(後編)ウィリアム・シャープの『資本資産価格モデル』って、個人向け国債変動10年+オルカンって解釈していいの?
2024年5月2日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
物事を抽象化するためには、
「ごちゃごちゃとした」対象の、
「複雑な因果関係」を
まず分かっていないといけません。
先日ご紹介した、
ウィリアム・シャープの『資本資産価格モデル』(CAPM)は、
ごちゃごちゃとした、
個々の銘柄群の動きの有り様を、
思い切って抽象化した概念となります。
画像元:ビジネスハック
この『資本資産価格モデル』を、
私たち(日本人)の実際の投資に当てはめてみましょう。
「個人向け国債変動10年」と、
「オルカン」の「組み合わせ」こそが具体例であると言って差し支えありません。
あなたはちょっと臆病だけれど、
自分のお金を増やしたい「大衆投資家のひとり」です。
なるだけ「理に適った行動」を取りたいと願っています。
が、
決してリスク選好的なわけではありません。
わたしも(本当は)リスクは嫌いです。
この、
投資家のリスク回避的な要素
―具体的には元本確保がなされ、
「いくばくかのリターン」が約束されている資産(国債)― を起点としているのが、
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シャープの『資本資産価格モデル』なのです。
背中に背負うリスクの総量は?
無リスク資産(国債)へ投資することによる
リスクフリーレートと、
市場全体の変動と連動する
マーケットリスクプレミアムの『合計』であるといえます。
ほんとうは、
この国債の部分、
つまり元本確保商品の代表格は
10年物利付国債なのですが、
現状大半を日本銀行が抱えて込んでしまっているため、流動性に難があります。
したがって、
日本人が
「市場ポートフォリオ」を自ら構成する際は、
『個人向け国債変動10年』
『オルカン』という組み合わせでOKだとわたしは思います。
単純明快に、
楽天証券で個人向け国債変動10年を買って、
NISA口座や特定口座で
『オルカン』を持ってるだけだけど、
と訝しく思っているあなたは・・・、
ハイ、こんなんでホントに良いのです。
学術界が
60年以上前に示した、
リスクとリターンの正当な組み合わせの「概念」を、あなたは今まさに体現している。
『大したポートフォリオ』を保持していると云ってよいのです。
画像元:ビジネスハック
この資本資産価格モデル(CAPM)の線上で、
資産を保有する場合、
無リスク資産(個人向け国債変動10年)と
リスク資産(オルカン)の保有割合が問題となります。
これも「単純明快」に捉えましょう。
『リスク耐性』によって、適切な保有割合は異なる。
『リスク耐性』が変化し、結果適切な保有割合は異なる。
と捉えてみるのです。
『リスク耐性』と言われると
ちょっと構えてしまいますが、
要は
たとえば手元にある
1000万円の総資産が、
いくらぐらい減っても許容できるか。
を「目安」にするのです。
もしも商品として2008年に存在していたら、
損益がマイナス50%くらいになっています。
その『オルカン』を2割(200万円)保有し、
無リスク資産を8割(800万円)保有していたら?
資産全体(1000万円)から見た
最大損失額は「100万円」になります。
具体的に『表』にしてみましょう。
※総資産1000万円の場合
最大損失額 | 無リスク資産:リスク資産 |
100万円 | 8割 : 2割 |
150万円 | 7割 : 3割 |
200万円 | 6割 : 4割 |
250万円 | 5割 : 5割 |
300万円 | 4割 : 6割 |
350万円 | 3割 : 7割 |
400万円 | 2割 : 8割 |
自分に合った「無リスク資産」と「リスク資産」の組み合わせこそが、その人にとっての「正解」なのです。
繰り返しになりますが
『インデックス投資』のアイデアは、
ウォール街からではなく、
学術界からやって来ました。
しごく単純なポートフォリオも、
理論的な裏付けを有するのです。
どうぞご安心ください。
カテゴリ:インデックス投資全般