投資信託のコストに歴史あり
2020年5月21日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
今年の3月、
期間は限定されるものの、
運用管理費用(信託報酬)が『ゼロ』の投資信託が日本に登場しました。
わたしは持っていた箸を思わず落としそうになりましたよ。
なぜならひと昔前までは、
運用会社が「積極的に」
継続コストが低い投資信託を作ってくれるなんて、夢のまた夢でしたから。
(比較的)運用管理費用は安い時代だった。
2000年~2010年代、
投資信託の継続コスト(運用管理費用)は上がるいっぽう。
そして2017年以降~、
再びファンドの運用管理費用は低コスト化に向かう。
このように、投資信託の運用管理費用にも
「歴史あり」なのですが、
今日は1976年に設定された、
日本株式アクティブファンド、
『MHAM株式オープン』のお話をしましょう。
敏腕ファンドマネージャーの
佐久間康郎さんが運用を仕切られていたファンドで
「DKA株式オープン」というファンドがあります。
当該ファンドは運用会社の合併にともない、
『MHAM株式オープン』に改名されました。
『MHAM株式オープン』の
【運用管理費用】をちょっと覗いてみますね。
画像元:アセットマネジメントOne
(若干の
実績報酬の部分は除きますが、)
運用管理費用は税抜きでナント 0.75%!
日本株式のアクティブファンドですよ。
このくらいの『コスト水準』がふつうだったのです。
(昔のアクティブファンドのけいぞくコストは
十分低かった。)
次に、税抜きベースで【運用管理費用】の
委託会社(運用会社)
販売会社
受託会社
「各社」の取り分の割合を出してみます。
〇 委託会社(運用会社) 60%
〇 販売会社 27%
〇 受託会社 13%
となります。
これってどうでしょう?
わたしは上記の割合は
それぞれの会社の『仕事量』と見合っていると思います。
しかも『MHAM株式オープン』では
ご覧いただくとお分かりの通り、
画像元:アセットマネジメントOne
一定金額ベースを越えてくると、
・販売会社への報酬は「固定」のまま
↓
・委託会社(運用会社)の報酬比率を「高くして」、
↓
・(その分)受託会社の比率を「減らす」ことになります。
とても理に適っていると思います。
なぜなら、
投資信託という商品は?
運用会社が作って運用を行っているわけですから・・。
運用会社こそが、投資信託の【主役】なのです。
逆説的に言うと、
1990年代の終わりから、
2010年代にかけて起こったこと、
それは、
〇 委託会社(運用会社)
〇 販売会社
〇 受託会社
の中で、
『販売会社』への報酬割合を不当に釣り上げて、
銀行、証券会社といった
『販売会社』の販売意欲を掻き立てるいっぽう、
『運用管理費用』というコストが高止まりすることにつながったのです。
(ちょうど1998年の金融ビッグバン時に、
外資系運用会社が参入し、
ほんらいは『健全な価格競争』が起こるべきところ、そうはならずに、私たち消費者が犠牲となったのです。)
最後に、ファンド資産を保管する
受託会社(信託銀行)への報酬は
もう少し多くても良いとわたしは思います。
なぜなら、
万が一、受託会社が倒産してしまった折に、
法規通りにファンド資産が分別保管される
「保険料」と捉えることも出来るためです。
カテゴリ:投資信託あれこれ