投資信託あれこれ

不人気な信託財産留保額。が(それは)ファンド自体に手渡す『お詫び料』なのです

2023年8月11日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

三菱UFJ国際投信の
『eMAXIS Slim シリーズ』も、

ニッセイアセットマネジメントの
『購入・換金手数料なしシリーズ』も、

直近設定されているインデックスファンドも含め、

 

最近は
ファンドを解約する際の「信託財産留保額」が
『なし』というファンドが大半を占めます。

※あくまでインデックスファンドの場合です。

 

 

 

 

 

これはこれで悪くないと思います。

 

 

来年から始まるNISA制度が分かりやすいですが、

「信託財産留保額なし」のインデックスファンドを、利益が出ている状態で『シンNISA』内で売却すると、

売却した金額と、
戻ってくる金額が「同じ」になるわけです。

 

 

「信託財産留保額」とは、
投資信託を解約する際に徴収される手数料(%)であります。

 

しかしこの手数料は、

投資信託の「購入時手数料」や「運用管理費用」とは、本質的に意味合いが異なります。

 

 

 

 

実は『信託財産留保額』は、
販売会社や運用会社に支払う手数料ではありません。

 

 

この手数料は、
ファンドを保有する仲間たちに支払う
『ごめんなさい料』なのです。

 

 

仮にあなたが今、
「外国株式インデックスファンド」を保有しているとしましょう。

 

 

運用期間は無期限で、
あなたの他に、

5万人くらいのファンド保有者が
長期で資産を増やすため、
この投資信託を持ち続けているとします。

 

 

秋の訪れを感じたとある日。

 

 

 

 

 

あなたは思いがけず
素敵な中古マンションに出会って、

「これは早く買わなきゃ!」と思い、
頭金が足りなかったため、

保有している「外国株式インデックスファンド」を全額売却することにしました。

 

ファンドの運用会社、販売会社は、
日々のファンド解約に応じるのも仕事のひとつです。

 

あなたからの解約要請に従い、

 

(例えばインデックスファンドなら、指数との連動性を崩さないよう調整しながら、)

 

あなたのために『現金』を用意します。

 

 

もちろん、
この一連の事務作業には
それなりのコストがかかります。

 

厳密にいうと、
あなたがファンドを解約することで、

たとえばわたしや吉川さんや大山さんといった
当該ファンドをずっと持ち続けている人たちにも、(間接的に)事務コストの負担を強いることになります。

 

 

 

 

「せっかく外国株式インデックスファンドという長期投資の『船』に乗り合わせたけれど、ワタシは先に船を降りるので・・、
ごめんなさい(お詫び)の気持ちを込めて、
他のファンド保有者に『ペナルティー料』を支払います。」

 

これが、
『信託財産留保額』なのです。

 

 

『信託財産留保額』は、
ファンド本体に支払われるお金 です。

(結果として「信託財産留保額」分だけ、ファンド資産が増えるわけです)

 

 

仮に
あなたが解約しようとする金額ベースの0.1%が「信託財産留保額」だとすると、

あなたがファンドを解約する際には、
ファンドの価格(基準価額)そのものではなく、

 

基準価額×99.9% =『解約価額』となるしくみです。

 

 

 

 

 

ちなみに
「信託財産留保額」には消費税はかかりません。

(運用会社や販売会社に支払うものではなく、
あくまでファンド本体に戻すお金であるため。)

 

 

投資信託の原点は、

 

「あのさ、私たちあんまりお金ないから、
みんなでお金を持ち寄って、一緒に株とか債券とか買わない?」

 

という『共同購入』の精神にあります。

 

数多の共同購入者がいる中で、

信託財産留保額とは、

ファンド保有者の『質』を維持するための、
一種の規律コストなのかもしれません。

 

 

来年からNISA制度が始まると、
新参の投資家が多数参入してきます。

 

万一、ファンドの『解約頻度』が上がることになれば、それはファンドを維持するためのコストが上がるということ。

 

 

 

 

 

 

安易な解約の防止という位置づけでいえば、
もしかすると『信託財産留保額』には(まだ)意味があるのかもしれません。

 

 

たとえば
ファンドの『保有年数』に応じて、
「コスト負担」をスライドさせるというのはいかがでしょう?

 

あくまで一例ですが、

 

   ファンド保有年数     信託財産留保額
   1年未満        5%
   3年未満        2%
   5年未満       0.5%
   7年未満       0.1%
   8年以上        0%

 

のように設定をするわけです。 

 

信託財産留保額というコストは、投資信託が共同購入商品であるという証しなのです。

 

 

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