投資家の感情リスク

カンさん。全世界株式と株50:債券50のバランスファンド、どっちがいいんですか?

2021年7月14日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

今日のタイトル、

 

全世界株式型のファンドと
株50:債券50型のバランスファンド、
「どっちがいいんでしょう?」という質問を、わりと頻繁にいただきます。

 

これは単純そうに見えて、実は深遠な命題です。

 

まず、『いつ』この問いが発せられるかが重要では?

それこそリーマンショックのような暴落時に、

「全世界株式型のファンドと
株50:債券50型のバランスファンド、どっちを選びますか?」と聞かれたら、

『バランスファンド』を選ぶ人の割合が増えるはずです。

 

なぜなら、
株式市場が大きなリスクを現に発生させてしまっているため、
あなたやわたしのような投資家は、自ずとリスクに対して過敏になってしまうのです。

 

 

いっぽう、
去年の後半から今年前半にかけて、
株式市場は総じて大きなプラスで推移していますが、

この時期に
「全世界株式型のファンドと
株50:債券50型のバランスファンド、どっちを選びますか?」と聞かれたら、

『全世界株式型』を選ぶ人の割合が増すことでしょう。

 

私たち投資家は知らず知らずのうちに大胆になり、リスクを過小評価しがちになるためです。

 

このように、あなた自身の選択が
直近の(モメンタムな)市場の状況に影響を受けることがしばしばあります。

言葉は悪いですが、
『気分』で投資の型を選んでしまっている、
そんな側面はないでしょうか?

 

 

ここは一歩下がって、
『気分』ではなくちょっとした『理屈』で
自分の投資対象を再考してみる機会を作ってみてはいかがでしょう。

話を単純にするために、
ここでは、

「全世界株式型のファンドと
株50:債券50型のバランスファンド」

ふたつの投資対象のみが存在するとします。

 

年齢はみな40歳。
手元に500万円の生活防衛資金があり、
手取り年収も
お勤めの会社の規模も安定度も同じ。
(みんな同じ賃貸のマンションに暮らしています)

 

 

そんなあなたとわたしですが、
投資信託の選び方で
(もしかすると)違いが生じるかもしれません。

それは両者がほんらい的に持っている
『リスク』に対する感じかたの違い、
どのくらいの『リスク』を許せるのかという「許容度」の違いによります。

 

ここでいう『リスクの許容度』は、
その人の定性的な部分のみに限っていることをご承知おきください。

 

 

またほんらいリスクとは
価格変動の「振れ幅の大きさ」を指しますが、

ここでは直感として分かりやすい
『最大下落幅』として認識してみましょう。

↓ 下落
↓ 下落
↓ また下落

 

昨年の2月終わりから3月終わりにかけて、
「コロナショック」と呼ばれる暴落が起こりましたが、

SBI全世界株式インデックスファンド、
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)などの
「全世界株式型のファンド」は

33%程度のマイナスになりました。

それに対して、
セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド、
楽天・インデックス・バランス・ファンド(均等型)のような
「株50:債券50型のバランスファンド」は、

18%~20%程度のマイナスで済んでいます。

 

毎月3万円のみの積み立て投資で見ると、
33%のマイナスと20%のマイナスは
そんなに大差がないかもしれません。

が、すでに運用資産が500万円程度になっていれば、
あるいは1000万円規模で運用を行っていれば、
どうでしょう?

 

 

33%程度のマイナスになっても、
気持ちが大きく揺らぐことなく、
同じ気持ちで、その後も資産運用が続けられますか?

 


あえて
「あなた」に問うてみたいのです。

 

これは、
『我慢ができますか?』
という問いかけとは少し違います。

 

資産運用は山あり谷あり長大な作業となるため、
少し『余裕』を持って、
当初と同じ心持ちで
運用が長く続けられそうですか・・?
という主旨の問いなのです。

 

どうですか?

1000万円の運用資産なら、
一時的にしろ33%の下落が起こると
670万円相当にまで資産がへこんでしまうことになります。

 

 

まだ運用を始めて間もない人は

「1000万円の運用資産なんて自分はぜんぜんないです!」
と言われるかもしれません。

が、つみたてNISA、イデコ(iDeCo)、特定口座の3つの窓口で、月5万円程度つみたてを続けていけば、(1000万円とは)いつか辿り着いてしまうレベルの資産なのです。

 

さて、あなたにクエッションです。個人の資産運用で目指すべきは、できるだけ大きなプラスのリターンの実現なのでしょうか?

 

そうでは、ないですね。
あなたの身体的、感情的におおよそフィットするような『リスクの大きさ』を負って
できるだけ平常心で長く投資を続けられることを、まずは目指すべきではないでしょうか?
(私たちは別に800メートル走の順位を競っているわけではないのです。)

 

 

どのくらいの『下落幅』なら許せるのか?という問いには、
あなたが1年選手であっても、10年選手であっても、
保守的なアンサーであるべきとわたしは思います。

 

 

まずは最悪に備えて、
それに呼応した準備をする。

(これはコロナ渦で私たちが学んだことですね)

 

許せる範囲の『下落幅』を前提に
投資対象をチョイスする。
多数の人が推しているから、
もっとも人気があるようだから、
このファンドにする。
ということだけは(くれぐれも)ないように・・・。

 

もし33%程度のマイナスは「キツイな」「無理そう・・」と感じるなら、今の設問でいえば「株50:債券50型のバランスファンド」のほうを選ぶべきでしょう。

ただし、一点注意。

当初「株50:債券50型」を選んだからといって、
未来永劫バランスファンドで行きましょう、

という意味ではありません。

 

 

山あり谷ありの長大な作業の途上で、
あなたの心的『リスク許容度』は変わる可能性がありますから、

運用という道程で
「もっとアクセルを踏もう!」と総合判断して、
全世界株式型にシフトすることもあり得るわけです。

 

運用という長い行いでは、
中くらいのリスク → リスク量を高めて → 高いリスクへの移行はしやすいですが、
最初から頑張り過ぎて
高いリスク → リスク量を減らして → 中くらいのリスクへという移行は、心理的になかなか実行しにくいのです。

 

 

今、金融市場がカネ余りの中
浮かれ気味の現在だからこそ
あえて、声を大に申し上げましょう。。

頑張りすぎず、ほどほどに。

ほどほどを
長くコツコツ続けることが、
個人の資産形成の姿であるとわたしは堅く信じています。

〇 関連記事
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(全世界株式型と8資産均等型を1/2ずつ混ぜご飯するという「リスク調整法」もあります)


 

カテゴリ:投資家の感情リスク

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