指数のお話

どうしてMSCIの株価は上がっているのか? その1)

2021年7月19日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

インデックス投資家なら誰しも、
MSCI社のお世話になっているはず。

MSCIは「モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル」という会社で、さまざまな指数を日々算出しています。
(『指数提供会社』と云います)

 

たとえば
ニッセイ外国株式インデックスファンドは、
MSCIコクサイ指数との連動を目指しますし、
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は
MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックスとの連動を目指します。

 

 

同社がどれだけ多彩な指数を管理しているかは
MSCI指数ハンドブック』を見れば分かります。

MSCI社はビジネスとして
自社が算出する『株価指数』などを
世界中の金融機関にライセンス付与しています。

たとえばMSCI社は
Aというシンガポールの運用会社に『指数の使用権』を付与し、
ライセンスフィーを請求します。

 

Aという運用会社は、
ファンド名にMSCIの指数の名を冠したり、
またMSCIの提供する株価指数との連動を目指すインデックスファンド、ETFなどを組成したりします。
(こういうことをするのに、
『ライセンスフィー』を支払う必要があるのですね)

 

 

以前、ライセンスフィーについては記事に書きました。
インデックス・ファンドの難敵、それは指数使用料(ライセンスフィー)です

(基本、フィーというものは%(パーセンテージ)で徴収するのです)

当然、これらはMSCI社の収入となります。

 

そう、
『指数』は立派な商品(プロダクト)なのです。

 

 

私たちはふだん、市場平均との連動を目指すファンド!という言い方をしていますが、「市場平均」とは自然発生的に存在する「真ん中(平均)」ではありません。

 

MSCIのような会社が
独自の考えに基づいて組成する
人工的、最大公約数的『平均』と解すべきでしょう。

 

あなたもわたしも、
指数提供会社が算出する「指数」を、
市場平均の代表例として認識しているのです。

(ほかに著名な指数提供会社として
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスなどがあります)

 

さて、ちょっと昔ばなしです。

 

30年前はファンド市場に占める
インデックスファンド、ETFの比率はとても低かったため、
いわゆる『指数提供ビジネス』が脚光を浴びることはありませんでした。

最初の転機となったのは「ITバブル崩壊」でしょう。

ハイテク株を多数組み入れたアクティブファンドが暴落し、解約要請に応じるのにも苦慮していた中、市場平均(株価指数)との連動を目指すETF、インデックスファンドは暴落時にも十分な『流動性』を保つことができました。

 

(インデックス投資に対する信認が芽生え始めたとも云えるでしょう・・)

 

 

次の転機はリーマンショックです。
ETF、インデックスファンドは(暴落は起こったものの)市場平均との連動性は保たれ、一定の評価を得ました。

そして今、
米国はもとより日本でも
インデックスファンド、ETFの市場シェアはじわじわと上昇しています。

 

 

今年6月の日経新聞記事
世界のETF残高1000兆円超す 5月末、緩和マネーの受け皿に

つまり?

 

つまり、
MSCIのような指数提供会社の利益がどんどん伸びているということ。

 

MSCI社の
2021年第一四半期の財務諸表の情報を見てみましょう。

 


画像元:MSCI社

売上高に対する『営業利益率』が53%もあります(驚異的です!)

当期の純利益率も約41%と
圧倒的に高収益の会社なのです。

 

株価も順調に推移しています。

青の折れ線がMSCI社の株価です(直近2年)

 

画像元:yahoo finance us

紫色は参照としてS&P500指数の値動きです)

しかしながら、MSCI社の株価上昇には、他にも理由があるのです。

続く・・)

カテゴリ:指数のお話

おすすめの記事