投資信託あれこれ

『モーニングスターの幻、投信格付けの真実』(WSJの記事より)

2020年9月10日


こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

生まれてはじめて、
米国のモーニングスター社のサイトを見たときの衝撃は忘れません。

ひとつひとつのファンドの運用成績、
ファンドが保有する銘柄の開示だけでなく、

ファンドマネージャーの名前や経験年数や、

おまけにそのマネージャー自身が
そのファンドに投資しているか否かまで、
詳細に『情報開示』されていたのです。

ファンドの歴史を振り返るとき、
モーニングスター社が
投資信託の透明性向上に寄与した功績は大きいと思います。


そのモーニングスターは、
投資信託の『格付け評価』(星の数)で有名です。

しかし、その『格付け』とは、
いったいどの程度信頼できるものなのでしょうか?

ウォール・ストリート・ジャーナルが
モーニングスターの幻、投信格付けの真実』という記事を掲載しています。

(※ 以下「モーニングスター」という呼称は
すべて米国モーニングスターを指します)

 

 

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は、

モーニングスターが現行システムを開始した直後の2003年までさかのぼって、
ファンド1万本以上の運用成績を調査し、
同社の格付けを検証した。

高い格付けを得た投信は多額の資金を集めたが、
その大半は好成績をあげられなかった。



わたしは
日本のモーニングスターの『格付け』
(スターレーティング)についてお客様から質問を受けると、

 

「星の数によるファンドの格付けはあまり当てになりませんよ。
なぜなら、ファンドのこれまでの成績をもとに格付けをしているわけですから。」


と申し上げています。

上記記事内でも
星は過去の成績への評価」と明記されています。


また、
具体的なエピソードも紹介されています。

2011年、
モーニングスターで
「5つ星(★★★★★)」を獲得していた投資信託に、
ある小さな年金基金が資金を移しました。

そのファンドの成績は、
モーニングスターの『大型ブレンド』に分類された他のファンド群の95%を上回っていたのです。

 

(すごいですね。)

しかし、
翌2012年には
他のファンド群の26%を上回るだけに。

そして2013年には、
わずか11%を上回るのみになったとのこと・・。

 




同年金基金の
事務局長のコメントが印象的です。

「私たちのブローカー(モルガン・スタンレー)によれば、
それは投資に値するファンドかどうかを決めるために私たちが入手できる中で最高の基準のひとつだった」


(※【それ】とは、
モーニングスターの格付け(星の数)のことです)


実際、米国では
モーニングスターの【影響度】は絶大です。

たとえばファンド運用会社にとっては、

「5つ星」(= 最高格付け)を得ることができれば、
大きな資金流入につながるわけです。


上記記事内では、
こんな具体例も紹介されています。

「バファロー・エマージング・オポチュニティー・ファンド」は、
13年春にモーニングスターの「5つ星(★★★★★)」を得て、
数億ドルの資金が流入しました。

(運用資産は5カ月で4倍に!)

ただし、アクティブファンドにとっては、
急激な資金流入は痛し痒しの面が・・。

 

(※ 資金が大挙して流入しても、
そのとき買いたい銘柄が妥当な金額で買えるとは限らないため。
また現金比率を高めたくないために、割高な銘柄も(無理して)買ってしまうリスクもあります。)


同ファンドは
半年後には新規のファンド購入の受け付けを停止します。

当該ファンドは翌14年には7%超下落し、
他のファンドの約95%を下回る成績となってしまいます。

<その後2年で2つ星(★★)に転落し、資産も減少・・>

 




また、ファンドの運用会社には
格付けを宣伝したい』というインセンティブも働きます。

以下、「ホッジス・キャピタル・マネジメント」の
ホッジス氏の言及です。

ホッジス氏によると、
ホッジス・キャピタルは
格付けを宣伝する権利として
モーニングスターに1万ドル超を支払ったとのこと。


・・なんと。そういうことなのですね。


また、
記事内では、

バンガード・グループと
フィデリティ・インベストメンツは
モーニングスターのライセンス、データ、その他ツールの費用として、
年間100万ドル以上を支払っていることが明らかにされています。

★ まさに、
投信評価会社のビジネスは、
投資信託業界そのものをドームのように覆っているわけです。

格付け(星の数)はあてにしない。この考え方が賢明だとわたしは思います。


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