【Part2】国境を越えて働く日本人が、証券取引において置き去りにされている?
2023年9月8日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
昨日の続きです。
本日は「金融取引全般」に話題を広げてみます。
あなたが日本の「非居住者」になると、
銀行口座の維持にも支障をきたすことがあります。
日経新聞の下記記事では
『ネット銀行』の厳しい対応を記しています。
日経新聞
『海外転勤で断絶する金融サービス、資産運用立国に影』より。
住信SBIネット銀行、GMOあおぞらネット銀行やPayPay銀行は、原則として海外転勤になった場合に口座解約を求めている。
ソニー銀行は口座は維持できる。
海外で出金する場合は別に作るデビットカードを利用する。
すごいですね。
口座解約というのは
いかにも極端です。
海外に赴任するからこそ、
日本におけるお金は、
安全な場所(預金)に置いておきたいというニーズが高まるのに。
面倒なのは住宅ローンを借りている場合だ。
対応はばらばらで仮にローン口座の解約を求められた際には別の銀行で借り換えが必要となる。
こちらも驚きです。
住宅ローンとは
長期のお金の貸し借りの契約です。
資金の貸し手(銀行)が
外資系金融機関に買収されても、
金銭消費貸借契約は当初の条件のまま継続するはずです。
借り手が海外に居住することで
返済の督促がしにくくなる?
(それはあるでしょう。)
団体信用生命保険(団信)が有効でなくなる?
いや、それはありません。
生命保険契約は
海外赴任(=日本の非居住者)になっても、
保険料を継続して支払うことで、有効に継続できます。
(※ただし所定の届け出は必要)
繰り返しですが、
日本の『非居住者』に対する
金融機関の対応は、
海外に転出する人などほとんどいないよねという、昔の常識にとらわれているとしか思えません。
上述の日経新聞記事では、
邦人海外在留者のうち
永住者を除いた長期滞在者は
22年10月で75万人強。
と伝えていますが、
国境を超えて行き来するのが当たり前の時代ですから、
海外居住者はさらに増えることでしょう。
今後増加が予想されるのが、
いわゆる『出稼ぎ』で
一定期間海外で働く日本人ではないでしょうか。
わたしは日本の非居住者に対する金融取引について、
適用するルールを変える必要があると考えます。
具体的には『事後チェック制』の導入です。
ヒントとなる文章が
以下日経新聞記事に掲載されています。
租税特別措置法は
口座開設から10年たった時点と、
それ以降の5年ごとに
NISA口座の保有者が日本にいるかを確かめることを求める。
上記を援用するなら、
銀行口座、証券口座ともに
開設から10年を経た時点で、
口座保有者が日本の『居住者』か否かを確認し、
もし「非居住者」になっていれば、
その時点で取引の制限を設ける。※追加の金融商品の購入は出来なくする。
しかし、口座そのものは維持できるものとします。
その後「5年ごと」に同様の措置を取る。というルール付けはいかがでしょうか。
つまり、
定期的に
日本の『居住者』か否かの確認は行うわけです。
しかし、
日本の居住者でなくなったからといって
直ちに届け出は求めないよという『方針転換』です。
昨日も触れましたが、
証券会社の対応で解せないのは、
非居住者になる旨を告げず、
帰国後、特に罰則なく取引が出来てしまう
という点です。
わたしは決して、
日本の非居住者になっても、
金融機関に届け出をしなくてよい。という「考え」に賛成しているわけではありません。
が、しかし、
例えば従前通りに積立投資を続け、
帰国後、そのことが発覚しても、
口座の解約を迫られるという事態がないことも、
これは裏を返せば、
日本の非居住者となることで、
証券取引に制限を掛けるということ自体が、
うわべの取り決めに過ぎないことを意味しないでしょうか。
同じ姿勢で資金を積み上げるからこそ、
個人投資家のこの持続行為を、
途中で中断させる権利が果たしてあるのでしょうか?
【Part1】国境を越えて働く日本人が(証券取引において)置き去りにされている?
カテゴリ:金融機関にモノ申す