わたしが「持ち株会」をお勧めしない理由
2023年10月26日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
『持ち株会』と聞くと、
会社の福利厚生の一環と解釈する人が(意外と)多いのです。
「せっかく会社が制度を用意してくれているし、ちょっと入っておこうか。」みたいなノリです。
しかも、
たいていの会社では
持ち株会に対して「補助制度」を設けており、
仮に10%の補助が付けば、
本人負担は1万円でも
なんと1万1千円分の自社株が購入できます。
でも、です。
「持ち株会」とは?
1つの会社の株式のみを買いますから、これは立派に投資でしょう。
急に話題は変わりますが、
「あなたは今年で勤続何年になりますか?」
これまであなたは
あなたという資産を、
会社の中でコツコツ育ててきたはずです。
(年収も入社当初より増えているはず。)
一般に、
継続的な収益を生んでくれる
あなたという資産のことを『人的資産』と呼びます。
人的資産の算出方法はシンプルで、
給与の『現在価値』のことです。
ちょっと想像してみましょう。
若いときは?
『人的資産』が大きく
『金融資産』はほんのわずかです。
ところが50代になると?
『人的資産』はどんどん小さくなり、
その埋め合わせをすべく
『金融資産』を育てないとダメだね。ということになります。
上図は意外と重要な概念です。
会社員の半生を
『マネー』という側面から見ると、
「人的資産」と「金融資産」のバランスをうまく保つことが肝要とわかります。
また、
「人的資産」と「金融資産」のバトンタッチをうまく行えるかがカギです。
わたしはFPですから、
よくある説明法として、
頭の右側で「人的資産」を睨みながら、
「自分の金融資産のことを考えてみませんか?」と呟いたりします。
誰しも定年退職すると
『人的資産』がゼロになってしまいますよ。
これはちょっとした衝撃でしょう。
若いうちは『金融資産』はほとんどありません。
が、この、
やがて逓減していく『人的資産』を睨んで、
若い頃から
コツコツ『金融資産』を増やしていきましょう!
と説くわけです。
人的資産(あなた自身)と金融資産(お金)は
あなたの半生の中で、
「互い」が
「互い」を
補い合う存在になります。
であるなら、
両者はなるだけ 離れた場所 で、
それぞれを育ててあげたほうがよいと思いませんか?
さらに言えば、
金融資産を持つことに他なりません。
わたしが「持ち株会」をお勧めしない理由はここにあります。
あなたの『人的資産』が急減する場合に、
『金融資産』(自社株)自体も急減してしまうのは(できれば)避けたいですね。
ただし、
「持ち株会」に入っていないと、
会社での立ち位置に影響が出るという人は、掛金を最低限にするなどして対処しましょう。
また「会社の補助制度」を
持ち株会に加入する理由に挙げる人がいますが、
経営陣から見た、
「持ち株会」の効用をシビアに検証すべきでしょう。
(会社から見れば)安定株主の創出に他なりません。
10%、20%程度の自社株購入の補助で
経営上、継続的な安定株主を創出できるなら、経費としては安いものです。
そしてもう一点だけ、
人的資産、金融資産の別の視点をよろしいですか?
ザックリ言えば、
金融資産 = お金。です。
「あなた」と「お金」は、
いわば好対照の資産です。
人間ですから!
細かい分散を
やろうと思えばいくらでも出来ます。
全世界株式インデックスファンドとか・・。
広範な分散を施せる可能性を持った『金融資産』を、
たった一つの会社の株式で
500万円も600万円も持つのは、
かなり大胆なリスクの取り方ではないでしょうか?
わたしの最初のアドバイスは明快です。
今、毎月1万円、2万円と「持ち株会」に回している掛金を、
『新NISA』での積立投資、
たとえば「全世界株式インデックスファンド」への積立に切り換えるのです。
すると
同じ株式への投資でも、
その投資対象が
「1社」から「2800社」に変わりますよ。
カテゴリ:100年ライフプラン