相続発生時に「どうしてここで口座を開かないといけないの?」と感じる理不尽さについて
2023年8月30日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
昨日の日経新聞電子版です。
投信の基準価格を算出する際、運用会社と信託銀行がそれぞれ計算して照合する作業は非効率だと金融庁は指摘する。
私たちが保有する投資信託の価格を算出するのに
二重計算することがずっと『商慣行』として続いている模様です。
記事内では、
これが運用会社のコスト高要因になっていると指摘しています。
『商慣行』とは、
ややシニカルに定義すれば、
顧客の利益を侵害する可能性についても検証せず、
ただ慣習としてそのまま惰性で続けてしまっている行為を指します。
たとえば相続の際の、
各種金融商品の名義変更においても、
『商慣行』は根強く存在します。
実際に『相続』を経験した方々に話を伺うと、
金融機関ごとで都度都度「手続き」が必要で
仕事量としてもかなりのボリュームになってしまうのだそう。
相続人が確定しており、
また遺産分割協議が整っていても、
預金名義を相続人に移し、
株式や債券や投資信託の名義を相続人に移し、
所有者の名義を相続人に移転登記する必要があります。
窓口バラバラ、
手続きもバラバラ。という状態。
たとえば一例ですが、
〇 みずほ銀行で預金名義を移すと、
財産を引き継いだ人も
なんとなく「みずほ銀行」で口座を開いて
そこに預金が引き継がれたりします。
〇 資産を遺した人が野村證券で口座を持っていたら、
なぜか相続人も「野村證券」に口座を開き、
そこで株式や投資信託を引き継ぐことになります。
これっておかしくないですか?
ここには、
欠落していると思いませんか。
もしもあなたのメインバンクが
住信SBIネット銀行なら、
預金の名義変更に際して、
(たとえば)みずほ銀行が、
あなたの住信SBIネット銀行にお金を振り込んでくれるくらいのサービスは『当然』あってしかるべきでしょう。
有価証券に関してはこうです。
個別株式の名義変更が必要で、もしもあなたの証券口座が楽天証券なら、
楽天証券でも扱っている投資信託なら、同様に『口座移管』をしてくれるサービスがあってもよいと思います。
つまりは『選択の自由』を尊重するという精神が欠如していると感じます。
金融サービスにおける
『選択の自由』とは?
あなたが、
どこの金融機関を自分の資産管理の窓口にするかを選べる自由、であります。
例えば、
銀行預金の名義変更の際に、
相続人に対して、
いちいち確認してくれているのでしょうか?
(もちろん確認している銀行もあるとは思いますが。)
仮にSBI証券で有価証券を相続したとしても、
相続人には、
その資産をどこの証券口座で持つかという『自由』があるはず。
当社(SBI証券)にお預けいただいても結構ですし、
他の証券会社に口座移管をご希望なら、そのように手続きを致します。」
みたいなひと言が欲しいと思います。
人の気持ちに手が届くサービスの起点は、
その人(消費者)の立場に立ってものごとを見ること。
雲行きが怪しければ、傘を差しだすという心遣いです。
実は金融機関にとっては、
相続で資産の名義が移るというのは「一大・ビジネスチャンス」なのです。
先日、マネックス証券のサイトを見ていたら、
マネックスSP信託が行う『WEB相続』というサービスがありました。
基本サービス
銀行や証券会社にある被相続人様名義の金融資産の名義変更や換価の手続きを代行します。
● 対象金融資産の残高証明書の取得
● 対象金融資産等の一覧表の作成
● 対象金融資産等の名義変更・換価/解約の手続き
● 相続人代表者様名義の口座への換価資金等のお振込み
本来、相続が発生すると
複数の窓口で手続きを行う必要がありますが、
どうやら金融資産の相続手続きを
一手に代行してくれるサービスのようです。
金融サービスはまだまだ進化する可能性を秘めているのです。