オリバー・ツイストから学ぶ(時間が溢れることこそ、豊かさのしるし)
2024年7月24日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
ロマン・ポランスキーの映画に
「オリバー・ツイスト」(2005年)があります。
この映画を観ると19世紀前半、
イギリスで興った産業革命前後の
工業社会の黎明の様子がよく分かります。
主人公のオリバー少年の境遇を鑑みるまでもなく、当時は「貧富の差」が激しい、けっこうギスギスした世の中だったのです。
人は『動く機械』を手に入れました。
この『動く機械」を用いることで、
人は「モノ・サービスを生産する能力」を飛躍的に高めました。
これまでとはまったく違った「スピード」で社会が動き始めたわけです。
『動く機械』を
『AI(人工知能)』に置き換えてみてください。
そんなに違和感はないはずです。
(ところで)どうして『産業革命』という言葉が用いられるのか?
それは文字通り、
人の暮らしを
ポーンと何段階も飛躍させる時期であったためです。
ただし、一般大衆が
すぐに豊かになったわけではありません。
工業化社会へ移行する中、
オリバー少年をはじめ、
多くの農民が都市に出て、労働者になりました。
資本家から見れば、
安い労働力が大量に手に入ったわけで、
そこから「生産力増強」→「利潤拡大」を実現することが出来たのです。
では、元農民たちにとっては?
逆に(以前より)忙しく貧しくなってしまった側面があります。
オリバー少年をはじめ、
19世紀に都会に繰り出した多くの労働者にとって、
己(おのれ)が唯一の資本でした。
それから月日が経ち、
都会に生まれた子どもたちは
物心ついたときから、
今日明日のご飯のために、
働いて働いて、
働きづめの毎日を送らざるを得ない・・、
そんな時代がしばらく続いたわけです。
産業革命初期の労働者の辛苦の上に成り立っているのを、私たちは忘れるべきではないでしょう。
当時、50歳を超えるころには
すでに肉体は疲れ果て、
子どもが結婚するかしないかの内に「死んでいく」。
そんな人生が大半だったのです。
オリバー・ツイストに描かれた生活では、
「青春」という言葉はまだ生まれてさえおらず、
「投資」など、夢のまた夢だったのです。
では、
この200年間で
(暮らしを豊かにするということで云えば、)
それは
(間違いなく)『時間』でしょう。
例えばこんにちの週休2日、40時間労働でさえ、
オリバー少年にとっては驚愕の数字に映ったはず。
ところで今は2024年です。
次なる『産業革命』を迎えつつある今、私たちにとって(もっとも難しいのは)『時間』と『お金』の順位付けなのかもしれません。
これはわたしの勝手な想像ですが、
人工知能社会が本格化すると、
モノ・サービスを生産し、
それを流通させるコストは飛躍的に低下し、
長い目で見れば、
今の労働時間の1/10で
(今と)同じ成果を現出させることも可能になるのではないでしょうか。
働く(稼ぐ)の「時間比率」がうんと小さくなるわけです。
人工知能が暮らしの隅々にまで行き渡る頃には、
『お金』より『時間』が、
より豊潤で
より重要な資産であると感じられるようになるのでは?
まさにオリバー少年にとっては
驚愕の未来であるかもしれません。
やがて溢れ出る『時間』をどう生かそうかと思案できることこそ、豊かさの証しではないでしょうか。
カテゴリ:100年ライフプラン