投資信託あれこれ

日本には投資信託という名の不思議な魔城があります

2024年5月28日

 

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

2023年度、
日本における『携帯電話端末』の出荷台数は

2668.5万台でした。

 

この数字を聞くと
「スゴイ台数!」と思われるかもしれません。

 

が、実は、出荷統計推移で見ると
2000年度来で『過去最少』の数字なのです。

 

携帯電話が売れなくなってきている?

 

んー、それは事実かもしれません。

 

 

 

 

 

しかし、

『多彩な機能があって故障もなく
みなが携帯を長く使えている。』ということでもあるのでは?

 

あなたはご所有のスマホ、もう何年使われていますか?

 

 

できれば、ですが、
あなたが保有する『投資信託』も、

 

なるだけ長く、
その本質的機能が維持され、
ファンド価格も順調に伸びていって、

 

15年後、

「ああ、この投資信託持ってて良かったな。」
と思いたいですよね。

 

 

もちろん、
携帯端末の台数に比べると、
投資信託の「本数」はうんと少ないのですが、

 

それでも公募の投資信託は
「5915本」もあります(2024年4月末時点)

 

 

ところで、
この5915本のファンド、

来年も、3年後も、8年後も、
みんな元気で運用し続けているの?

 

残念ながらそうではないのです。

 

 

 

 

実は5915本の投資信託のうち、純資産総額10億円未満のファンドが約3割もあります。
小規模なファンドが多いため、投資信託ではコンスタントに『償還』が起こっているのです。

 

 

 

そもそも、
運用期間が予め定められたファンドは、

例えば、
2024年10月31日までの「信託期間」であれば、

期日満了で
ファンドは『償還』されます。

 

 

あるいは、
「運用期間は無期限です。」と謳っているファンドでも、

純資産総額の伸び悩み、
純資産総額の減少などによって、

投資信託の運用が終了してしまうことがあります。

 

これが『繰上げ償還』です。

 

 

 

 

 

投信資料館の記事から拾ってみましょう。

 

投信資料館HPより。

 

 

たった1ヵ月間で、
運用期間内での『繰上げ償還』が14本あったということは、

単純計算すると、
年で168本にもなります。

(多いですね。)

 

 

ここであなたは、

投資信託の運用って難しいんだ・・。

と感じられますか。

 

 

わたしなら、

単に投資信託の『数』が多すぎて、
互いのファンドが顧客を取り合って、

 

(結果)多くのファンドが
純資産額がなかなか伸びない状況になってしまっている。

 

と解釈します。

 

 

 

 

 

「繰上げ償還」が相次いで、
徐々にファンドが淘汰され、

投資信託の『本数』が
4000本台、3000本台と減っていけば、

ファンドの「需給の歪み」も改善するのでしょうが、

 

 

―投資信託の根本問題のひとつ、―

新発売のファンドが多いために、

(繰上げ償還が相次いでも)
投資信託の『本数』が減らないのです。

 

 

ファッション業界よろしく、

季節ごとに、毎年毎年、相も変わらず『新しいファンド』を出して出してという、投信業界の病んだ精神には、ほとほと辟易します。

 

 

とてもヘンです。

 

 

 

 

 

以下、少々過激に聞こえるかもしれませんが、

 

法令で
『購入時手数料』を課すことを禁じてしまえば、
新発売のファンドは激減するとわたしは思います。

 

 

 

ところで、
上記の投信資料館の記事では
次のような記述があります。

 

 

繰上償還の理由を見ると、
「国際のETF VIX短期先物指数」を除く

 

13本のうち11本は
残高の減少により商品性を維持することや
効率的な運用を行うことが困難な状況になったことが理由でした。

 

 

このような事情は起こり得ることですし、理解もできます。

 

 

でもわたしがにわかに信じられなかったのは
以下の部分です。

 

 

(上記11本の繰上げ償還されたファンドのうち)

 

1本は、受益者が一人であり、
その受益者が全口数を換金したい意向を示したため、

 

 

残り1本は、2023年4月に自己設定を行い、
販売会社および受益者の獲得に努めたものの、
獲得できず、今後の販売見通しもたたないという理由でした。

 

 

・・そんなことってあるのですか?

 

 

 

 

 

受益者がたった一人のファンドが、ほんとうにあるんだ。

 

※受益者とはファンド保有者のこと。

 

 

そして、
運用会社がファンドを設定する際に
幾ばくかの自己資金を入れて運用を開始したものの、

 

『販売会社』そのものが見つからず、

顧客(『受益者』=ファンド購入者)を
一人も獲得できずに、

 

2023年4月に運用を開始し、
2024年2月まで運用を続けていたファンドがあるなんて、

わたしには、にわかに信じられませんでした。

 

 

なんたる無駄でしょう・・。

 

 

このような非効率さが、
回りまわって、
ファンド業界の「高コスト体質」を下支えしているわけです。

 

 

わたしは投資信託との付き合いが26年になりますが、いやはや、この業界にはまだまだ不可思議な「闇の部分」があります。

 

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