投資信託あれこれ

個人が主人公の投資信託は「さわかみファンド」から始まりました

2022年10月18日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

2002年の頃でしょうか。

「さわかみファンド」の存在を、
わたしはセミナーに参加していただいたお客様から知りました。

 

「カンさん。これまでの投資信託とは違うんです!」

 

その男性は、興奮気味にそう仰っていました。

 

また、「さわかみ投信」を創業された澤上篤人さんが、既存の運用業界の人達といかに違っているかを力説してくださいました。

 

 

いつか誰かが
200~300ページに及ぶ
日本の『投資信託通史』を書かれるのであれば、

「さわかみファンド」について、
最低10頁はページ数を割くべきでしょう。

それほど、このファンドの登場には意義深いものがあります。

 

 

 

 

ところで、
20年前といえばけっこう昔の話です。

 

投資信託という商品を取り巻く環境は、
まだ「既得権益の世界」そのものでした。

 

(※ちなみに「さわかみファンド」の運用開始は1999年でした)

 

 

投資信託では、
販売会社(主に証券会社)がそのビジネス構造の頂点に君臨し、
自分たちのペースで
かつ、自分たちの思惑で、
商品(投資信託)を作らせ、
それを販売するというスタイルでした。

 

 

顧客(消費者)に対しては基本『上から目線』であり、

○○というストーリーを自ら語り、
「だから、□□ファンドを作ったわけです。買いますか?」

(いや、買いなさい。)

という雰囲気が漂っていました。

 

 

(そして、)
ここまで投資の周辺情報を教えてあげて、優れたファンドを勧めているのだから、

このファンドを購入するのなら、
販売手数料で2%、3%いただきますし、

運用管理費用(信託報酬)もそれなりに頂戴しますよ。

 

「それが当然ですよ。」

というスタンスだったのです。

 

 

 

 

一介の生活者は、
この既得権益がはびこる世界に、
恐る恐るノックして入っていくような存在でした。

わたしもそんな感じで細々ファンドを買っていたのです。

 

逆説すれば、

 

よい製品を作って
それを直接「消費者」に届けたい。
結果(リターン)によってユーザーに評価されたい。

 

というような、
まっとうなビジネス精神に欠けていたと云えます。

 

今、振り返ってみますと、
『さわかみファンド』に至る予兆は、たしかにありました。

 

日興アセットマネジメントが
『パレット』という、「インデックス・ファンドシリーズ」を1998年に発売しました。

 

販売手数料なし(ノーロード)で
運用管理費用も当時としてはかなり低く、

何より本当に、
運用会社が「直接販売」(直販)したのです。

(ただし運用期間は10年間に限られていました)

 

 

ここからが本題です。

当時の投信業界において、
「さわかみファンド」は

既存のファンド群と比べて、
いったいどこが違っていたのでしょうか?

 

 

1.日本の投信の歴史の中で初めて
『生活者』という言葉を用いて、
ファンドを保有する人を具象化した。

 

これは画期的なことでした。

 

 

 

 

それまで投資信託を買う人、
ファンドを持つ人は「投資家」であったわけです。

あぶく銭を持っていたり、
資産家である人が投資商品を買う。

そんな印象でした。

 

ところが「さわかみファンド」は
ふつうのサラリーマンをメインターゲットにしました。

まさに『生活者』のための投資信託、だったのです。

 

 

2.『長期投資』と明確に表明した

 

わたしが知る限り、
日本の運用業界で
「長期投資で行くんです」と言明した人は澤上篤人さんが最初でした。

(それまでの投資信託が、いかに売り・買いの世界であったかという証左でもあります)

 

 

3.長期投資だから、
自然と運用期間は「無期限」に

 

 

4.『積立投資』でファンドを買う

 

「積立投資でファンドを買う」

これを明言したのも澤上さんが初めてでした。

 

積立投資というやり方が存在し、
投資商品も「積立」で買っていけるのだと、多くの初心者が驚くに至ったのです。

(さわかみファンドが登場して初めて、
積立投資という投資実行法が「市民権」を得たと云えます)

 

 

 

 

5.運用会社(さわかみ投信)が直接販売

 

いわゆる直販です。

よい製品を作って
それを直接「消費者」に届けたい。
結果(リターン)によってユーザーに直接評価されたい。

そういう気概の表れですね。

 

また実際問題、
「販売会社」を通してしまうと、自分たちの理念を維持することは出来ないという、澤上さんの危機感の表れでもありました。

 

 

6.販売手数料は『ゼロ』(ノーロード)

 

今では「当然でしょ。」という雰囲気になっていますが、当時「販売手数料」をゼロにするためには直販という売り方でないと、難しかったのです。

 

 

7.継続コストも抑えます


(日本株式のアクティブファンドとして1.0%という運用管理費用(税抜)はかなり低廉だった)

 

あと「追記」となりますが、実質『分配金』を出さない姿勢を貫いているのも、先例として高く評価できます。

 

 

わたしは投資信託の歴史において、

ビフォー「さわかみファンド」
アフター「さわかみファンド」という区切りが必要なくらい、

このファンドの登場はエポックメイクな出来事だと思っています。

 

 

 

 

何より、
投資は【生活者】のためにある。
生活者の【財産形成】のために
投資信託という道具は存在するのだと、
投資信託の【存在理由】を、
時代の変化に沿って
定義し直した「功績」が大きいと考えます。

 

 

さわかみファンドが世に登場していなければ、
eMAXIS Slim も今、存在しないのです。

わたしは真面目にそう思っています。

 

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