確定拠出年金(iDeCo・企業型)

アメリカの確定拠出年金、メリットとデメリット

2020年12月4日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

ウォール・ストリート・ジャーナルの記事、
【バロンズ】「米401k年金、長短所と今後」からご紹介しましょう。


上記記事を読むと、
アメリカの確定拠出年金(401k)の実質的なスタートは、
1981年だと分かります。

なんでも、
401kプランの創始者といわれる人がいて
その人の名前がテッド・ベナ氏。


アメリカって
(今でもそうですが、)

ふつうの従業員と経営幹部の「収入差」が
とてつもなく大きいですよね。

実はテッド・ベナ氏が
確定拠出年金(401k)を考案したきっかけは、

報酬がとても高い経営幹部と、
ふつうの従業員の『利害』を
調整するためだったのだそう・・。

 

経営幹部にとって401kプランとは?)


何より所得控除(節税)が
魅力だったようです。
(報酬高いですから・・)

従業員にとって401kプランとは?)


確定拠出年金は個人の勘定になるため、
確定給付型の年金制度に比べて、

自分の口座残高が
実際に増えていくのが確認でき、
従業員にとっても利益となる制度と思えたようです。

 




ところで、
米国の確定拠出年金(401k)では、

ペナルティー料を払うことで
早期に引き出すことも可能となっています。

この「早期解約」について
興味深い記述がありました。

 

ボストン大学退職研究所が
2015年に実施した分析によると、

401kにおける早期引き出しは
退職資産の総額を25%減少させる。

そのため多くの人々が、
従業員は困窮時を除いて
退職まで貯金を引き出せないようにすべきだと主張する。

 

たしかに・・。

日本の確定拠出年金のように
一律、一定年齢(60歳)に達するまで
『引き出し不可』としたほうが、

「年金制度」としては
枠がしっかり定まって、
理に適っていると云えるのでしょう。


さらに、上記記事内で
ベナ氏が提唱している【改革案】が3点あります。
ご紹介しましょう。

 

1.すべての雇用者に
給与天引きによる401k
またはIRAの提供を義務付けるべき


これって、
オーストラリアの
『スーパーアニュエーション』のイメージなのでしょう。


スーパーアニュエーションとは、
オーストラリアの強制加入の私的年金制度です。

(詳しくは以下記事をご参照ください。
世界をぐるり。投資信託・資産残高「上位10ヶ国」は?』)


アメリカの確定拠出年金(401k)では、

パートタイム労働者、フリーランス、
小規模企業の従業員などをカバーし切れていません。

また、401kの導入は
雇用主(企業)による「任意」であり「強制」ではありません。


 

 

2.加入者に早期の引き出しを禁じる
 (先ほどお話しした通り)

 

3.退職時に、
一時金として受け取れる資産の割合に『上限』を設けるべき


これはわたしも賛成です。

「年金形式」で受け取るのを基本にしたほうが、
退職者の生活実態、

つまり、
『いつ、どのようにお金が必要になるのか』に合致すると考えます。

(年金形式でもらったほうがムダ遣いしにくいですし。)

日本の企業型確定拠出年金、個人型確定拠出年金にも、
この種の制限は設けてよいと思います。

 

最後に以下『現状の数字』を見ると、
米国の確定拠出年金(401k)が
いかに巨大であるかが分かります(2018年時点)

 

〇 有効加入者数は5500万人を超える。

〇 アメリカにおける、
投資信託の運用資産額の約3分の1が401kである。←スゴイ。

〇 2018年における
従業員の拠出限度額は1万8500ドル/年である。

※ これに会社側の拠出
(=マッチング拠出)が加われば、
トータルの拠出限度額はさらに大きくなります。


〇 401kにおける
株式投資信託の【平均経費率(年間コスト)】は、
0.48%である(この項は2016年時点。)

ここは↑日本の確定拠出年金も
目指すべきところでしょう。

 




〇 大手企業の401kは
平均29種類の投資オプションを提供。

これって平均29本の金融商品を提供という意味でしょう。

日本のネット証券等における
確定拠出年金の商品本数は、
すでに米国と同等になっていると云えます。

あとは継続的な教育インフラをどうするか?
(日本ではNHKの『Eテレ』とかで番組作ったら面白いと思うのですが・・)

 

カテゴリ:確定拠出年金(iDeCo・企業型)

おすすめの記事