相談者さまから『グローバルX 米国優先証券ETF』(PFFD)ってどうなのですか?という質問をいただきました
2023年8月20日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
米国上場のETF
『グローバルX 米国優先証券ETF』(PFFD)は
「毎月」分配金が出ます。
しかも分配金利回りが 6.62% もあります。
(6月30日時点)
画像元:グローバルX
でも、相談者さまには
「私ならこの投資商品は買いません」と述べました。
理由はシンプルで、
ETFの中身を精査すると、
このETFの実質的な中身は
債券(社債)という性格ですが、
(が、しかし)
ほとんどの期間では値動きがあまりなく、
「分配金」を潤沢に出してくれます。← 良いこと。
ただ、業種が『金融』に偏ります。(およそ7割)
画像元:グローバルX
しかも、
あえて保有債券(社債)と申し上げますが、
発行元企業の『格付け』が BB+ 以下、
すなわち、
全銘柄の 約35.7% を占めます。
画像元:グローバルX
わたしならスルーします。
今、
米国の10年物国債の利回りが4.25%です(8月19日現在)
そのような状況下で
『グローバルX 米国優先証券ETF』の利回りが 6.62% しかないというのは、ビミョーな数字だと思いませんか?
背中に背負う『リスクの大きさ』に比べて、
『利回りの大きさ』が割に合っていないのです。
そもそも、ですが、
『優先証券』という言葉が分かりにくいです。
当該ETFの中身、
その商品特性としては9割がたは(実質)「債券」です。
それも『優先株式』という名称です。
ちゃんと株式市場にも上場しています。
上図は、
バンク・オブ・アメリカの『優先株式』の一例です。
この『優先株式』とは、
一例ですが、発行元の
「バンク・オブ・アメリカ」(銀行)の立場に立ってみると分かりやすいでしょう。
銀行という会社は
『自己資本比率』を満たし、
資本に余裕があることが重視されます。
『優先株式』を発行することで、
〇 資本の補充(=自己資本比率の底上げ)が可能になります。
〇 多めの配当金を支払いましょう。
ということなのです。
純粋な債券でいうところの、
劣後債や永久劣後債もそうですが、
特に金融業界では、
自己資本の基準を満たすために、
―その特性の実態は「債券」― を、
繰り返しですが、
『グローバルX 米国優先証券ETF』(PFFD)が保有する、231銘柄(6月30日現在)の「優先株式」の値動き自体は、それほど激しくありません。
たまたま、昨年からの
米国の政策金利引き上げが急であったため、
PFFDの価格は下げている状況です。
わたしが当該商品を買わない理由は、
今、231銘柄と述べましたが、
これは「231社」という意味ではありません。
『グローバルX 米国優先証券ETF』該当ページ
「Top Holdings」(8月18日現在)、いわゆる『上位組入れ銘柄』を、上から順に丁寧に読み解いていくと、
WFC 7 1/2 PERP
WFC 5.85 PERP
WFC 4 3/4 PERP
WFC 4.7 PERP
WFC 6 5/8 PERP
幾度も幾度も、WFC が出てきます。
これらは?
すべて「ウェルズ・ファーゴ銀行」の優先株式です。
計算してみますと、
8月18日現在、『グローバルX 米国優先証券ETF』が保有する銘柄の 約9.5% が、ウェルズ・ファーゴ銀行のものでした。
(Net Assetsに対する比率。)
ウェルズ・ファーゴ銀行の評判はあまりよろしくありません。
昨年、
米国の金融当局は、
ウェルズ・ファーゴ銀行が
自動車ローン、住宅ローン、その他金融商品において
不当な手数料を徴収するなどの違法な行為があったとして、
総額37億ドルの罰金を課しています。
これは米消費者金融保護局(CFPB)の民事罰としては過去最大なのだそう。
PFFDは、実態としては債券(社債)ETFなのですが、
ごく稀に暴落します。
その際には、株式としての顔を、突如現すのです。
万が一にも、
ウェルズ・ファーゴ銀行、その他金融会社などに、
経営不振、信用収縮などが起こって、
債務不履行の可能性が具現化すれば、
PFFDの価格は文字通り『暴落』する可能性があります。
PFFDの先輩格に当たる「i シェアーズ Preferred and Income Securities ETF」 (PFF)は、2007年3月に上場しているため、リーマンショック時の値動きを辿ることが出来ます。
画像元:Yahoo Finance
上図でお分かりの通り、
リーマンショックの翌年、2009年の3月1日には、
「i シェアーズ Preferred and Income Securities ETF」(PFF) は、高値から69.98%下落しています。
業種が金融に偏り、
かつ、一社の比率が9.5%もあり、
格付けがBB+以下の
投機的格付けの銘柄が約35.7%を占めます。
どう考えても割に合いません。
最後に、
国内に上場する
『グローバルX米国優先証券 ETF』(2866)もわたしなら購入しません。
中身は同じですから。
カテゴリ:インデックス投資全般