ネット証券の高齢化問題
2023年3月22日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
たしかマネックス証券が
東証マザーズに上場したのは2000年のことです。
松井証券がIPOを果たしたのが2001年。
イー・トレード証券(現:SBI証券)の事業スタートは1999年。
2003年にDLJディレクトSFG証券が買収され楽天証券になりました。
考えてみますと、
ネット証券もそれなりに年を重ねてきたわけです。
オンライン取引利用者の『高齢化』が進んでいます。
本日「題材」にするのは
日本証券業協会が公表する
『インターネット取引に関する調査結果(2022 年9月末)について』です。
調査対象会員270社のうち、
インターネット取引を行っている会員数は91 社(33.7%)と、
2022 年3月末調査(以下「前回調査」という。)の 91 社から増減はなかった。
会員とは「証券会社」のこと。
いまだにネットサービスを提供していない証券会社のほうが多いのですね(驚)
まずは
「個別株式」の年代別売買代金から見ていきましょう。
画像元:
『インターネット取引に関する調査結果(2022 年9月末)について』
なんと株式のネット取引では、
60代、70代、80代以上で
全売買代金のおよそ「半分」を占めます。
91社中、回答があったのは80社で
注意点としては、
大手証券会社、
あるいは地場の中小証券会社の「オンライン取引」も含まれている点。
それにしても、
なんと言いますか、
老人クラブに近いような感じです。
売買代金ベースですから、
「大きな金額ベース」の株式を、
「多くの回数」売り買いする人の比率がどうしても高くなります。
そもそも、
オンライン取引口座に
1円以上の残高を持つ「有残高口座ベース」の、
年代別比率はどうなっているのでしょうか?
このうち、年代別有残高口座数は、
50 才代が 494 万口座(20.6%)と最も多かった。
また、有残高口座数の 60 才代及び 70 才代、80 才以上の口座数は全体の 35.5%を占めており、インターネット取引が 60 才以上の層にも普及していることが窺える。
一方、20 才代及び 20 才未満の有残高口座数は 8.2%であった
結構「高齢化」が進んでいます。
それはそうでしょうね。
今はもう「50代」になっているわけですから。
ネット取引が 60 才以上の層にも普及している。
というのはまさにその通りなのですが、
上記数字を見ると、
若い世代の取り込みが上手くいっていない。という事実も浮かび上がります。
スポーツカーから降りてくる人は
実はシニアの人が大半です。
(若者のスポーツカー離れが顕著。)
次に「投資信託」の年代別取扱高です。
回答は85社。
画像元:
『インターネット取引に関する調査結果(2022 年9月末)について』
こちらは「個別株式」よりは世代が若くなっています。
40代がかろうじて比率1位をキープ。
しかし50代の比率も高いです。
いっぽう20歳未満、20代、30代を合わせても「31%」程度にしかなりません。
何が問題なのでしょう?
年を重ねれば、
運用資産を取り崩すステージに入るため、
証券会社から見れば
資産残高が「先細り」になってしまう・・。
これは由々しき事態でしょう。
これを避けたいがために、
例えば楽天証券では
投資信託のポイント投資などで
20代、30代の若い口座開設者を取り込んできたわけです。
若い世代に一定の『誘引力』を発揮してくれるでしょう。
でもそれだけでは力不足です。
物心ついた時から日本の衰退の現実を突きつけられ、どちらかというと堅実で保守的になりがちな若い層に、
投資の『正しいイメージ』を持ってもらうよう、証券会社は襟を正すべきでしょう。
アップダウンする市場の中で
中短期でタイミングを見計らって、勇気を持って(スリルを味わいながら?)売買を行うもの。
というような、
古典的かつ硬直的な『投資のイメージ』を払拭する努力が為されるべきでしょう。
多くの若者は
スポーツカーに興味を示さないのと同様、
忙しい取引(トレード)にも関心がないのです。← この着眼はたいへん重要。
今後は「金融教育」を絡ませて、
息の長い投資家を育てていく必要があります。
ここには「直近の利益を犠牲にしてでも、」という意味合いが含まれます。
最後に・・、
1年ほど前のご相談案件から。
あるお客様がお父様から資産を引き継がれました。
そのお父様は「SBI証券」で株式、投資信託を保有されていたため、相談者さまは同じ「SBI証券」に口座を開設して、資産の引き継ぎを完了されました。
もう、
被相続人(ネット証券)→ 相続人(ネット証券)という時代に入っているのです。
カテゴリ:金融機関にモノ申す