金融機関にモノ申す

フィデリティ証券が投信の販売手数料を撤廃、さてこれからどうなる?

2019年11月21日

こんにちは。
投資信託クリニック代表の カン・チュンド です。

日経新聞の以下記事によりますと、

フィデリティ証券は12月から 
取扱いの656本すべての投資信託について、
販売手数料(購入時手数料)を撤廃するとのこと。

(※ ネットで取引をし運用報告書などを電子交付にすることが条件。)

日経新聞『フィデリティ証券、投信販売手数料を12月撤廃

 

 

 

 

・・素晴らしいことだと思います。

投信の購入時手数料などは一刻も早く
「過去の遺物」となるべきコストでしょう。


では、他の大手ネット証券では現状、どうなっているのでしょう?

 

楽天証券)取扱いの投信本数は2,657本
うち、購入時手数料ゼロのファンドは1,365本
(11月11日現在)


SBI証券)取扱いの投信本数は2,690本 
うち、購入時手数料ゼロのファンドは1,367本
(9月30日現在)

 


規模の違いこそあれ、
フィデリティ証券は
すべての投資信託の購入時手数料を「なくす」という意向が英断だと思います。

この意味合いは
あなたやわたしが思う以上に大きいのではないでしょうか。

ちょっと想像してみましょう・・。

 


購入時手数料を【ゼロ】にしてしまうと、
販売会社(銀行・証券会社)は

顧客に投資信託を回転売買させる
インセンティブが消えてしまいます。

 

顧客に売ったり買ったりさせても、
もはや『報酬』が入ってこないわけですから。

これは、
『新発売の投資信託』が減っていくことを意味します。

 

投資信託って(そもそも)どんな類の商品でしたか?

 

 

 

ほんらい「これでもか!」というくらい
銘柄の分散を施している商品であるため、
短期で売買するには向いていないプロダクトなのです。
(※ 短期では価格が大きく動きにくい商品ということ。)

 


悪しき購入時手数料が撤廃されることで、
投資信託の【持ち方】が
ほんらいの姿に戻っていくと思われます。

要は、中長期で「気長に持とうよ・・」という、
ほんらいの形に戻されるわけです

 

ココがいちばんの変化です!

 


また、フィデリティ証券の気持ちになって考えてみましょう。
もう販売時の手数料はないわけですよ。

どうします?

運用管理費用が高いファンドを
積極的に売ろうとしますか?

・・それもひとつの手でしょう。

 


でも、もし「そのファンド」の成績が振るわなかったら?
消費者は、そういうファンドを長くは持ってくれないかもしれませんよ。

するとどうでしょう?

販売会社は、
運用管理費用の一部を『報酬』として得ることが・続いていきません。

・・これは困ってしまいますね。

 

ここに至って「販売会社」ははじめて、
顧客に長く投資信託を持ってもらうことが、
自分たちの収益を安定化させることにつながると気付くわけです。
まあ、ちょっと遅すぎたのですが・・(^^;

 

 

 

 

この点から言っても、
『新発売の投資信託』は減っていくと予想されます。


私見ですが、
ファンドの購入時手数料がなくなって、
どうやって収益を上げていこうかと

冷汗を掻いている証券会社などは、
もう(10年後には)なくなってしまっていることでしょう。

 

 

良質の投資信託を持ち続けてくれる顧客
今の2倍、3倍にしていけば、
ビジネスとして十分にやっていけるからです。
(何しろ、この日本では
投資信託を持っている人より、
持っていない人のほうが圧倒的に多いわけですから。)

 


今後フィデリティ証券では、
(購入時手数料がなくなることで)

どのような投資信託を品揃えするか、
どのような投資信託をお勧めするのかという『基軸』が
ガラリと変わってくるでしょう。

では、どんなふうに変わるのか・・。

 

フィデリティ証券は
顧客にできるだけ長く持ち続けてもらえるような、
コストがリーゾナブルで
パフォーマンスが優れた持続性の高い『投資信託』を勧めるようになるはずです。

 

なるはずです。

 

そうなってもらわないと困ります・・。


また上記記事内では、 もうひとつ大きな指摘があります。

 

運用手数料にあたる「信託報酬」も
現金を含む資産残高が3000万円超なら割り引く。

 

これは、
フィデリティ証券の
大口の顧客へのディスカウントとなります。

 

 

 

 

たとえば、田中さんという人が
フィデリティ証券で現金を含め資産残高が5000万円相当あるなら、

投資信託の運用管理費用の一部を、

―これはフィデリティ証券が報酬として受け取っている部分に限られると思われますが、―

ディスカウントしましょうということ。

 

定期預金などで大口顧客に
「高めの金利」を設定するのと似たサービスです。

 

投資信託の世界では今後、
アドバイザリー業務(投資助言サービス)に力を入れていくことになるでしょう。

 

何を隠そう、
米国のフィデリティでは
ロボットアドバイザー機能を用いた
投資助言業務が大きな収益源となっているのです。

 


最後に、
こちらの記事でも触れましたが、

株式の売買委託手数料も、投資信託の購入時手数料も
『ゼロ』になることは時代の趨勢です。


金融商品を売り買いさせることが
投資ではない。

 

投資信託の購入時手数料を『ゼロ』にするということは、
そういうムダな売買をさせて儲けてきた「あこぎな商売」から、
足を洗いますという、
金融機関自らの宣言に他なりません。

 

 

投資信託でまっとうに
資産を増やしていく方法は、


投資信託を賢く「保有し続ける」ことであると、
販売会社自らが認めたということです。← ココ、重要!

私見ですが、
わたしは次にSBI証券が
すべての投信の販売手数料「ゼロ」に踏み込むと予想します。

 

 

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