投資信託最大のリスクは『繰上げ償還』です
2023年11月4日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
これまでたくさんの投資信託を見てきました。
「これは興味深い!」と思ったファンドも
(もちろん)過去にはあったのですが、
そのうちのひとつが、
『FPバランスファンド』です。
当ファンドは2009年に運用をスタート。
独立系のFP会社
「FPアソシエイツ&コンサルティング」がファンド設計に関わり、
資産配分や投資対象の選定についても、
投資助言を行っていました。
当該ファンド(安定成長型)の『ポートフォリオ』は、
〇 債券50%(日債20 先債30)
〇 株式 35% グローバルリート5%
コモディティ 10% というものでした。
株式内の新興国株式を
オーバーウェイトする発想が画期的だったと思います。
運用管理費用も当時0.6825%(税込)と十分に低く、このバランスファンドは期待できるかも?と密かに思っていました。
ところが・・
7年後の2016年、
このファンドは「繰上げ償還」されてしまいます。
約束した期日以前に、
ファンドの「運用」が終了してしまうこと。
たとえるなら、
JR中央線で
高尾まで行くつもりだったのに、
「お客さん、スミマセン、
この電車、三鷹止まりになったので、降りてください。」
と言われるようなものです。
※ 運用期間が「無期限」のファンドを選んでいたら、約束の期日というのは勿論「無期限」であるわけです。
その投資信託が質的に「良さそう」だからと言って、そのファンドが長年運用を続けてくれるとは限りません。
ファンド運用も「ビジネス」ですから、
そのファンドを買ってくれる人が大勢いて、
ファンドの規模(純資産総額)がある程度膨らんでくれないと話にならないわけで。
『繰上げ償還』の憂き目に遭わないためには?
純資産総額が50億円未満のファンドは
避けたほうが無難でしょう。
いくら成績が良くても
「万一『繰上げ償還』があるかも」と、
心配しながら投資を続けるのは健康的ではありません。
単純な話、
ファンドを買う人(量)より、
ファンドを売る人(量)が多い状態が続くと、
ファンドの規模が萎んでいきます。
「三井住友・アジア・オセアニア好配当株式」というファンドがあるのですが、
以下ご覧いただくと、
直近の5年、見事に「純資金流出」が続いています。
画像元:ウエルスアドバイザー
当該ファンドの純資産総額は(まだ)200億円ほどありますが、
これだと安心して5年、10年と持ち続けられる状態ではないでしょう。
ちなみにこちらは、
eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)の「直近5年・月次資金流出入額」です。
画像元:ウエルスアドバイザー
『純資金流入』が続いていれば、
繰上げ償還のリスクなど一考する必要もありません。
整理しておきますと・・
「純資産総額」をチェックすること。
そして、手間でも
「ウエルスアドバイザー」のページに行って、
リターンのタブをクリック、
『月次資金流出入額』をクリックして、
ちなみに、
運用会社がファンドの運用を、
中途で【終わらせることもありますよ!】と言うお告げは、
ファンドの『約款』であらかじめ記しています。
例えば、
総口数が10億口を下回ると
繰上げ償還される場合があります。・・
みたいに。
ただし、
総口数が一定数を下回ると、
必ず「繰上げ償還」されるわけではなく、
繰上げ償還する、
しないの最終判断は、
『運用会社』に委ねられているのです。
さて、冒頭の
『FPバランスファンド』の繰上げ償還は、
どのようにファンド保有者に知らされたのか?
当時販売会社のひとつだった、
沖縄銀行のサイトに詳しい情報が載っていました。
繰上げ償還までの「詳細なスケジュール」が
記されています。
委託会社の三菱UFJ国際投信株式会社より、
2016年4月14日(木)に
繰上償還を予定している旨の連絡がございました。
これに伴い当行では、
2016年2月19日(金)をもちまして、
同ファンドの販売の取扱を停止いたしましたので
ご案内いたします。
【ご参考】繰上償還(予定)に関するスケジュール
3月8日(火) お客さまへ繰上償還に関するご案内を発送
3月8日(火)~3月23日(水) 異議申し立て期間
3月24日(木) 繰上償還可否決定日
4月14日(木) 繰上償還日
4月15日(金) 償還金の支払い
つまり、
繰上げ償還の発表があっても、
実際の償還日までには
通常、1ヵ月半から2ヶ月程度の時間的猶予があるわけです。
その間、任意に投資信託を解約することは
もちろん可能です。
(残念ではありますが、)
繰上げ償還が決まったら、保有のファンドはなるだけ早く売却しましょう。
(繰上げ償還が決まっても、
ファンド保有者の資産が、
ゼロに帰してしまうわけではないので、そこはご安心ください)
カテゴリ:投資信託あれこれ