金融機関にモノ申す

チャールズ・シュワブが仕掛けた株式の売買委託手数料『ゼロ化』の衝撃とは?

2019年11月9日

こんにちは。
投資信託クリニック代表の カン・チュンド です。

おそらく2019年10月7日
証券史の中で
「重要な1ページ」を飾ることになるでしょう。

この日、米国最大のオンライン証券
チャールズ・シュワブが

米国株式、ETF、オプション
オンライン上の取引にかかるすべての売買手数料をゼロ』にしてしまったのです。

 

 



画像元:Charles Schwab

ほんとに『ゼロ』です。


このサービス導入の発表後、
チャールズ・シュワブの株価は9.7%下がり、

競合のTDアメリトレードは株価がマイナス25.8%という事態になりました。

もちろん、シュワブ発表の翌日、
競合のTDアメリトレードもEトレードも、
売買委託手数料『ゼロ化』を発表しています。

 

 

皆さん!

アメリカではすでに、
株式の売買委託手数料は「過去の遺物」となったのです。

 


『投資の取引インフラ』が垣根なく
文字通りフリーになったことは、
投資家として素直に喜ぶべきことです。

ではどうして
アメリカの大手オンライン証券会社は

株式の売買手数料「ゼロ化」に踏み切ったのか、
いや、踏み切れたのか・・?

いくつか理由があると思われます。

 

 

1.既存の大手金融機関に匹敵する
預かり資産残高を獲得しているため。

 

ウォール・ストリート・ジャーナルの特集記事
The Race to Zero Commissions』によりますと、

 

9月末現在、
チャールズ・シュワブ、TDアメリトレード
Eトレード3社を合わせた顧客預り資産残高は
およそ6兆ドル。



それに対して、
バンク・オブ・アメリカ(含むメリルリンチ)の
富裕層向けビジネスのそれはおよそ2.9兆ドル。



また、モルガン・スタンレーの証券ビジネスにおける
預り資産残高は約2.6兆ドル。

 

 

つまり、
従来の大手金融機関に匹敵する
顧客資産を集めているからこそ、
売買手数料「ゼロ」に踏み切れたのではないでしょうか。


(※ 私見ですが、日本でも
「SBI証券」「楽天証券」の預り資産残高が、「野村證券」「大和証券」のそれを上回る日が
いずれやって来るでしょう・・)

 

2.ビジネスの多角化を進めている

 

たとえばチャールズ・シュワブは、
売買手数料などの「コミッション収入」は、
トータルの売り上げの7%程度を占めるに過ぎません。

シュワブは実は銀行(シュワブ・バンク)で稼ぎ、
カストディ(資産管理)業務で稼いでいるのです。

カストディ業務というとちょっと分かりにくいですが、

有価証券等を適切に管理し、
決済その他一切のバックオフィス業務を
やってくれる存在です。

 

 




ちょっと寄り道になりますが、
バロンズの以下記事から引用してみましょう。

【バロンズ】証券業界で始まった新たな戦争

同社(チャールズ・シュワブ)が
管理する顧客資産は3兆7000億ドル、



うち1兆5500億ドルは
登録投資顧問(RIA)からの委託資産で、
同社は米国最大のRIA向けカストディアンとなっている。

 


はい、RIAとは
「Registered Investment Advisor」の略です。

アメリカではもっともポピュラーな
『投資アドバイザー』の形態を指します。

顧客に投資助言を行い、
「投資一任契約」も付随するケースが多く、

顧客からの預り資産に対して
パーセンテージで報酬をチャージするのが一般的です。



そういう
投資アドバイザーのバックオフィスを
チャールズ・シュワブは担っているのですね。

 

3.オンライン証券自身が、
売って買って手数料を払ってもらうという
ビジネスから決別したということ。


実はココがもっとも重要!

「やった!
株式の売買手数料がなくなって
コストが『ゼロ』になるんだ!」

と喜ぶだけでは、この現象の
「一側面」しか見ていないことになります。

 

 

 

 

そもそも
売買委託手数料とは?


投資家が
金融商品を売って買ってをしてくれて、
はじめて課すことができる手数料です。


長年、証券業界は
顧客に金融商品の売り買いをさせることで「収益」を上げてきたわけです。

売買委託手数料を『ゼロ』にするということは、
そういう「あこぎな商売」からサヨナラしますという 最終宣言 に他なりません。



証券会社自らが、
ほんとうに資産を増やしていく
ベストな方法(考え方)は、

金融商品の「取引」ではなく
金融商品を賢く「保有」することであると、

はじめて
公に
認めたことになるのです。

 


 

それが、
株式の売買手数料を『ゼロ』にした本当の意味合いなのです。

まさにエポックメイキングな出来事として
後年記憶されることになるのでは・・。

 

で、カンさん。
肝心の日本では?

 

はい、10月の決算説明会で
SBIホールディングスの北尾吉孝CEOが

3カ年計画で手数料の完全無料化をめざす」と
明言しています。

日本経済新聞
迫る手数料ゼロ、証券会社に試練 自由化から20年

アメリカで起きたことは、遅れて日本にもやって来るでしょう。


最後に、
チャールズ・シュワブの
「提供金融商品」のページを見てみましょう。

皆さん、よーく観てくださいよ。




画像元:Charles Schwab

 

いちばん上にある金融商品は?

 

Mutual Funds(投資信託)です。

これこそ「大きな変化の証し」なのです。

カテゴリ:金融機関にモノ申す

おすすめの記事