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【パート1】私は社債は買いません、劣後社債も買いません、AT1債(永久劣後社債)も買いません

2023年4月15日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

株式と違って、
債券って分かりにくいです。

 

ぼやぁっと靄がかかったようで、
リスクとリターンの所在が曖昧な感じがします。

 

 

 

 

 

今日(4月15日)現在、
SBI証券のページを見ると、
大きく「ソフトバンクグループの劣後社債」のバナーが貼られています。

 

 

 

 

これは、
会社が発行する債券(社債)なのですが、

「普通社債」とは異なります。

 

 

当該社債は私たち投資家に
さまざまな「不利な要素」を含んでいます。
だからこそ、利率が4.75%(当初5年)と
不釣り合いに高いわけです。

 

 

わたしなら
「ソフトバンクグループの劣後社債」のような金融商品は買いません。

 

 

その理由に辿り着くために、
少し長くなってしまうのですが、

長めの『債券の旅』にお付き合い願えませんか?

 

 

まずは、
「普通社債」の話から始めます。

 

普通社債とは、
特定の会社(1社)がふつうに発行する債券です。

 

 

 

 

たとえば5年物の普通社債が
どの程度の「利率」を提示してくるかは、
その会社の『信用度の高さ』によって違ってきます。

 

 

・・今仮に、
5年物の国債の利率が「0.5%」としましょう。

 

 

トヨタ自動車の
5年物の普通社債なら、

利率は「1.1%」位になるかもしれません。

 

でも、
名前も聞いたことがないような、

 

従業員80人くらいの
「ABCフィナンシャルサービシー株式会社」の
5年物普通社債の利率は・・

「6%」位にしても、
買い手が付かないかもしれません。

 

 

つまり?

 

つまり、
貸したお金が返ってくるかどうかの
『信頼度の高さ』によって、
債券の「利率」は違ってくるわけです。

 

 

以下、別の事例です。

<あくまでフィクションです>

 

〇 5年物の国債 利率「0.5%」

〇 ワタミ株式会社の
5年物の普通社債 利率「2.6%」

 

 

「カンさん。
これって5年後にワタミが潰れていなければ、
年に2.6%の利率が確定なんでしょ。
国債を買うよりもお得じゃないですか!」

 

 

というコメントを聞かれたら、
あなたはどうリアクションされますか?

 

これって・・

単に「0.5%」と「2.6%」の
利率の差だけではないです。

 

 

以下、普通社債の『問題点』をいくつか列挙します。

 

1.信用リスクの大きさをどうやって計る?

 

国が発行する債券(国債)も、
「もう利息払いません、もう借金返せません!」というデフォルトリスクは有しています。

 

しかし、
国のデフォルトリスクの大きさと、

普通社債の発行元である
「ワタミ(株)」のデフォルトリスクの大きさは明らかに違います。

 

 

両者の、
デフォルトリスクの大きさの「差」を、あなたは正確に計れますか?

 

 

 

 

 

例に挙げた「ワタミ(株)」ですが、
時価総額が400億円弱ある中規模の上場企業です。

 

もしもあなたが、

国と、ワタミ(株)の
デフォルトリスクの大きさの「差」を正確に計ることが出来て、

 

かつ、その「差」が
5年ものの債券の利率の『差』として
正確に反映されていると感じるなら、

ワタミの普通社債を購入するのはアリかもしれません。

 

 

2.社債は流動性に劣ります

 

国が発行する債券(国債)の
売り買いのしやすさは、

あらゆる債券の中でもっとも高いです。

(これを『流動性の高さ』と云います)

 

多様な買い手、売り手が常時居てくれて、
毎日「市場価格」が付くという安心感があります。

 

ですので、
国債を買って、
仮に満期の前に売却する必要に迫られても、

「市場価格」で現金化 ⇒「出口」が見えているわけです。

(国債という金融商品の『マーケット』が成立していると云えます)

 

 

 

 

ところが、
普通社債の『流動性』は大きく劣ります。

 

(そもそも、)たった一社が発行する債券(社債)に、多様な買い手、売り手が常時居るわけではありません。

 

社債市場全体で見ても、
その規模は小さく、

多種多様な売り買いに応える「マーケット」が成立しているとは言い難いです。

 

毎日毎日『市場価格』が成立するわけではないので、

 

もしも満期の前に
ワタミの社債を売却するとなると、
相応に低い価格で証券会社に買い取ってもらうより他ありません。

 

(これが『流動性』の欠如です。)

 

 

どうして満期前に
適正な価格で売却できるか否かの話をするかというと、

『デフォルトリスク』が発露した際に、
その企業が発行する株式なり債券なりを、

 

「市場」の中で
売却し切れるかどうかが至極重要だからです。

(要は『損』をしてでも逃げ切れるかどうか・・)

 

 

ワタミを例に挙げれば、

ワタミの株式と比較しても、
ワタミの債券(普通社債)は明らかに換金性に劣ると云えるでしょう。

本当に「2.6%」の利率で割に合うのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

3.社債にどれだけのコストがかかっているか分からない

 

昔あるお客様が、

「カンさん。
社債って販売手数料がかからないから有利な商品では?」

と言われたことがあります。

 

しかしそれは間違いです。

 

たとえば上例の

 

ワタミ株式会社
5年物の普通社債 利率「2.6%」(架空の例)

 

でいえば、

 

販売元の証券会社が
まとまったロットで「社債」を引き受けているわけです。

 

いわば『卸元』にあたり、
自分たちが購入した価格よりも
高い値段で一般投資家に販売しているわけです。

 

 

換言すると、

例えば 普通社債 利率「2.8%」相当で仕入れた商品を、より高い価格 = より低い利率「2.6%」で販売する。

といったようなイメージになります。

 

 

 

 

誤解がないように申し上げれば、利益をのせること自体が悪いわけではありません。

いくらぐらいの利益が上乗せされているか = 私たちの側の「コスト負担量」がいかほどなのかが定かでないところが、恐いのです。

 

 

普通社債の問題点は、価格(利回り)の『妥当性』が正確に判断できないところにあります。

 


わたしなら「普通社債」であっても投資対象として購入することはないでしょう。

続く・・)【パート2

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