世界投資的紀行, 投資信託あれこれ

世界初の投資信託は「外国債券ファンド」でした

2022年4月17日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

1868年といえば、
日本では「明治維新」の年です。
この年の7月、江戸は東京に改称されました。

 

資産運用的にいえば、
世界初の投資信託が誕生した年です。

 

投資信託という発明品は、
資産運用の「大衆化」の先駆けとなりました。

 

 

 

 

誰が、どのように発想して、
商品化にまでこぎつけたのか、
一介の投資家であるわたしには知る術もありませんが、

とにかく、
世界初の投資信託の名前は、
「フォーリン・アンド・コロニアル・ガバメント・トラスト」といいます。

 

当該ファンドはイギリスで発売されました。

当時は「債券」も株式と同じく
証券取引所に上場する『金融商品』であり、
実際さまざまな上場債券が取引されていました。

イギリス国内の債券だけではなく
外国の国債や植民地債なども上場していたのです。

 

※ちなみに19世紀後半、
イギリスの国債は 成熟経済 → 低成長のため、利回りがとても低くなっていました。

 

 

 

画像元:アバディーン・スタンダード・インベストメンツ
アセット・アロケーション200年の歴史

 

 

あなたが当時のロンドンで
大衆食堂を営んでいるとしましょう。

小金を貯めて、
そのお金は取りあえず銀行に預けていると想像してみてください。

果たして、
一介の小金持ちに、
ひとつの株式やひとつの債券が、
ポーンと買えるような状況だったのでしょうか。

 

単価が多少高くても
富裕層(= 資本家)なら、
あの債券か、この株式にするかとチョイスしたり、あるいは両方購入することは可能だったかもしれません。

 

しかし、です。

何しろ19世紀ですから、
投資における不確実性(リスク)は決して小さくありません。

 

 

 

 

『債券』でいえば、
借りたお金を返せなかった・・

『株式』でいえば、
事業が破たんしてしまった・・

このような『リスク発生確率』は、
今よりうんと高かったはずです。

 

アバディーン・スタンダード・インベストメンツの
アセット・アロケーション200年の歴史』から引用してみましょう。

 

1856 年から1965 年に英国で設立された企業数は4,859社に上りましたが、そのうちの 37%は詐欺や不正経理などの不祥事が原因で倒産しました。

 

 

また、有価証券(債券・株式)に関する情報も今ほど広く流布しておらず、

本当にホットで新種の情報は、
富裕層たちの間で独占されがちだったのでは?

 

要するに、
ロンドンの大衆食堂のご主人にとっては、

〇 情報が限られている
〇 その中で、ひとつの株、ひとつの債券を選ぶのはとてもリスクが高い
(購入単価もそこそこ高い・・)

ということで、
投資に躊躇してしまうケースが多かったのではないでしょうか。

 

 

 

 

投資信託というツールは、
当時勃興しつつあった中産階級の人たちの、
〇「ちょっとでもお金を増やしたいなあ」
〇「でも究極のハイアンドローみたいな投資はイヤだなあ」
というニーズに応えるため、
発明されたと云ってよいでしょう。

 

何しろ、

・購入単価が下がって、
・国の分散が可能になり、

・さまざまな満期の、
・さまざまな利率の国債、植民地債が、

「ワンパッケージ」で
買えるようになったわけですから!

 

当時のイギリス人にとっては ⇒(まさに)外国債券ファンド!だったのです。

 

 

以下が当時、
「フォーリン・アンド・コロニアル・ガバメント・トラスト」に組み入れられていた主な国債、州債、植民地債です。

 

 

 

 

興味深いですね・・。

スペインやポルトガルは当時すでに成熟国(=低金利)で、利率も低かったのですね。

ニューサウスウェールズ債は、
当時まだイギリスの植民地だったオーストラリアの植民地州債です。

またノバスコシア債とはカナダの州債のこと。

エジプト鉄道ローンは、
鉄道敷設のための「プロジェクト債」のようなもの?

 

当該ファンドの初回募集時の
分配金利回りは7%だったのだそう・・。

 

 

世界初の投資信託
「フォーリン・アンド・コロニアル・・」では、
今日の投資信託の『骨格』がすでに出来上がっています。

 

それは、

〇 共同購入の概念

小口の資金をたくさん集めて、
それを大きな束にし銘柄(債券)を購入する

〇 分散投資の概念
銘柄の分散、国・地域の分散

 

今よりも個々の債券の「信用リスク」が高かったため、分散投資の理念を具現化したこの道具の「ありがたみ」は、たくさんの投資家の身体に染み渡ったのではないでしょうか?

 

 

最後に「フォーリン・アンド・コロニアル・・」はすでに、
投資資産全体の中で、
1銘柄あたりの投資比率に『上限』を設けています。

これもすばらしいこと。。

カテゴリ:世界投資的紀行, 投資信託あれこれ

おすすめの記事