(前編)ウィリアム・シャープの『資本資産価格モデル』って、個人向け国債変動10年+オルカンって解釈していいの?
2024年4月30日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
ここだけの話、
歴史時間の大半で
株式市場はちょっと「いかがわしい場所」でした。
そこ(株式市場)は
一定以上の資本を持つ者だけが集う
「一種独特な社交場」であり、
そこでは特定の「人間関係」がものをいい、
「猜疑心」と「射幸心」がうごめいていました。
オモテには出てこない
「とっておきの情報」や、
「売り買いの経験則」や、
市場での振る舞いかたの「言い伝え」などが、
相場を乗り切る心得だったのです。
そんな株式市場に、
20世紀半ば『大きな変化』が訪れます。
科学(サイエンス)を持ち込む人が現れたのです。
その第一人者のひとりが、
ハリー・マーコウィッツでしょう。
マーコウィッツは、
ひとつの株式だけを持つより、値動きが異なる複数の株式を組み合わせたほうが、同じリスク量のもとより高いリターンが期待できることを、数学的に証明した人です。
1952年に発表された『ポートフォリオ選択』という論文は、
ひとつの銘柄(点)ではなく、銘柄の組み合わせ(面)で資産運用を捉えるという『発想』を提示しました。
マーコウィッツの理論は
なにやら難解に聞こえますが、
根底に流れる『主張』はしごくシンプル。
リターンだけをやみくもに求めるわけじゃない。
リスクも気にするのです。
投資対象を分けることでリスクも低下していくはず。」
ということを、
理論的にまとめ上げた人なのです。
換言すれば、
『リスクコントロールの側面から、初めて投資を捉えた人。』とも云えるでしょう。
この、マーコウィッツの理論をさらに進化させ、
1963年「資本資産価格モデル」(CAPM)として結実させたのが、ウィリアム・シャープでした。
シャープは、
就職先のシンクタンク ランド研究所でふたつの出会いを果たします。
ひとつは、
ハリー・マーコウィッツとの出会い。
(シャープはマーコウィッツの門下生となります)
もうひとつは、
最新型のIBMコンピューターに出会ったこと。
ウィリアム・シャープは
プログラミングが出来る経済学者になったのです。
ご本人です。↑
上述のマーコウィッツの理論では、
しかし、
〇(そもそも)上場している銘柄の数も膨大でした。
ここでシャープが習得した、
『プログラミング言語』が役立ったのです。
(シャープはたった30秒で
100銘柄の証券分析が出来るアルゴリズムを開発します)
そして、
ウィリアム・シャープは
マーコウィッツの理論を発展させるために、
市場ポートフォリオという
『補助線』を引くことになるのです。
株式市場内の膨大な銘柄同士の組み合わせバリエーションや、組み合わせの巧拙をいちいち算出するより、
株式マーケットをもっと『抽象化』して、まずは軸となる 中心線 を引こう。
という考え方です。
この時、
(シャープ自身は意識していなかったとしても、)
市場そのものの値動きに対して、
―シャープは『市場ポートフォリオ』と呼びます。―
特定の銘柄が、
どのような振れ幅(変動幅)で反応するのか?
たとえば仮に、
というように、
市場そのものに対する『感応度』は異なります。
この、
「市場感応度」と呼ばれる物差し β(ベータ)を創置したのがウィリアム・シャープの功績でした。
こんなグラフ、見られたことありませんか?
これが「資本資産価格モデル」の概念図です。
カンさん。
なんか理屈っぽい話ばっかりしてるけれど、上の図表の、青で書いてある「市場ポートフォリオのリスク」っていうの、簡単に分かる!
具体的にはS&P500とか、先進国株式(MSCI コクサイ指数)とかの、リスクの大きさ(そして期待リターンの大きさ)を指すんでしょ?
あっ、はい。概念としてはその通りです。
それは、1950年代、60年代時点では、
ほとんど誰も、市場自体を「投資対象」として認識していなかった、という事実です。
「マーケット」自体は昔からありました。
日々計測するための「市場平均」という名の指標(=指数)も、ずっと存在していました。
しかし、今となっては信じられないかもしれませんが、
上記マーコウィッツとシャープの取り組みと理論体系の構築は、インデックスファンドという製品の発想の源になっているのです。
二人は1990年に揃って、
ノーベル経済学賞を受賞しました。
授賞理由は、
「資産形成の安全性を高めるための一般理論形成を称えて。」
でした。
続く・・)
カテゴリ:インデックス投資全般