ポートフォリオ運用, 世界投資的紀行

意外としぶとい『ホームバイアス現象』とは?

2023年3月24日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

日本人が、日本(国内)の資産に
親しみを覚えるのは当然でしょう。

 

株式を例に挙げると、日本の会社なら、会社名を聞けばどんな「商品・サービス」を提供しているかがすぐに分かりますし。

(投資対象が「身近」に感じられるわけです)

 

「あのさ、南米のチリに有名な缶詰会社があるんだけど・・」と言われても、ぜんぜんピンときません。

 

 

 

 

 

では、です。

 

 

その会社を「よく知っている」ことと、
その会社の「株価」が上がることに、
なにか因果関係はあるのでしょうか?

 

(残念ながら)

因果関係はありません。

 

 

突然ですが、
あなたもわたしも「生粋のドイツ人」で、
生まれたときからミュンヘンに住んでいると妄想してください。

(ビールとソーセージが大好き!)

 

 

 

 

そんな私たち(ドイツ人)が
カフェでおしゃべりしていると、
友人のシュミットさんが偶然通りかかりました。

3人はしばしカフェで『投資談義』です。

 

 

しつもん!)
ドイツ人の3人が、
カフェで株式の話をする際、
どこの国の株の話をすると思いますか?

 

1.日本
2.ドイツ
3.アメリカ

 

どうでしょう?

たぶん2.のドイツではないでしょうか。

 

なぜなら、自分たちの国の会社が
もっとも馴染みがあるためです。
(情報量も一番多いはず!)

 

 

あなたが「中国人」だったとしても同じでしょう。

上海の浦東のビジネス街で
会社の同僚と「投資の話」をしていて、
もっとも話題に上るのはやはり中国の会社ではないでしょうか。

 

 

(実は)どの国の人も、
自国の資産に過剰に投資してしまうことが知られています。
資産運用の世界では、
『ホームバイアス現象』と呼ばれます。

 

 

 

 

 

ホームバイアス現象とは、
投資を行う私たちの『感情リスク』そのものです。

 

 

株式、債券、不動産など資産の種類を問わず、
身近に感じるものを優先して、あなたが住む国の資産に、ついついあなたのお金を託してしまうわけです。

 

よく知っているモノって、気持ちが興って『情』が湧きます。

 

いったん『情』が湧くと、
その投資対象を冷徹に判断しようとする力が、情に、負けてしまうのです。

 

 

株式、債券、不動産など資産の種類を問わず、「通貨」が自国通貨建てになることも、ホームバイアス現象を後押しします。

 

たとえば高配当株戦略を取る人の中には、「日本の」株式、「日本の」REITなどに投資対象が偏る人が少なくありません。

 

 

全部『円建て』というのは一見安心に見えるのですが、そのぶん『国・地域の分散』が犠牲になります。
この先ずっと日本に住み続けるあなたが、日本の資産のみと「一蓮托生」で果たしてよいのでしょうか?

 

(いつも思うのですが、「高配当世界株ETF」のような商品がもっと脚光を浴びてよいのでは?)

 

 

 

 

 

たとえば以下のような例を、あなたはどう思いますか?

 

わたしは日本50%、先進国50%に資産配分できていて、「グローバルに分散を施している」と自負しています。

 

 

悪くない?

んー、悪くはないかもしれません。

 

しかし「全世界株式」から見た日本株式のプレゼンス(時価総額)は今、5%強しかありません。

これは『客観的事実』です。

 

でも、日本株にもある程度投資したいなぁ・・というのは『主観』です。

 

この『主観』の居心地の良さこそ、ホームバイアス現象の正体です。

 

 

日本人にとっても、ドイツ人にとっても、中国人にとっても、

自国以外のたくさんの株式、債券、不動産は基本、遥か彼方にぽつんと浮かぶ、「縁遠い存在」に過ぎません。

 

 

それらの投資対象をいかに「自分事」として捉えることが出来るか。

 

 

あなた自身がこれから長く、シンNISAやiDeCoや、企業型確定拠出年金で投資を続けるに当たり、心情的には「日本人」であることから幽体離脱する必要があると考えます。


投資を行うマインドとして、日本を強調する必要はないわけです。あなたの骨太の『資産配分』が、ノルウェー人のそれと似通っていたとしても全然おかしくはありません。

 

 

 


ホームバイアス現象からの脱却は、あなたが国際人のマインドを持てるか否かの試金石でもあります。

 

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