投資の発想法

資産泡立つ!)住宅市場の高騰は何のシグナルなのか? その2)

2021年12月1日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

昨日の続きです。
2007年当時のアメリカでいったい何が起こっていたのか?

住宅価格が高騰し、
賃料粗利回りが2%台になっても、
住宅購入が正当化されるということが起こりました。

たとえばこんなセールストーク。

 

一部では不動産は高すぎるんじゃないかって言われますけど、まだまだお買い得ですよ。なぜなら、不動産価格はまだまだ上昇し「含み益」が増えて、その分もリターンになるからです。

 

そう、当時は
エクイティ(含み益)という言葉が盛んに使われていたのです。

 

 

所有している物件(不動産)の
現在の「評価額」から住宅ローンの「残高」を引いた金額が『含み益』。

当然の話ですが、
不動産価格が上昇すればするほど、
エクイティは大きくなります。

 

そこで当時は、
このエクイティ(含み益)の6割、7割程度まで、
「お金を貸してあげましょう!」というビジネスが盛んになりました。

 

いわゆる『ホームエクイティローン』です。

 

表面上は粗利回りが2%台で、物件価格は割高に見えても、この先不動産価格が上昇し続ければ、含み益も増えるし、エクイティローンも使えるし、問題ないわよ、みたいな空気感が漂っていたのです。

 

そして・・
もしも、ですよ、

これから2022年にかけて、
先進各国の住宅市場で
この「エクイティローン」なるものが脚光を浴びるようなことがあれば・・

それは、

『いつか来た道』です。

 

わたしは日経新聞の連載記事『マンション続く宴(2)』の中で気になる記述を見つけました。

バス便の新築マンションでも人気が出ているという事実です。

 

 

明らかにカネ余りと異常に低い金利と、銀行融資のゆるさが「住宅価格」を押し上げています。

 

今、都心の不動産、特にタワーマンション系の取引価格が高騰し、所有者はざわめき立っていますが、これこそまさにエクイティ(含み益)が膨らんでいる状況ですね。

 

ところがよーく考えてみますと、

自ら居住する『住宅資産』は
株式や投資信託やコモディティ等と比べると、

いくら『含み益』が膨らんでいても、それは売却して利益を実現するということが(基本)ありません。

 

なぜなら、マイホームを売ってしまうと
次に住む場所を探さないといけなくなるためです。

 

 

住宅価格が一度「上昇」のトレンドに入ると、
なかなか覆られないのは、

 

株式、投資信託のような有価証券と違って
資産の所有者が気軽にそれを売却し、
利益を得るというような「流動性」がなかなか生まれないためなのです。

 

・その結果、供給が細る・・

・需要は増える

・価格がさらに上昇・・という循環が続きます。

おそらく上記は、今世界中の『住宅市場』で起こっていることなのでしょう。

 

 

【住宅市場は(株式市場とはまた違った)独自の需給のゆがみが生じやすいことを知っておきましょう。】

 

 

続いて日経新聞
頭金ゼロ、変わる住宅ローン 銀行も個人もリスク蓄積』より引用してみましょう。

 

三井住友信託銀行と三井住友トラスト・資産のミライ研究所が6月に発表した調査では、頭金ゼロと答えた人が全世代で27%いた。住宅購入者の7割を占める30代に限ると、頭金ゼロが38%、頭金1割が29%だった。

 

頭金なしでリスク資産を購入するとは、
信用(クレジット)の膨張そのものでしょう。

無意識の『楽観』が住宅市場にも静かに広がっているのです。

 

住宅市場の高騰は、いったい何のシグナルなのか? それは【泡立つ!資産価格の象徴】そのものです。

 

株を持たず、投資信託を持たず、金(ゴールド)や暗号通貨に見向きもしない人も、住宅は所有しており、不動産は経済社会に対する影響度がきわめて大きいのです。

 

 

わたしはこのバブル的状況は
遠からず転機を迎えると考えます(要因はふたつです。)

 

1.長期金利の上昇

 

本日(12月1日)
マーケットアナリストの豊島逸夫さんのツイートをご覧ください。

 

 

米国では金利引き上げに向けより明確な『意思表示』が為された模様です。

 

 

2.融資姿勢の転換

 

コロナ禍の長期化で
住宅ローンの返済遅延などが社会問題化すれば、
金融機関はローンに対して慎重な姿勢に転換せざるをえません。

 

つまり「金利上昇」と「ローンの引き締め」が起こることで、住宅市場のバブルも終焉に向かうのではないでしょうか。

歴史は繰り返す・・。

資産価格は万事すべからく、沸騰と焦燥を交互に演じるものなのです。

 

〇 投資信託クリニックは、
資産価格の高騰を『バブル的現象』と捉え、
個人投資家が過度なリスクを負うことに警鐘を鳴らしています。

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