資金流入が加速した側面があるでしょう。

 

 

それでも、です。

ネット証券の口座開設数の顕著な増加や、ファンド積立金額の増加や、インデックスファンドの普及を通じた投資家層の広がりというイメージからは、

 

ちょっと期待外れな『純資産額』の伸び方だと思いませんか?

 

「Why(なぜ)?」

 

 

投資信託に触れる人、
実際にファンドを購入する人は着実に増えているのに、投信全体の『純資産額』の伸びは・かなり・ゆるやか。

 

この訳を突き止めるためには、ちょっと場所を移動して『マクロ的』に捉えてみる必要がありそうです。

 

 

 

 

おそらく「答え」は・・、

 

65歳以上のシニアの方々が、随時ファンドを解約しているためです。

 

あなたもわたしも高齢になってくれば、手持ちの投資信託を少しずつ解約していくことになります。)

 

 

日本の『投資信託事情』は少々いびつで、これまで投資信託の多くを保有してきたのは「シニアの人たち」でした。

 

その人たちが部分的にしろ、不規則にファンド解約を続ければ、投信全体から見た、純資産総額低下への「圧力」は大きなものとなります。

 

 

もちろん
投資信託を買っている人は増え続けています。

 

ただ、ファンド総額を押し上げようとする
この圧力に負けないくらい、
ファンドの解約勢力が存在していて、

両者が大いなる『綱引き』を行っている・・

これが日本の投信業界の現実ではないでしょうか。

 

 

今は世界の株式市場が何とか持ちこたえていますが、仮にマーケットが大きな調整局面を迎え、それがしばらく続いたりすると、

(もしかすると)公募投資信託全体の『純資産額』が、前年同月比でマイナスに沈むこともあり得るとわたしは考えます。

 

本来は『純資産総額ベース』で見たファンドの保有者が、若年層からシニアまで幅広くばらけていればよいのですが、

日本はこれまで全然「そうはなっていませんでした。」

 

 

そのツケを、今払わされているのです。

 

 

 

 

 

20年前、いやたとえ10年前でも、


資産形成途上にいる30代、40代の『生活者』が、

ファンド保有者として投資信託の販売会社に手厚く扱われ、大切にされてきたかというと、そんな痕跡は(残念ながら)ほとんど確認できません。

 

 

現役世代の投資信託の『保有割合』が大きくなり、シニアのそれを抜き去るにはまだ相当の時間がかかることでしょう。

 

しかし、それは(いつか)必ず訪れるのです。

 

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