保険ラプソディー
2024年11月28日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
本日は『保険』の話です。
さっそく
社会派ブロガー「ちきりん」さんの
記事から紹介してみましょう。
ちきりんさんはズバリこう言います。
「今までの保険市場は、
“保険に入る必要のない人”によって成り立っていた」と思っているからです。
ちょっとショッキング?
でも正論だと思います。
率直に言ってこれまで、
保険業界は「物語」を奏でることに長けてきました。
保険という商品が
これまでコツコツと積み上げ、
私たちに流布してきた『ストーリー』とは・・、
どこか温かく、
頼りになって
(それによって)安心を得られ、
長く付き合える信頼感がある。
お金回りのことは、
この「保険」を中心に考えていれば、
いちばん堅実で、大きく外れることがない。
日本人と保険という商品は『親和性』が高いのです、という物語を見事に完成させ、産業としてもこれまで大成功を収めてきました。
例えば、
「死亡保障」を目的とした保険はほんらい、
『蓄え』が乏しく、
かつ、
『小さなお子さんがいる』(=経済的責任が大きい)人にこそ、必要な商品であるはずです。
画像元:「Chikirinの日記」より。
ところが
実際に保険商品を買っているのは、
貯蓄がたくさんある人たち。であり、
小さなお子さんはいない人たち。です。
・・とても狡猾です。
ほんらいニーズの外側にいる人に、商品が売れれば売れるほど、その市場(マーケット)は大きくなります。
『拡大解釈』という便利な言葉が、
保険営業の現場で用いられてきたのかもしれません。
万が一の保障だけでなく、
保険商品は貯蓄性にも使えますし、
投資性の保険商品もございます。と。
ほんらいニーズ(例えば「10」程度)を飛び越え、卓越した『マーケティング力』によって、その市場を10倍にも100倍にもしてきた実績には目を見張るものがあります。
生命保険文化センターは
「2024年度 生命保険に関する全国実態調査(速報版)」を発表していますが、
生命保険(個人年金保険を含む)の世帯加入率は、2人以上世帯で89.2%に達します。
今でも投資信託クリニックの運用相談の3回に1回程度は、「終身保険」や「医療保険」や「個人年金保険」が絡んだ相談となります。
いかに、
日本人の生活に『保険』という商品が浸透しているかという証左でしょう。
これほどの成功がもたらされた要因は、
保険という商品イメージを
『一挙両得』に仕立て上げたことにあります。
たとえば「終身保険」がその典型です。
貯蓄にもなるし、死亡保障も得られる。
一挙両得。
りょうとく?
話はガラリと変わります。
もしも、
もしも、です。
「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の『約款』が大きく変わり、
・・あくまでフィクションですよ。・・
保有する全ての皆さまに、
・死亡保険金 500万円(病気・事故)
その代わり、
信託報酬(運用管理費用)を
年0.88%に改定させていただきます。
なんて言われたら、
あなたはどう「リアクション」しますか?
いや、保障機能要らんし。
お金を増やすために、投資信託買ってるのに。
となりませんか?
あなたが「投資信託」という商品に求めている機能は、純粋に『お金を増やす』ことであり、
それ以外の機能は要らないから、手数料はなるだけ低くしてね。と願っているはずです。
(ファンドに必要ない)『保障機能』を加えることで、コストを上げるなんて、消費者としていちばん納得できないことですよね。
同様に、
保険という商品に求めているのは 保障機能 だけなので、別に『貯蓄性の機能』とか、『投資性の機能』は要らないです。
その分、支払う保険料が高くなっちゃうし。
と、
私たち消費者は声を大にして言い、
その考え方に沿って、
保険商品の選択をする必要があるのではないでしょうか。
念のために申し添えますと、
わたしは「保険不要論者」ではありません。
個人の暮らしにおいては
(生命保険よりも)むしろ「損害保険」が重要と考えます。
たとえば
『自動車保険』や『火災保険』がその典型でしょう。
起こる可能性はとても低いが、
万一起こった場合、
経済的損失が著しく大きくなる事案については、貯蓄も投資も無力です。
(個人にとって)保険というしくみは、必須なのです。
わたしがこの記事で提案しているのは、
ということなのです。
よーく考えてみましょう。
アイスクリームが食べたいなら、近くのコンビニで
MOW(モウ)のアイスを買います。
賃貸情報が欲しければ、スーモで検索します。
お金を増やしたければ、投資信託を選びます。
あなたのニーズが○○です、
と明快であれば、
過不足なく応えてくれるモノ、サービスを選びますよね。
もちろん、
日常生活の中では
万一の保障だけでなく、
貯蓄することも、投資することも大切なのですよ。
が、
そもそも、
『貯蓄』をするなら、
預金のほうが(保険商品よりも)使い勝手がよいです。
保険料として月1万円払うより、
毎月1万円預金をするほうが、
お金の「用途」はうんと広がります。
そして、お金を増やす(投資)なら、シンプルに投資信託を買えばよいわけです。
私たちは、
ひとつの商品(保険)を買うだけで、
貯蓄にもなるし、死亡保障も得られるよ!という『一挙両得』的洗脳から、自由になる必要があります。
それは(実は)
『二兎を追う者は一兎も得ず』なのです。
アイスクリームが食べたくて、
コンビニでMOW(モウ)を買ったのに、
ポテチも併せて買ってしまうと、支払うお金が膨らんでしまいます。
仮に「10」のお金が残せる中で、
あなたなら、
貯蓄や投資に回すお金と、
万一の保障や補償に回すお金の「割り振り」を、どのように規定しますか?
7:3 ですか?
わたしは
9:1 で良いと思いますよ。
つまり、
本当に毎月10万円位お金が残る人が、
1万円以上「保険料」にお金を費やしているとしたら、その人は保険に入り過ぎだと思います。
それだけ、
貯蓄や投資に回すお金を犠牲にしているわけです。
カテゴリ:金融機関にモノ申す