野村アセットマネジメント、ファンド本数を2030年までに『半減』させる計画
2025年2月22日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
投資信託について「ヘンだな」と思うのは、
日本の株式市場に上場する銘柄数(約3900社)より、国内の公募投資信託の本数(約5700本)のほうが多いという事実です。
いくらなんでも、
投資信託、5700本も要らないでしょう。
本数があまりに多いと、
消費者(投資家)が
投資信託を選び切れない不便さが生じます。
また、投信業界の人たちも
利益を上げにくいでしょう。
なぜなら、
投信ビジネスは(ほんらい)規模の商売であるためです。
以下、二つの株式ファンドがあるとしましょう。
A 米国株式オープンファンド(純資産額10億円)
B 米国株式クリティカルファンド(純資産額1兆円)
・どちらも手数料(信託報酬)は年1%です
Bのファンドは
純資産額が「1兆円」ほどあり、
運用会社等が受け取る年間の報酬は100億円程になります。
ところがAのファンドは
純資産額が「10億円」しかなく、
年間の報酬は1000万円しかありません。
米国株式の運用という意味では
『同じように』仕事をしているのに、報酬がまるで違うわけです。
投信ビジネスの戦略として、
1ファンド当たりの純資産額を、
大きく育てていくことで利潤を上げるべきなのに、
ファンドの『本数』だけが増え、
結果として1ファンド当たりの純資産額が小さくなってしまう事態は、
まさに自分(運用会社)で
自分(運用会社)の首を絞めるようなもの・・。
上記の『Aファンド』のように、
誤解がないように申し添えると、
ファンドに関わる
販売会社さんや
運用会社さんは、
上述した、
過多な「ファンド数」の犠牲者ではなく、
「あこぎなビジネスモデル」によって・・・。
公募の投資信託の本数が約5700本もある理由は明快です。
それは、
大手銀行、大手証券会社が主導し、
己の子会社であるファンド運用会社に、
新発売の投資信託の乱造を、
要求し続けてきたためです。
何のために?
顧客に定期的にファンドの『買い替え』をさせ、販売手数料で稼ぐビジネスモデルを確立するために、です。
「典型例」をひとつ述べましょう。
野村證券(販売会社)が主導し
野村アセットマネジメント(運用子会社)に、新発売のファンドを数多く作らせてきたという『歴史』を持ちます。
(繰り返しですが、販売手数料をより効果的に稼ぐためです。)
その、野村グループが大きく方針転換するようです。
上記記事によりますと、
運用会社「野村アセットマネジメント」は
2023年時点で約700本あった投資信託本数を、
2030年までに『半減』させる計画であるといいます。
素晴らしい取り組みですし、ぜひやり遂げていただきたいと思います。
そもそも、
投資信託が約5700本あっても、誰の得(とく)にもならないわけです。
既存のファンドの『併合』を
(実務的作業として)より実行しやすくすべきでしょうし、
ファンドの純資産額が過小なために繰上げ償還させるという、前向きの「縮小」「合理化」は粛々と進めるべきでしょう。
現在の
投資信託の過多な「本数」は、
消費者の利益がないがしろにされてきた証左です。
そして、
「長期の」資産形成が、ないがしろにされてきた証拠でもあります。