特定口座のファンドを残しつつ、シンNISAを活用してもOKですか?
2023年7月23日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
この半年くらい、
シンNISAについて継続して考えています。
記事では繰り返し、
シンNISAでファンドを買い直す(=乗り換える)ほうがよいでしょう。
と述べています。
これは理屈的には正しいと思います。
ただし、以下条件に当てはまる場合です。
・手元の預貯金からは投資には回せない
・リタイアまで概ね10~15年以上ある
仮に今、
稲岡さん(仮名)というお客様がいて、上記『条件』に当てはまっているとしましょう。
ここから、
アドバイザーの吐露になりますが、
理屈的には正しくても、
シンNISA関連のことは
『一筋縄ではいかないな』と実感しています。
どういうことでしょうか?
ちょっと稲岡さん(仮名)の胸の内を伺ってみましょう。
稲岡さんはこれまで、
コツコツ900万円になるまで資産を積み上げてきました(10年に渡って)。
シンNISAでは月6万円程度、
積立金額を確保できそうです。
アドバイザーとしての私の見解)
この先の投資期間が長ければ、
「非課税」で運用できる金額ベースを増やすことは理に適っています。
特定口座内のファンドがあるなら、
一時的に『利益』に対して課税されるというデメリットはあるものの、
ファンド資産を非課税口座(シンNISA)に移してしまえば、
大きな残高になった状態で「非課税」での運用ができるため、長い目で見れば、
乗り換えをしないより、
思い切って『乗り換え』をされたほうが、運用の効率性は増します。
したがって、
来年(24年)から数年~5年を掛けて、
特定口座→シンNISA口座の『乗り換え』を実施するのはおススメです・・
でも、この言葉を聞いた稲岡さんは
苦渋の表情を浮かべます。
そのお気持ちには、理解できる部分があります。
わたしは先ほど
(稲岡さんは)
900万円(特定口座)になるまで資産を積み上げてきました。
と、
さらっと流すように述べましたが、
この900万円は、
これまでの資産運用の「すべて」ともいえる成果物でしょう。
毎月毎月『つみたて』という習慣運動を欠かさず、
市場が下がる時も上がる時も、
自身の不穏な感情と折り合いをつけながら、
10年をかけて積み上げてきた結晶なのです。
これを、随時売って
シンNISAに乗り換えるというのは、
『ゼロ』に戻すような感覚に近いのかもしれません。
なるほど理屈的にいえば、
2025年・・360万円
2026年・・180万円 と、
シンNISAに乗り換えさえすれば、
ファンドを保有する場所は違えど、
長期投資するマインドは『同じ』であり、本質が変わるわけではありません。
しかし、
ファンドを継続して「解約する」ことは、
10年間にわたった、保有するファンド内での、個々の銘柄から生じる配当や利息を「再投資」する、その営みも、いったんチャラにしてしまうような、
そんな残念さを(稲岡さんは)予期されているのかもしれません。
ご自身の投資のリズム(一貫性)が崩れてしまうことなのでしょう。
理屈としては「B」の選択が正しいと分かっていても、
「A」というやり方に落ち着きを覚える。
これは投資に限らずあると思います。
ベストなやり方に固執し過ぎないこと。
ベストなやり方にこだわり過ぎ、
それが自分にフィットせずに
(投資を)途中で断念してしまうより、
ベストではないが、ベターなやり方で
投資を長く続けてしまったほうが『実入り』は大きくなります。
したがって、
稲岡さん(仮名)が
特定口座内でファンドを保有し続けて、
しかし、
毎月の積立(6万円)はシンNISA口座にて行う。← ココは大事。
このような『折衷案』を採用しても、わたしは全然OKだと思います。
ただし、です。
ここにも「前提条件」が!
それは、
シンNISAで積み立てるファンドが
もしも稲岡さんが
特定口座で保有するファンドが、
・手数料が(今となっては)高いと感じている
・今の自分ならホントは持っていたくはないもの
である場合、
やっぱり(やっぱり)、
長~い目で見て、
稲岡さんが【持つべきファンド、持ちたいファンド】に
これを機に、
移し替えてしまったほうがよいと思うのです。
その場合は、
特定口座→シンNISAの『乗り換え』を貫徹すること。
非日常で
少しまとまった作業にはなりますが、
3日も5日も拘束される大仕事ではありません。
きっと20年後の稲岡さんが、
今の稲岡さんに対して
「あのとき、エイヤーと引っ越しをしてくれていたおかげ。ありがとう。」と感謝してくれるはずです。
カテゴリ:NISA活用法