ネット証券は合併、再編の時代へ
2020年12月21日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
あなたやわたしのようなネット証券利用者は、
当のネット証券にとっては「良い顧客」とは言えません。
ネット証券にとって
収益をもたらしてくれる顧客とは?
・頻繁に取引をしてくれる人
・高い手数料の商品を購入してくれる人 でしょう。
eMAXIS Slimのシリーズを積み立て、
それを長期で持ち続けるなんて
収益にもっとも貢献しないケースのひとつかもしれません。
(が、『それ』を目指すのが、私たちのポリシーでもあります)
米国では株式の売買委託手数料ゼロを謳った
株取引アプリ「ロビンフッド」が一世を風靡し、
日本でも
個別株の売買手数料は限りなく「ゼロ」に近づいています。
頼みの綱のFX取引も、
先進国通貨に関しては「金利差」がどんどん小さくなり、
結果、為替レートはその変動幅が縮小し、
FXは出来高が細っています。
また、中期的に見れば、
こちらの記事で以前ご紹介した通り、
ギラギラ系というより、
必要に迫られて投資を始める「堅実派」の人の割合が増えるでしょう。
事実、劇的に口座数を増やしている楽天証券の、
『新規口座開設者の属性』を見てもその傾向は明らかです。
画像元:PR TIMES
これら新規口座開設者の多くは、
・頻繁に取引をしたり、
・高い手数料の商品を積極的に購入してくれる人には思えません。
ネット証券自身が
「大きなマンモスが向こうで取れるよ!」という姿勢から、
「はい、きれいに田植えをして、おコメを地道に育てましょう!」という姿勢への変換を迫られているわけです。
いわゆるビジネスモデルの転換。)
ただし、
育てるビジネスには、時間がかかります。
また、すぐには儲かりません。
投資信託ひとつ取っても
預かり資産が増えることで、
運用管理費用という報酬も増えますが、
(販売会社として。)
それでも投資信託の資産1兆円を預かって、
たとえ運用管理費用の取り分として
0.5%を継続的に徴収できたとしても、
年50億円の「売り上げ」なのです。
いかにシビアか、お分かりいただけますか?
【ちょっと寄り道です。】
有店舗型の証券会社については
未来は限りなく暗いと思われます。
早晩、合併・再編が始まると同時に、
ネット系の金融機関による買収が起こる可能性もあると考えます。
一例ですが、こちらは
大和証券グループ本社の過去30年の株価推移です。
画像元:SBI証券
画像元:PR TIMES
農耕型のビジネスに変換を迫られる証券業界では、
生き残りのため「規模の利益」を追い求めていかざるを得ません。
来年以降、ネット証券の合併、再編が本格化するとわたしは考えます。
軸となるのは「SBI証券」「楽天証券」でしょう。
12月15日のリリースで
楽天証券の口座数が500万口座を超えたことを知って驚きました。
「楽天証券、証券総合口座500万口座達成のお知らせ」
300万口座から400万口座にはたった15か月で、
さらにそれからわずか9カ月で500万口座になっています。
「楽天ポイント」で投資信託等が買えたり、
あるいは「楽天カード」の1%ポイント還元(月5万円までの積立)には大きなメリットがあります。
しかし、です。
ポイントはあくまで「おまけ」。
ポイントというおまけだけで
証券会社を選んでしまうのは本末転倒ではないでしょうか?
なぜこのお話をするかというと、
破談にはなりましたが、
楽天証券が三井住友グループに買収される可能性があったためです。
日経新聞(20年4月28日)
三井住友とSBI、速攻決着 「楽天証券買収」は不発
仮にこのディールが成立していれば、
楽天証券のポイントサービスはなくなっていました。
(それが合意の『条件』だったようです)
ネット証券も実にさまざまありますが、
今後、あっと驚くような『再編』があっても全然おかしくないとわたしは思います。
もしかすると、
Zホールディングス(PayPay)や、auフィナンシャルHが台風の目になるかもしれません。
大手都市銀行が、あるいはフィンテックの会社が絡んでくるかもしれません。
個人的には
マネックス証券、auカブコム証券あたりが
2大勢力(SBI・楽天)に含まれる可能性があると睨んでいます。
ネット証券はその黎明から20年が経ち、
これから一大変革期を迎えるのです・・。
カテゴリ:金融機関にモノ申す