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日本の投資信託は当初、「証券会社」が運用会社を兼ねて自ら運用。この事実を知っておくことは重要です

2022年6月3日


こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

標題の通りです。

日本の投資信託は最初
「証券会社」が運用会社を兼ね、自ら運用していました。

大和アセットマネジメントの歴史から拾ってみます。

 

 

 

1951年に
証券投資信託法が制定され、

当初は「証券会社」が自ら
投資信託の運用を行っていました。

(もちろんファンドを販売するのも「証券会社」だったわけです)

 

その後法律が改正され、

 

〇 運用部門(ファンドを作るところ)と
〇 販売部門(ファンドを売るところ)が分離されます。

 

 

上記図表でいえば、

 

大和證券より分離、大和証券投資信託委託会社として設立

 

のところですね。

 

 

 

 

ところが、
大和証券でも野村證券でも、

「証券会社」の子会社として『運用会社』は作られたために、

 

・・「証券会社」
・・「運用会社」
(アセットマネジメント,委託会社,投信投資顧問)という構図が出来上がります。

 

大和証券グループの場合、
運用会社の名前からして
「大和証券投資信託委託会社」だったわけですから、

もう、
親(大和証券)の下に作られた子会社丸出しです。

 

 

ファンドの『売り手』(販売会社)であり、
かつ『親』でもある「証券会社」に、
ファンドの作り手である「運用会社」は声高に主張が出来るでしょうか?

 

 

否、です。

 

資本的に、
人もカネも決定権も、
親(証券会社)に握られているわけですから、子(運用会社)は親に頭が上がらなくなります。

 

 

この点、ヨーロッパのファンドの源流は大きく異なります。

 

欧州では
貴族の資産管理、資産運用を引き受けるための職業的ギルド、これが運用会社の起源であります。
有価証券の仲介、販売を担う証券会社の起源より、ずっと古いわけです。

 

 

 

 

 

欧米の運用会社に、
銀行や証券会社の子会社ではない、
独立系の運用会社が多いのはこのためです。

 

 

再び日本に戻りますと・・。

親・・「証券会社」(売り手)
子・・「運用会社」(作り手)という従属関係ですから、

運用会社内の
「どんな投資信託を作ろうか?」という発想、商品企画力よりも、

 

親(証券会社)が売りたい投資信託を、
子に命じて作らせるという『構図』に陥ってしまったのです。

 

「良いファンドを作ろう!」というインセンティブは封閉されることになります。

 

 

 

これが、
日本の投資信託の『源流』であり、
犠牲になってきたのはファンドの購入者です。

長らく投資信託という商品のイノベーションは、阻害されることとなりました。

 

 

また、投資信託の購入者は

親・・「証券会社」(売り手)
子・・「運用会社」(作り手)という

投資信託の流通構造の『いびつさ』だけでなく、

実は、

花形商品・・「個別株式」
サブの商品・・「投資信託」という
『いびつさ』の犠牲にもなってきたのです。

 

 

 

 

かつて証券会社の主力商品は「個別株」でした。

顧客に相場観を語り、
銘柄推奨を行って、

証券会社が自己売買部門を使って
壮大な流れを作っていたのです。

 

 

その具体的な手法は、
自らの相場観を肯定すべく
自己売買部門で特定の銘柄を買い上げ、
相場の流れを作り出すと、顧客に銘柄推奨をし、顧客の買い入れによって、自らが保有する銘柄の株価が更に上昇し、
大きく値上がった銘柄の、
「出口の器」として
投資信託が利用されていた。

 

そういう側面があります(あくまで昔の話です。)

 

 

『投資信託』として設定される頃には、
ファンドの内に組み込む銘柄は既に大きく値上がっていた。

そんな実態がまかり通っていたのです。

 

もちろん時代は大きく変わっています。
証券会社の主力商品は
もはや個別株式ではなくなっています。

 

 

ただ、日本国内では、
銀行や生損保会社や、証券会社の子会社として、投資信託の運用会社が存在することに基本変わりはありません。

 

 

真の意味で
日本の投資信託業界が成熟するためには、
資本的にも独立した運用会社が増えることが不可欠であると考えます。

水瀬ケンイチさんの以下2本の記事はとても勉強になります。
知っておくべき日本の投資信託の黒歴史

続・知っておくべき日本の投資信託の黒歴史

 

水瀬さんはこう言われています。

 

たしかに、投信そのものの仕組みが素晴らしいのは事実ですが、日本において投信を立ち上げた国の意図、そしてそれを個人投資家から金を巻き上げる道具として悪用してきた金融業界の意図を、個人投資家が知っておくことは、自分の身を守る上で大切なことだと思います。


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