素晴らしい『シンNISA制度』! でも抑えておくべき3つの『注意点』とは?
2022年12月18日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
『シン・NISA制度』が本決まりとなり、
ツイッターなどではさまざまな反応が出てきています。
iDeCoの掛金拠出は止めて、
その分を『シン・NISA制度』にすべて回す!
これはちょっと極端ですね。
そもそも、iDeCoとNISAでは『キャラ立ち』がまったく異なります。
iDeCoは60歳までお金が出せない。
つまり『自由』がないわけです。
(もちろん毎年の所得控除もモチベーションになります)
次はこんな「具体例」です。
これまで6年間、
積立投資を続けてきた佐藤さん(仮名)。
実は特定口座でもすでに500万円ほどファンドを保有しています。
昨日述べた通り、
シン・NISA制度では、
年に最大360万円「入金」することが可能になるため、
佐藤さんも
特定口座のファンドを売却して、
2025年「140万円」というふうに、
まとまった資金を入れて
「シン・NISA」内でファンドを買っていったほうがよい!?
んー、お気持ちは重々分かるのですが・・。
<これは来年以降、
当クリニックで第1位になりそうな『ご相談案件』でもあります。>
一度深呼吸してみましょう。
まずは、
その人の投資の「日常性」を洗い出す必要があります。
実は佐藤さんはこれまで、
毎月4万円、ボーナス時 年40万円の「積立投資」を粛々と続けてきました。
まさにコツコツ投資の典型です。
その佐藤さんが、
「シン・NISA」に、
年間360万円入金が出来るからといって、
360万円分、特定口座のファンドを売却して、24年にドーンと入金し、
次年度には残りの140万円分も売って、
2年で一挙に500万円分の投資を実行することが、
果たして佐藤さんの特性に「マッチ」するのか・・?
あなたならどう答えますか?
わたしは、
佐藤さんの投資のリズム、日常性が崩れてしまい、
それに加えて
万一24年、25年の株式マーケットが軟調だったりすると、
佐藤さんの、
長く投資を続ける『マインド』が萎んでしまう恐れが出てくると考えます。
無理をする必要はないのです。
理論的には正しいことでも、
『あなたの』感情的に、正しいこととは限らない。
佐藤さんの場合は、
特定口座の500万円分を、
例えば12.5万円×40ヶ月のように、
シン・NISA制度に「拡大つみたて」していくことをお勧めします。
これまで行ってきた、月4万円の積立投資と合わせて、
その後、4万円の「通常つみたて」に戻す・・。
(大局的に見れば、税金を支払ってでも、
『特定口座』のファンドは『シン・NISA口座』に移していったほうがよいと考えます。)
とにかく、
シン・NISAに「お引っ越し」する際も、
あなたの投資のリズム、日常性を崩さないことがポイントです。
(それが投資を長く続ける秘訣。)
ななしさんもツイッターでこう仰っています。
今日のスペースまとめ
— ななし@氷河期ブログの人 (@_teeeeest) December 16, 2022
特定口座でまとまった投信などがあれば非課税に移すのが数学的には正解
でも、制度が変わったからといって自分のキャッシュフローが変わるワケではない(毎月の投資できる金額は同じや😇)
もしかすると増税でキャッシュフロー悪くなるかも知れない
つづく
ココ、大事ですね。
水瀬ケンイチさん。
— カン・チュンド@インデックス投資アドバイザー🙋♂️ (@4649kang) December 18, 2022
“非課税期間も制度も恒久化されるので、年間投資枠を毎年MAXまで埋めなくても、何年、何十年かけてでも少しずつ生涯の非課税保有限度額を埋めていけばべつにいいやと割り切ることができます。あわてることは何もありません。”https://t.co/UYaeyuZd2E
昨日、
『シン・NISA制度』の目玉は、
ファンドをいったん売却しても、その元本部分(簿価)は、
自分の枠(生涯投資枠)として復活出来るという点でしょう。
と述べました。
自分と、
自分の家族の『ライフイベント』に合わせて、
柔軟に「シン・NISA口座」からファンドを部分解約し、
売却した元本部分については、
『生涯投資枠』として復活させ、
また「シン・NISA口座」で投資に回す・・というのは、個人のお金の出入りに対応しやすい『画期的なしくみ』でしょう。
が、
しかし、
『自由度』が増すがゆえに、
「シン・NISA口座」の管理も難しくなるのです。
投資家とは
(特段の目的なしに)
『利益』が出れば売りたくなってしまう「生き物」です。
〇 たとえファンドを売却しても、その元本部分については「生涯投資枠」が翌年『復活』するために、
下手をすると、
2年おきくらいで、
「ちょっと利益が出る」→「売却」→「売却の元本部分・生涯投資枠『復活』→「また投資」→「ちょっと利益が出る」→「売却」→「売却の元本部分・生涯投資枠『復活』→「また投資」・・・というふうに、
資産形成ではなく、
金融商品の売り買いの「ループ」にハマってしまう可能性があります。
売りたい病、発症!
「カンさん。いつ売っても、恒久的に非課税で売却できるんでしょ。それに加えて、いくら売っても元本ベースで『投資枠』が復活するなら、
効果的に売買して、自分の「生涯投資枠」をなるだけ膨らませたほうがいいじゃない!」
ん? えっ?
ホントにそうですか?
出来るだけ「売り買い」を繰り返して、
生涯投資枠を(なるだけ)膨らませることに傾倒してしまったら・・?
もとい。
「シン・NISA制度」における私たちの目的は、
できるだけ『生涯の投資枠』を膨らませることではなく、
「生涯の投資枠」を用いて、
あなたの資産全体を効果的に増やすことにあります。
『自由度』が高くなるがゆえに、
根底にあるはずの「投資目標」が、
いつの間にか歪んで、疎かになってしまう危険があるのです。
この「簿価ベースの恒久無税枠1800万円」は短期売買する人にとっては有り難い制度。お金に余裕がある人は出来るだけ速く(最短5年)枠を作ることで無税で回転売買ができる。もしかしたら長期投資を促すという当初の意図とは異なる使われ方になるかも #NewsPicks https://t.co/GEJceKCxCW
— 奥野一成|おおぶねファンドマネージャー (@okunokazushige) December 17, 2022
まさにこの点が、
『シン・NISA制度』最大の注意点なのかもしれません。
これも危惧しています。
恒久的に非課税というのは、
恒久、いや高級羽毛の布団に寝ているような「心地よさ」と「安心感」があります。
リタイアが目前になっても、
老後の生活に入っても、
『シン・NISA』でなるだけ長く
ファンドを持ち続けたほうが、より資産は増えるだろうし・・」
というふうに、
資産を増やすことが目的化し、
その状態が心地よくなり過ぎると、
投資の『最終目的』である、
リスク資産を規則的に取り崩し、そのお金を有意義に使っていく。この本丸が、忘れ去られてしまうのです・・。
「シン・NISA」は素晴らしい制度ですが、
これを使いこなすには、
あなたの手腕が問われるのです。
動画でも解説しています。
カテゴリ:NISA活用法