【パート2】オルカンと世界初の投資信託は(もちろん)繋がっていますよ
2024年3月1日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
再び世界初の投資信託、
「フォーリン・アンド・コロニアル・ガバメント・トラスト」(1868年設定)のお話になります。
これがほんとに『オルカン』につながるの?
ハイ、つながります(笑)
「フォーリン・アンド・コロニアル・ガバメント・トラスト」は当時、一体どんな銘柄(債券)を組み入れていたのでしょう?
以下に見てまいります。
※ピンクのマーカーは私が引いたもので特に意味合いはありません。
今の投資信託に繋がる、
「銘柄」「国・地域」の分散がなされていることが分かります。
当該ファンドの平均利率は「6%」程度あったのだそう。
さまざまな国の債券が並んでいますが、
中に「ニューサウスウェールズ債」という記述があります。
これは?
オーストラリアの代表的な州である
「ニュー サウスウェールズ州」の州債のことです。
また、
当時の「鉄道」は
今でいう最新ハイテク産業であり、
『エジプト鉄道ローン』とは、
エジプトの鉄道プロジェクトに対する貸付けであったと思われます。
あるいは、ダニューブ(ドナウ川)債は
今でいうプロジェクト債のようなものだったのでしょう。
さて、
「フォーリン・アンド・コロニアル・ガバメント・トラスト」が設定された19世紀後半のイギリスは、世界最先端の工業国でしたが、
供給 > 需要の状態に陥り、緩やかなデフレになっていました。
つまり、国内で投資を行っても、
もはや高い利潤(利回り)を期待できるような状況ではなく、
「低金利」が常態化していたのです。
一度目の成熟、が起こったのですね。
他方、イギリスの外を仰ぎ見れば、
世界はまだまだ発展途上であり、
したがってインフラ投資が旺盛で、資金需要も強く、
(つまりは)供給 < 需要の状態で、
総じて「高金利」だったわけです。
「フォーリン・アンド・コロニアル・ガバメント・トラスト」が保有する債券の平均利率がおよそ6%だったというのも頷けます。
1868年当時、
(たとえば)ロンドンで洗濯屋を営んでいたスミスさんにとっても、『投資対象』として魅力的だったのではないでしょうか。
上記のような背景を
(ちょっと無理やり?)
現代の時間に引っ張ってくれば・・、
日本(2024年)は人口減少が顕著です。
総人口に占める高齢者の比率も年々高まり、
社会における総需要量は減じるいっぽう。
供給 > 需要の状態が常態化している。といっても過言ではありません。
一方、日本の外を仰ぎ見れば、
世界はまだインフラ投資が旺盛で、
技術革新のスピードは早くなるいっぽうで、
資金需要も強く、
潜在リターンはそれなりに高い状況にあります。
「全世界株式」に投資を行うニーズが存在するわけです。
『オルカン』という商品の登場も
時代の要請的な側面があります。
さて、先ほど登場したスミスさん。
19世紀後半のロンドンの下町で、
洗濯屋さんとして一所懸命働いています。
これまで蓄えてきたお金を
もっと増やしたいとは思うけれど、
そんなに大きなお金ではないし、
個別の株式だけを買うのは(単価が高いし)リスクが偏りすぎると感じています。
スミスさんの性格からいうと、
「究極のハイ・アンド・ローみたいな投資はイヤ」なのです。
もしかすると、
『オルカン』に興味が湧いたあなたも、
同じようなお気持ちではないでしょうか。
わたしはよく、
集中投資をしてはいけません。
と申し上げていますが、
19世紀後半のイギリスにも同じような人はたくさん居たはずです。
預金では得られないリターンを長期的には得たい。
そういう『潜在ニーズ』を顕在化させたのが、投資信託という道具なのです。
最後に、
浅野裕司による
『財産形成計画と投資信託法』という論文から引用してみましょう。
このトラストの目的は、
多くの種類の証券に分散投資を行うと共に、
剰余金収入の一部を元本返済のための
減債基金として積み立てることによって、
外国政府証券及び植民地政府証券への投資の危険の減少を図り、
中流階級の投資家にも大資本家と同様な利益を享受させることにある
※トラストとは「フォーリン・アンド・コロニアル・ガバメント・トラスト」のこと。
『オルカン』と世界初の投資信託は
その根底部分でつながっているのです。
カテゴリ:投資信託あれこれ