投資信託あれこれ

純資産額に大きな起伏があったら要注意!(ここが投資信託の難しいところ)

2020年10月11日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

話を少し単純化します。

今、A社 B社 C社 D社 E社、
「5つの株式」のみを保有する株式ファンドがあるとしましょう。



ファンドが保有する会社の『株価』が上がれば、
当該ファンドの「純資産額」も増加します。

株価上昇分だけ、ファンドの規模が「大きくなる」わけです。




しかし、投資信託が投資信託として
その規模(=純資産額)を拡大させるためには、
何より『資金流入』が求められます。

 

具体的には、

―ファンド内から出ていく資金より、
ファンド内に入ってくるお金のほうが「恒常的に」多い状態。―
つまり『純・資金流入』が続くことで、

 

ファンドが保有する株式の価値が変わらなくても、
ファンドの「純資産額」は安定的に増えていくわけです。



ここ、伝わっていますか?




純資産額が増え続けている状態は、
投資信託を保有する『あなた』にとっても心地よいものであるはず。



なぜなら、
ファンドの「純資産額」が大きくなれば、

 

「安定的な運用」が期待でき、
銘柄の取引コストも「規模の利益」で低くなり、

何より、
【途中で繰上げ償還されるリスク】がどんどん小さくなるためです。

 

 

 




わたしは2015年頃に、
『三井住友・中小型株ファンド』を知りました。



日本の中小型株に投資を行う
アクティブファンドです。

当時、純資産額が13億円あまりしかありませんでした。
(※ マザーファンド形式ではない)

 

成績はというと・・すごく良かったのです

 



当該ファンドは2003年に運用を開始し、
「参考指数」としている
日経ジャスダック平均株価と比較しても、

ファンドの騰落率は
上記指数を『直近1年』、『直近3年』、『設定来』とも
コンスタントに上回っていました(2015年時点。)



控えめに言って「成績バツグン」です。

でも「純資産額」は・・13億円台でした。

 

 




 

先日、このファンドのことを思い出して、
運用レポート(月次レポート)」を見てみました。

すると、20年8月31日現在で
純資産額は約98億円にまで増えています。



(成績は?)
直近1年は参考指数に負けていますが、

『直近3年』、『設定来』では
相変わらず指数をアウトパフォームしています。



今、純資産額は「98億円」に増えています、
と言いましたが、

その前にこの5年間の「経緯(プロセス)」を
きちんと見ておいたほうがよさそうですね。


「直近5年の純資産総額のチャート」(目盛りは右側)






画像元:三井住友DSアセットマネジメント


ちょっと↑想像と違っていました。


上記、よーく見ていただくと

2018年の8月の終わり頃、
何が「きっかけ」かは分かりませんが、

資金流入の増加によって
当ファンドの「純資産額」(薄いブルーの帯)が急に増え始めます。




そして翌19年の4月16日には、
当ファンドの純資産額は約230億円に!



しかしその後、一転して
ファンドの純資産額は減り始めます。
(今度は資金流出の増加!)







画像元:三井住友DSアセットマネジメント

上記のように
(純資産額が急に)大きく伸び(そして)大きく減って、

今現在の純資産額
およそ100億円になっているのです。


わたしは上記のような
『純資産額』の急激なアップダウンを、
熱しやすくて・冷めやすい現象】と呼んでいます。

 

 


モーニングスターの「月次資金流出入額グラフ」を見ると、

当該ファンドの純資産額が大きく伸び、そして大きく減った要因が、

急激な「資金流入」と、
急激な「資金流出」であったことがはっきり分かります。

 

 




画像元:モーニングスター

18年10月の資金流入は30億円近く。
逆に19年11月の資金流出は40億円を超えています。
【まるでジェットコースターのようです・・】


これはいったい何を意味するのでしょう?

 

『三井住友・中小型株ファンド』の保有者のうち、
熱しやすくて冷めやすい人たちが
相当数いたということ・・。

 

 

 



 

このように急激なお金の流出入があると、
ファンドの運用会社は翻弄されます。

 

〇 急にたくさんの資金が流入
→ その時買いたい銘柄が(相当の金額規模で)あるとは限らない。

現金の比率が増加するだけ?
あるいは無理して銘柄を買い付けてしまう?

〇(多くの解約要請で)急にたくさんの資金が流出
→ 本当は保有しておきたい銘柄を売るはめになることも。



もうタイヘンです。。

 

下記、19年8月30日を基準日とする
「直近1年」の当ファンドの騰落率が、
参考指数を下回っている事実からも、

運用チームの人たちが上の、
『熱しやすくて冷めやすい人たち』に翻弄されていたことが分かります。





画像元:三井住友DSアセットマネジメント


熱しやすくて・冷めやすい人たち】は

当該ファンドの基準価格が上昇する中、
何かの媒体で成績優秀ファンドとして取り上げられたのを見、

(あるいは販売会社が販売に力を入れることによって、)
急に当該ファンドに興味を持ち始め、買付け、

(もちろん「スポット買い」でしょう)

 

そして、しばらく保有して、
当該ファンドを売却してしまった・・



そういう人たちなのです。

 

 

そして投資信託の真に難しいところは、
そういう人たちを
上手く「締め出す」ことがなかなか出来ない点にあります。

 

いや、逆説的に云いましょう。



あなたがするべきことは明快です。

あなたは興味がある投資信託の「運用レポート(月次レポート)」を必ず見て、純資産額の大きな波(アップダウン)」がないかどうかを必ずチェックするのです。


ジェットコースターのような起伏を描く投資信託は、
避けたほうが無難であるとわたしは思います。

 

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