投資信託あれこれ

アメリカの投信の歴史を紐解けば、日本が進むべき道が見えてくる?

2021年9月20日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

『投資』という物差しで
日本とアメリカを比べた場合、おそらく多くの人が、

 

アメリカ人 ⇒  投資に長ける
日本人   ⇒  投資に弱い

 

みたいな『印象』をお持ちではないでしょうか?

 

(でも、)ほんとうに
アメリカ人は昔から投資に馴染んでいたのか?

実はNON、です。

1970年代の米国人の
個人金融資産に占める【投資信託の割合】は
1%~2%ほどしかなかったのだそう。

 

加えてアメリカの株式市場も
ベトナム戦争の泥沼にはまり、
1970年代は『冬の時代』を迎えていました。

 

 

※ アメリカのダウ平均は1972年に
1000ドルに達しますが、
1982年になるまで「長期の停滞相場」から抜け出すことが出来なかったのです。

 

規制の緩和、撤廃を図ることで
産業の活性化を促すのはどこの国でもありますが、

米国では金融規制の緩和の結果、
1971年にMMF『マネー・マーケット・ファンド』が誕生します。

 

MMFとは
アメリカ国債、譲渡可能定期預金証書(CD)、
コマーシャル・ペーパーなどを組み入れる
「元本確保型投資信託」のこと。

 

預金に比べて高めの利回りが期待できるため、
株式にアレルギーがある当時の人たちに好意的に迎えられました。

 

このMMFこそが、

アメリカ人のお金が
銀行業界から証券業界へシフトする
『きっかけ』を作ったのです。

MMFの隆盛が呼び水となって
今度は銀行業界の規制緩和が起こり、
預金金利の自由化へとつながります。

 

 

また1975年には
株式の『売買委託手数料』が自由化されます。

年は前後しますが、
1974年には税制優遇がある個人退職口座(IRA)が誕生。

また1978年には確定拠出年金制度
401(k)プランが導入されました。

 

株式市場が「暗黒の時代」だったからこそ、
上記のような大胆な改革が打ち出せたのかもしれません。

 

変化の芽が次々と出てくる中で
少しずつ、
アメリカ人も株式、投資信託といったリスク資産に馴染んでいったわけです。

 

次の1980年代は、
日本もアメリカも「株式市場」が右肩上がりに推移します。

日経新聞のこちらの記事によれば、

実は投資信託の『普及率』に関しては、
日本とアメリカ、1980年代にはほとんど「差」がなかったのだそう・・。

 

日本証券経済研究所によれば、
投信の世帯別の普及率は85年時点で約13%と米国(約15%)と大差ない。
だが現在は日本が8%程度と米国の5分の1以下にとどまる。

 

意外ですね。

そもそも、性格的に『投資』が好きな一部の人を除き、
最初から「投資やりたい!」という人など、
あまり居ないのではないでしょうか。

 

アメリカの投資信託「純資産残高」は(日本とは比べられないくらい)巨大ですが、

しかしその内訳は、
○ 確定拠出年金制度
○ 個人退職口座(いわゆるIRA)

この2つの制度を通じたファンド資産残高が、投資信託全体の4割近くを占めています。

 

 

つまり、
別にアメリカ人が特別「投資」に詳しいわけではなく、
またリスク選好型の「性格」でもなく、

 

まずは高所のところで
要らない規制を緩和し、
コストや税の優遇メリットを作り、
投資を始めやすい仕組みを整備して『動機づけ』をしたことが功を奏しているわけです。
(日本でも『動機づけ』という意味では
iDeCoやつみたてNISAが機能し始めていますよね!)

 

アメリカで50年をかけて
投資に馴染むことが新たな『文化』になったように、
日本でも投資に馴染む人が増えてくるのは疑いようがありません。

 

以下、日本の『税制優遇口座の加入者数』です。

 

個人型・確定拠出年金(iDeCo)
 198万人(21年4月末)
企業型・確定拠出年金(企業型DC)
  746万人(21年3月末)
つみたてNISA
  361万人(21年3月末)

 

若い人には
保守的なご両親世代の、
「投資なんて・・」という言葉には耳を貸さず、

コツコツ長期・分散・低コストの『王道』をぜひとも歩んでいただきたいです!

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