投資の発想法

資産泡立つ!)住宅市場の高騰は何のシグナルなのか? その1)

2021年11月30日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

さて、最初に『クイズ』です。

以下、いったい何の平均価格でしょう?

 

〇 6750万円

 

答え)

10月の首都圏新築マンションの平均価格です。

東京23区に限定すると、
新築マンションの平均価格は8455万円になります。

 

コロナ禍で、
住宅価格はどんどん高くなっています。

少し前に日経新聞でこんな連載記事も出ていました。
マンション続く宴(1)

 

 

実は日本の住宅価格の高騰はまだまだかわいいもので、
世界的に見れば
バブル的様相を呈していると云っても過言ではありません。

 

WSJ
世界的に高騰する住宅価格、社会分断の根源に

 

テキサス州オースティンからアイルランドのダブリン、韓国ソウルまで、各国の主要都市では世界的な不動産ブームにより、多くの世帯で手が全く出ないほどの水準まで住宅価格が高騰している。

 

ブルームバーグ『世界の不動産価格がバブルに警鐘-最も過熱気味の住宅市場ランキング

 

BEの指標に基づけば、ニュージーランドとカナダ、スウェーデンが最も過熱気味の市場にランクされ、英国と米国も最上位に近いリスク水準となった。

 

(BEとはブルームバーグ・エコノミクスのこと)

 

以下、ブルームバーグ・エコノミクス(BE)がまとめた「バブル番付」です。

画像元:ブルームバーグ

ちなみに日本は23位です)

 

 

以下、米国のS&Pケース・シラー住宅価格指数。

 

画像元:FRED

 

コロナ禍に入ってからの上昇率が↑際立っていますね。

 

実はこの『トレンド』は、
株式市場も、コモディティも、暗号通貨も、基本的に同じです。

 

 

では、どうして住宅価格は高騰しているのか?

 

〇 突発的、かつ偏在的な需要の発生。

リモートワークとなり、
郊外の、より広い家に対する需要が急増。

いっぽうそのような住宅の所有者は
「住み続ける(持ち続ける)」インセンティブが強いため、供給は絞られたままであり、結果、取引価格が高騰。

 

なお、上記需要は
単に「より広い家」に住みたいというニーズではありません。

 

リモートワークの本質は?
⇒『居宅』での滞在時間が伸びること。

 

つまり多くの人が、
より快適な空間(住宅)で過ごしたいと願うようになったわけです。

 

 

〇 カネ余り。超低金利。

新型コロナウイルスによって
お金の貸し借りのコストである『金利』は政策的に抑えられました。

また「給付金」「支援金」等が潤沢に配られ、一部は過大な貯蓄に回るなど、典型的なカネ余り現象が発生しています。

これは換言すれば、

お金がだぶつくことで
・貨幣価値が減少し、
・資産価格の上昇を招いている。

とも云えます。

 

〇 株価もコモディティも暗号通貨もそして住宅も、
価格の高騰は
その価値の上昇というより、
貨幣価値の下落による『物価上昇』の一現象とも読み解けるわけです。

 

 

ところで、住宅購入においては
『金利』が「価格」を決めるといっても過言ではありません。

 

マイホームを購入する人は
ちょっと首を傾げるかもしれませんが、

『不動産を買うことは立派な投資です。』

投資的行為として、
ちょっと住宅購入を見てみませんか?

 

たとえば、

調布市柴崎1丁目周辺のマンションを買うとき、
どのくらいの『利回り』になるのか?

ハイ、あなたは
自分が住むために住宅を買うのですが、
(ちょっと)誰かに『貸す』と想像してみて欲しいのです。

 

この、2LDKのマンションを貸しに出せば、
月13.5万円の賃料になるとします。
年間162万円です。

(ここでは継続的なコストは考慮しません。)

 

〇 利回り10%なら、
このマンションの価格は1620万円。
〇 利回り5%なら、
このマンションの価格は 3240万円。

 

ずいぶん違いますね。

でも、マンションの中身はまったく一緒です。

 

 

金利がそこそこ高く、
住宅市場が冷え込んでいて需要が少ないと、

(たとえば)利回り10%程度にまで、
住宅市場の成約価格が下がることがあり得るわけです。

このとき仮に長期金利が3%程度だとしましょう。

債券商品を買っても年3%の利回りが得られるわけですから、
不動産というリスク資産の「期待利回り」は上がらざるを得ません。

 

(その結果、⇒ 不動産価格が下落するわけです。)

 

 

逆に、金利が異常に低く、
住宅市場が活況だと、
利回り5%程度でも「十分お手ごろだ」という意識が働き、住宅市場の価格は高位安定したりします。

 

【おそらく東京23区内の交通至便なマンションでは、
今賃料粗利回りは5%台、場所によっては4%台になっているのでは?】
ここで重要なのは、金利の動向、金融機関の融資の締緩によって、不動産価格は変動するということなのです。

 

もう少し過去の知見を再稼働させてみましょう。

 

少し時を遡れば、
2006年、2007年当時の米国では、
場所によっては賃料粗利回りが2%台にまで沈んでいました。

(= それだけ不動産価格が高騰していたのです。)

当時の雰囲気はこうです。

続く・・)

 

〇 投資信託クリニックは、
資産価格の高騰を『バブル的現象』と捉え、
個人投資家が過度なリスクを負うことに警鐘を鳴らしています。

カテゴリ:投資の発想法

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