指数のお話

どうしてMSCIの株価は上がっているのか? その2)

2021年7月21日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

ハイ、月曜日の記事の続きです。

実はこの記事を書くきっかけとなったのは、
あるお客様の『ひと言』でした。

 

カンさん。
要するに「市場の平均」ってどうやって作っているのですか?

 

たしかに・・本質的な質問です。。

 

以下一例です。

『日経平均株価』は
日本経済新聞社が指数の提供会社となっています。

 

 

日経新聞社が225社の日本を代表する企業を選定し、
毎年秋に「組み入れ銘柄」の見直しを行いますが、

あれは
日本経済新聞社が独自の判断で、
銘柄を除外したり、新たに組み入れたりしているわけです。

 

次にMSCI社。
同社は一例としてMSCIジャパン指数を組成しています。

実はeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の日本株式部分は、MSCIジャパン指数との連動を目指しています。

 

このMSCIジャパン指数は、
先進国全体の株価指数「MSCIワールド指数」の傘下指数となります。

 

画像元:MSCI社

 

以下、MSCI社を例に挙げますが、
どの指数提供会社も骨太部分は同じでしょう。

ひと口に『株価指数』といっても、
時価総額の大きい会社順に
自動的に「箱」の中に入れているわけではありません。

 

個々の銘柄の浮動株の比率、
どのくらい売買が為されているかという「流動性」も加味し、
あるいは、業種(セクター)間のバランスにも留意して、
組み入れ銘柄は総合的に決定され、
指数の中身は随時更新されていくわけです。
※注 ココに私たちは口出しすることは出来ません。)

 

 

ちょっとロイターの記事を覗いてみましょう。
MSCI銘柄入れ替え、新規採用はゼロ・除外は29銘柄

これ、結構大きなニュースです。

MSCI指数の日本株式部分について、
今年5月に大きな入れ替えがありました。

(除外の銘柄が29もあったのです。
ちなみに新規採用はゼロでした)

また昨年11月には、
MSCI指数への日本株式の新規採用が5銘柄あり、除外は21銘柄でした。

 

上記は、
MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスにおける中国株式の組み入れ銘柄が逓増しているのとは対照的な動きでしょう。

 

いずれにしても、一介の民間会社が
市場平均を司る『株価指数』の中身を吟味し、入れ替える銘柄も自主決定している。
これは「事実」であります。

 

 

ちなみにMSCI社の場合、
銘柄(株式)の入れ替えは、
MSCIの Index Methodology(インデックス・メソドロジー)に則って定期的に行われます。

MSCI Japan Indexの『Index Methodology』(インデックス・メソドロジー)を見ると、2月、5月、8月、11月の四半期ごとに指数の構成銘柄の見直しを行い、市場の変化を反映させることとしています。

また5月と11月の半期レビューでは、インデックスのリバランスを行います。実際の銘柄入れ替えはこの5月と11月に実施されるようです。

 

 

ちなみに、今年の5月にMSCI指数の日本株式部分から除外された日本企業は、イオンモール、エア・ウォーター、アルフレッサ ホールディングス、アマダ、京都銀行、カルビー、中国電力、コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス、ふくおかフィナンシャルグループ、日本空港ビルデング、京阪ホールディングス、京浜急行電鉄、クラレ、九州電力、九州旅客鉄道、丸井グループ、名古屋鉄道、日本特殊陶業、セガサミーホールディングス、西武ホールディングス、しまむら、新生銀行、サンドラッグ、スズケン、太平洋セメント、帝人、東急不動産ホールディングス、豊田合成、山崎製パン。

 

これら銘柄の除外は5月27日の終値をもって実施された模様・・。

 

 

 

さて、ここから具体的な想像です。

MSCIなどの指数提供会社が算出する『株価指数』をもとに、プロの投資家(機関投資家と呼ばれます)である金融機関、年金基金、GPIFなどの多くがインデックス投資を実践しています。


その運用資産額は個人のインデックス投資家とは桁違いのため、市場に対する影響力は『絶大』と言っていいでしょう。

 

日経新聞の【「タダ乗り投資」市場蝕む パッシブ化の弊害強く】という記事にもある通り、

仮にこれから先、
益々『インデックス投資』が大きなシェアを獲得していけば、

 

指数提供会社の、
銘柄入れ替えというメンテナンス作業そのものが、
株式市場に対して【大きな影響力】を発揮することになります。

 

このような動きも予見して、
わたしはMSCI社の株価が上昇を続けていると推察します。

 

青の折れ線がMSCI社の株価です(直近2年)

 

画像元:yahoo finance us

 

実際、たとえばMSCIの指数に採用されていた会社が除外されると、インデックス投資を行っている機関投資家らはそれら企業の株式を結果的に持たなくなるわけで、銘柄入れ替えのリリースが発表されるだけで、大きな売り要因となります。

 

逆に、MSCIの指数に新たに採用される企業は、それ自体が大きな買いの要因となります。

 

つまり?

つまり、かつては
アクティブ投資を行う個人投資家、プロの投資家が
市場の『価値発掘機能』を担っていたわけですが、

 

インデックス投資の『影響力』が強くなってくると、
指数提供会社が実質的に「銘柄」発掘を行っていることになり得るわけです。

 

そう、マーケットが見せる景色はこれまでの様相とは異なる可能性があるわけです。

カテゴリ:指数のお話

おすすめの記事