その他・雑記

巨大テック企業とアルゴリズムと金融市場の未来

2023年7月8日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

次の「スーパーパワー」は
米国でも中国でもインドでもなく、

アルゴリズムそのものになると、
わたしは真面目に思っています。

 

1日の大半を
ネット空間で過ごすようになる私たちは
アルゴリズムの絶妙な制御によって、

 

それぞれが
それぞれに
『見たい現実』を見るようになってしまうのでは・・。

 

 

たとえば、iPhoneです。

 

ここで
暮らしに必要なアプリはほぼ揃っています。

あなた仕様に
臨機応変に、
ニッチな要望に応えてくれる、

(おまけにあなた仕様にアップデートしてくれる)
そのiPhoneを今さら手放せますか?

 

 

 

 

またアップルウォッチをはめている人は、
あなた自身の生体情報も預けていますから、

 

 

 

実はもう、

心身ともに
アルゴリズムによる
テーラーメイドの『サービスの海』に浸っているわけです。

 

 

わたしは今年55歳になります。

ある程度の期間生きていますと、
自分の内側も、そして自分の外側(世間)でも、もう「悩み」の連続です。

 

複雑に絡み合った糸を手繰りながら、
エイヤー!と自身で都度「決断」を下すよりも、

 

 

基礎情報(データ)を提供し、
それらを的確に分析してもらって、
AIにさまざまな「判断」を
委ねてしまったほうが心地よいと感じる私たちが、すでに、
居るのではないでしょうか?

 

(例えばマッチングアプリを利用すれば、「誰と付き合うべきか」という判断も、アルゴリズムに委ねることになります。)

 

 

先ほどiPhoneを例に挙げましたが、
アップル社の時価総額はすでに3兆ドル

日本円にして430兆円の大台に達しています。

 

 

430兆円台!?

 

ちょっと想像が付きにくい数字です。

 

日本の国家予算(2023年度)が約114兆円ですから、
その4年分の価値が
(すでに)一企業に存在するわけです。

 

 

 

 

 

デジタル空間があり、
デバイスがあり、
そしてあなた仕様に制御されたアルゴリズムが整っていれば、

あなたは『心地よい空間』に
身を置き続けることが可能になります。

 

 

格差(差異)が固定化されて、

それぞれが
それぞれに
『見たい現実』を見るようになる世の中は、

 

ちょっと怠惰な
「平和な風景」そのものです。

 

 

それぞれが見る景色の中で、

自国の施策がどう変わるとか、
税制とか年金の支給方式を改革するとかしないとか、

いろいろ気にはなるけれど、

 

 

こっちのほうが大事!= わたし仕様に制御されている『アルゴリズム』のほうが大事。
という仕様の『ネット民』に、
わたしも、あなたもなってしまうのではないでしょうか?

 

 

 

 

 

アップル、グーグル、アマゾン、メタなどの巨大テック企業は、

それぞれのユーザーにとって
心地よい空間を醸成すべく
そのサービスをどんどん進化させています。

 

 

その概要は、すでに国家の枠を越えています。

 

 

横断的に、世界中の人々の「触角」を握っているのです。

 

 

もちろん、
国家 対 巨大テック企業 という構図はあります。

今後、EUやアメリカなどの司法担当省が
大手テック企業に対して
反トラスト法で『提訴』を繰り返すことが予想されますが、

 

 

 

 

 

そんなことをしても、
逆にテック企業のユーザーから、

「そんなことしたら、私たちが不便になるじゃない!」と反発を受けかねません。

 

 

むかし読んだ小説に
村上龍氏の『愛と幻想のファシズム』があるのですが、

 

そこでは多国籍企業グループ「ザ・セブン」が
国家の枠を超え、世界経済を支配するに至ります。

 

 

なんだかそれに近づいているような気がします。

 

 

 

さらに、いよいよ人間の脳内に
直接チップが埋め込まれることになれば、
あなたの脳は「外部化」されることになります。

 

それは「データ」として再構築され、
人間の感情や意思や思考のメカニズムが、
解析されることになるのです。

 

 

 

 

―映画『マトリックス』の世界です。―

 

 

 

 

これが↑、

本当のステーキかどうかは、もはや重要ではなくなります。

 

 

ステーキの味覚は、
脳への電気信号によってアルゴリズムが生成してくれるわけですから。

 

 

上記ちょっと怖い話になりましたが、
悪いことばかりではありません。

 

 

あなたが投資家であるなら、
あなた特有の『感情リスク』を
アルゴリズムが和らげてくれるはずです。

 

仮にあなたが少しせっかちな性格で、
「はやる気持ち」をなかなか抑えることが出来ず、

ついつい「オレいけるかも!」と思って、
感情のまま金融商品を買ってしまうタイプだとしましょう。

 

 

あなたの脳が
外部のネットワークと直接繋がれば、
感情の発露のその手前でAIがそれを察知し、
金融取引のあらゆる場面で「アラート」を発してくれます。

 

 

・・慌てる必要はありません。

毎日の取引機会は保証されています。
これが最終列車ではありません。

いったん資産管理画面を閉じて、
徒歩10分のところにある
石神井公園に行かれて深呼吸することをお勧めします。・・

 

 

こんなことまで言ってくれれば、

もう、すべての判断をAIに任せようという
「個人投資家」が増えてくるのではないでしょうか。

 

他者が
(自分の代わりに)意思決定してくれる、その心地よい浮雲の上に、あなたもわたしも乗ることになるのでしょうか。

 

 

 

 

ところで、
マーケットの動きを支えるのは、
個々の投資家の売買(取引)です。

 

その売買の中身は、
多様な出自を持つ『投資家自身の判断』によって為されてきました。

 

その取引の判断が
全面的にAIに置き換わるとき、
「金融市場」はどう機能するのでしょうか?

 

 

見てみたい気持ち半分、見たくはない気持ち半分の、今日この頃です。

 

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