投資信託あれこれ

投資信託において『複利の効果』は魔法のことば(でも実際は「再投資効果」があるだけ)

2022年8月28日


こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

投資をめぐる誤解のひとつに、

投資をする
「資産が少しずつ増えていく」というものがあります。

 

違いますよ!

 

 

投資は不確定要素を常に含むため、

「資産が(規則的に)少しずつ増える」ことはありません!

 

 

投資は、

「階段」ではなく、

 

 

 

 

「ジェットコースター」なのです。

 

 

 

(毎年のリターンは大きくブレます。)

 

 

FPの井上ヨウスケさんのVoicyを拝聴していたら、『複利効果』という言葉が出てきました。

 

 

最初の「挨拶と雑談」のところで井上さんが、

 

『複利効果』という言葉と
投資の実態が噛み合っていない居心地の悪さを吐露されていたのです。

 

ココ、わたしもすごく共感します。

 

 

『複利の効果』というと、
多くの人は「定期預金」を想起してしまいがち・・。

 

<年利1%(複利)で増える定期預金!>
100万円×1.01 = 101万円
101万円×1.01 = 102.01万円
102.01万円×・・・

 

そう、これって階段のイメージなのです。

 

 

 

 

でもこの概念は
投資信託には当てはまりません。

 

実は来週に発売予定の
新刊『つみたて投資の終わり方』の中でも、

 

株式ファンド20年間の
毎年毎年の「リターン」を
シミュレーションとして列挙しています(巻末にて。)

それがこちら。

 

 

1年目     +8%
2年目    -11%
3年目    +2%
4年目    +6%
5年目    -9%
6年目    +8%
7年目    +11%
8年目    -5%
9年目    +6%
10年目    -8%

 

 

11年目     +20%
12年目      +2%
13年目     +13%
14年目      +4%
15年目      -4%
16年目      +6%
17年目     -11%
18年目     +18%
19年目      +3%
20年目      -2%

 

 

上記はあくまで仮想のリターンですが、
もう見事に「バラバラ」です。

 

おまけに20年間運用して、
マイナスの年が「7回」もあります。

 

 

そして上記は
現実に起こり得るような数字の羅列なのです。

 

 

あるいは以下は、

 

過去90年以上の
「S&P500指数」の
毎年毎年の『結果リターン』です。

 

 

 

 

もう見事に「バラバラ」。

 

赤の棒グラフ、マイナスの年も結構あります。
(かつ、マイナスが何年も続くケースもあり)

 

 

これが投資の現実です。

 

 

 

 

Voicyの中で
井上ヨウスケさんも発言されていますが、

 

『複利効果』という言葉は、

金融機関のサイトなどで、
投資信託の効用を表す
「耳障りの良い言葉」として多用されているようです。

 

 

率直に言って、
投資信託という商品と
『複利の効果』という言葉は噛み合わないと考えます。

 

 

なぜなら、こちらの例など、

 

1年目    +8%
2年目     -11%

 

前年のリターン(+8%)が、
今年のリターンに「良い影響」などまったく与えていません・・。

 

 

+8%」→「-11%」という2年間の成績を見て、
「えっ、何が複利なの??」
戸惑われるのも当然なのです。

 

 

以下、少しだけ込み入った話になることをお許しください。。

 

 

 

 

唯一、
投資信託(ファンド)の中で、
複利の効果的な現象が存在するとしたら、

 

債券ファンドにおける、
個々の債券からの「利息」

 

そして株式ファンドにおける、
個々の株式からの「配当金」

 

あれらを
ファンドの外部には出さず、
ファンドの内部で「再投資している」姿は、

 

複利で資産を増やしているという「言葉」に近いものがあると考えます。

※「分配金」は一切出していない投資信託と想定。

 

 

 

 

 

ただ、悩ましいのは、

今、資産を複利で増やしている。と述べましたが、

 

債券ファンドで
個々の債券からの「利息」
現にファンドに再投資しても、

 

株式ファンドで、
個々の株式からの「配当金」
現にファンドに再投資しても、

 

債券そのものの値段や
株式そのものの価格が『下がっている』状況下では、

 

たとえ「利息」や「配当金」の再投資を行っても、
投資信託の基準価格が下がってしまい、
(前年に比べて)リターンがマイナスになることも多々あるわけです。

 

 

 

これが、
投資信託という商品で
複利で資産を増やしていることの、イメージのしにくさ、なのです。

 

 

 

 

 

投資信託という商品を理解する際には、
「複利効果」という言葉は棚上げして、使わないほうが良いと思います。

 

(もちろん)
リターンの様子は全然「階段」ではありません!

 

 

毎年毎年の結果リターンは(ジェットコースターのように)大きくブレながら、

 

それでも点と点をつないで、
長い長い『時間軸』のメガネで見た場合に、
プラスの収益を期待できる可能性が高くなる金融商品である。という理解が、投資信託の現実に即しているといえるでしょう。

 

 

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