投資信託あれこれ

モーニングスターの『月次資金流出入額グラフ』は面白い

2022年4月4日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

インデックスファンドに馴染んでくると
リターンの比較への興味がだんだん失せてきます。

要は「市場の平均点」を買うツールですから、
特に広域の株式インデックスファンドの場合、
パフォーマンスに大きな差異は生じないわけです。

 

「では、ファンドの大きさは?」

ハイ、純資産額ですね。それは大事です。

 

純資産額100億円のファンドより、
純資産額5000億円のファンドのほうがより安心です。

 

→ 20年後も元気で存在してくれる可能性が高まりますし、(もっと純資産額が増えれば)もしかすると、継続コストの更なる低減も期待できるかもしれませんから。

 

 

 

 

でも、です。

長期の視座を持てば、
今、この瞬間の純資産額の規模より、

そのファンドの純資産額の『傾向』のほうがずっと大事だと思います。

 

傾向(けいこう)??

ハイ。

 

例えば、です。

そのファンドがだんだん純資産額が増えてきての、2000億円なのか、それともだんだん減ってきて、あるいは4年くらい横ばいでの、2000億円なのか。

同じ純資産額2000億円のファンドでも、まったく『意味合い』は違ってきます。

 

 

純資産額の推移の『傾向』を知る、ひとつの手掛かりになるのが、モーニングスターの『月次資金流出入額グラフ』です。

 

このグラフを見れば、
直近5年間の毎月毎月の、
ファンド内への資金の「流出入の傾向」が分かります。

 

 

 

 

具体例を挙げてみましょう。

『楽天・全世界株式インデックス・ファンド』です。

 

 

 

画像元:モーニングスター

資金の純流入が続いていますね。

2018年、19年は地味ながらも、
均すと月10億円程度は『純流入』が続いていました。

 

これはおそらく、
ファンド保有者の数が維持される中で、
その人たちの多くが「つみたて」を継続しているため、継続的な純流入が起こっている。ということだと思います。

(もちろん一定の解約者も継続的に存在します。)

 

 

『純流入』が続くということは、
そのファンドに対する人気、信頼度が安定もしくは逓増しているということ。

 

※注:上記はファンドの成績そのものとは別の物差しです。

 

 

 

 

面白いのは『2020年』です。

世界的に新型コロナウイルスが大流行し、株価が暴落し、しかしかえってこのファンドに対する関心が若干高まったことが、純流入の『規模』から見て取れます。

 

おそらく、

 

・ファンド購入者そのものが増えた。
・1ファンド保有者あたりのファンド購入額が増えた。
と推測されます。
(そして2021年には、その傾向がより顕著になっています。)

 

 

念のため、
『月次資金流出入額』のグラフが
ゼロよりも下に伸びている傾向の場合は、

資金が流出傾向である
(『純流出』が続いている)ということであり、

そのファンドに対する人気、信頼度が損なわれている兆候と見て取れます。

 

明らかな『黄色信号』。

 

 

 

 

いくら純資産額が大きくても、このシグナルが見えだしたら、

(具体的にはゼロよりも棒グラフが下に伸びている傾向が4ヵ月、5ヵ月以上続けば、)

 

・ファンドを購入して入ってくるお金より、
・ファンドを解約してファンドから出ていくお金のほうが勝っている状態が、
(まさに)続いている証左ですから、
そのファンドに対する信頼感が逓減していることになります。

 

ファンドの良好度という点では『大きな転換』が起こってしまっていると解するべきでしょう。

※注:こちらもファンドの成績そのものとは別の尺度であります。

 

 

 

 

次の具体例に移りましょう。

『eMAXIS Slim先進国株式インデックス』

 

 

 

画像元:モーニングスター

 

こちらも同様に純資金流入が続いて素晴らしいのですが、注目は2020年の3月です。

まさに世界的に株価が暴落した月なのですが、
純流入額が際立って増えています。

・・なかなか果敢な行動だと思いませんか?・・

 

〇 ファンドの購入者そのものが増えた。
〇 1ファンド保有者あたりのファンド購入額が増えた。

おそらく上記両方が起こっていると推測しますが、

 

 

より具体的には、
「1ファンド保有者」が、例えば月3万円の『つみたて投資』を行っていたのを、それにプラスして、スポットで20万円、30万円(もしかすると100万円、200万円)と、当該ファンドを臨時に購入したのでは・・ (あるいは「つみたて金額」を増額したのでは・・)

 

そんな実態が垣間見えてくるのです。

とても興味深いです。

 

なんと言いますか、
『eMAXIS Slim先進国株式インデックス』のファンド保有者の「熟練ぶり」が、感じられます。

 

 

次の具体例。

『投資のソムリエ』

 

 

 

画像元:モーニングスター

 

こちらは安定性を重視するバランスファンドなのですが、
同じく2020年に注目してみましょう。

コロナで株式市場が暴落した3月。
そしてその後の4月、5月を見ると、

当該ファンド保有者の「戸惑い」が伝わってきます。

 

他の月に比べて明らかに『純流入額』が減っているのですが、

 

〇 ファンドを解約する人も増え、
〇 ファンドの「つみたて」を続ける人も、
その一部が「つみたて金額」を減らしたり、
〇 あるいは一部ファンドを解約しつつ(でも)「つみたて」は我慢して続けたりと、困惑しつつも、極端な行動はとるべきではないと、自らを自制する様子も伺えたりするのです。

 

 

そして2020年の6月以降、
株式市場の戻りを確認すると、

当該ファンドでは
コロナ前よりかえって『純流入額』が増えます。

 

「やっぱり大丈夫だ。」
「つみたてを続けよう。ファンドを購入し続けよう。」というファンド保有者のポジティブな息吹きが聞こえてきそうです。

(当然、ファンド購入者そのものも増えたと考えられます)

 

 

お花見はもう行かれましたか?

 

このように、
1本の棒グラフとその傾向が、
短編小説のように、物語を奏でることもあるのです。

 

さまざまなファンドの
『月次資金流出入額のグラフ』を肴にしながら、
気の合うファンド仲間とビールでも飲んだらさぞ楽しいだろう・・と思ってしまうわたしは、やっぱり「変人」なのでしょうか?ww

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