投資信託あれこれ

グローバル・ソブリン・オープンの功罪とは?

2021年1月23日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)って聞かれたことありますか?

当該ファンドが運用を始めたのは1997年のこと。
そう、毎月分配型ファンドのさきがけなのです。

商品開発に携わった人たちはすでに引退して、今ごろ悠々自適の生活なのでしょうか?

わたしは当該ファンドは
日本の投資信託の歴史に名を残すことになると思います。
(もちろん悪い意味で・・)

 

そんなことを考えていたら、
以下ニュース記事を見つけました。

三菱UFJ国際「グロソブ」、分配金を過去最低の5円に引き下げ
(Quick Money World)



とうとう分配金「5円」になりましたか・・。

 

グローバル・ソブリン・オープン(グロソブ)は2007年の最盛期、
純資産額が5兆円を超えていました。

毎月お小遣いのように「分配金」がもらえ、
おまけにその分配金がそこそこ大きかったためでしょう。

当ファンドの
最初の分配金(98年1月)は1万口あたり51円でした。
その後、98年8月からは「60円」に・・。

しかし2001年1月に「40円」に分配金が減ります。

2009年8月から2013年12月までは「35円」の分配金。
2014年1月から「35円」→「20円」に変更。


2016年の8月には「10円」に。
そして2020年12月から「5円」・・。



わたしは何も分配金が減ったことを非難したいわけではありません。

分配金が、あらかじめ定まっていないって当たり前じゃん』と、あなたなら思うでしょう。


そして投資を行う際に
損益(リターン)が不確定というのは、
投資の海に入る前の大事な大事な『注意書き』となります。

 


その注意書きを、
投資初心者にしっかり伝えず、

リスクの本質を学ぶ機会を、
グロソブは(投資家から)奪ってしまったのです。

もちろん、安易に同じ量のインカムが得られるはずだと信じた投資家にも非はあります。


しかし、安易に資金を集める中で
メディアも毎月分配型ファンドを煽り、
一部のFPも称賛し、

数多の投資家をミスリードしたという点で、
グロソブの罪、投信業界全体の罪は大きいと思うのです。


ほんらい的に、
投資を続ける =
不確実性と付き合い続けること』です。

いわば「波」と付き合い続けることで、
投資家として『耐性』が備わってくるはずなのです。

 




この不確実と連続的に付き合うことで、
少しずつ「長い時間軸」を獲得し、その事象と慣れていく、

一筋縄ではいかぬこのプロセスこそ、
投資家になる道そのものだと思いませんか?


タフな行いである投資なのに、
・今(現在)
・確実に
・この「実」が手に入りますよ・・という、

あなたの耳に心地よいだけの、
誤った事実』を伝えてしまったさきがけの商品が
このグローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)なのです。


今すぐもらえる『毎月の分配金』によって、

・不確実性に慣れ、
・今ではない、将来に
・大きな果実を得ようとする、

投資の本質】が忘れ去られたことはなんとも残念です・・。

 


「60円」から「5円」に分配金が変遷し、
またファンドの基準価格が当初の10,000円から「4,919円」(1月22日現在)になったことで、

皮肉にも23年以上をかけ、
大きな不確実性(リスク)を内包した商品であることを自ら証明したあなたを、わたしは決して忘れません。


公募の投資信託は、その「分配金」を
配当、利息、値上がり益など利益の中からのみ支払えるよう、早急に法律を改正すべきでしょう。

 

 

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