インデックス投資全般, 投資信託あれこれ

信託報酬が『ゼロ』だからといってファンドが売れるわけではない不思議

2023年6月11日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

突然ですが、
『野村スリーゼロ先進国株式投信』というファンド、あなたはご存じですか?
(つみたてNISA対象ファンドでもあります)

 

 

 

 

2020年に、
日本で初の
信託報酬(運用管理費用)『ゼロ』ファンドとして誕生しました。

 

※正確にいえば、
運用管理費用『ゼロ』は期間限定であり、
2020年3月16日から2030年12月31日までに限られます。

それ以降は、
運用管理費用が年0.11%かかります。

 

ファンド名にある『スリーゼロ』の意味は、

 

・販売手数料(ファンド購入時)
・運用管理費用(ファンド保有時)
・信託財産留保額(ファンド売却時)

 

上記3種の手数料を
すべて『ゼロ』にします、ということ。

 

 

しかし、です。

運用レポートを見てみますと、

5月31日現在、
当該ファンドの純資産額は95.4億円です。

 

 

目立ったほど増えてはいない・・

 

 

理由はいくつか挙げられるでしょう。

まず、販売会社が
野村證券とLINE証券のみに限定されていること。

 

また、際立った販促活動が
行われている様子もありません。

たとえば、
野村證券の店頭で、
大型の販促ポスターを作って、

「このファンドを推しています!」なんてアピールは(当然)していません。

 

LINE証券では
『運用手数料が安い』カテゴリーで検索すると、すぐに出てきたりはしますが・・。

 

 

『野村スリーゼロ先進国株式投信』を作った理由は、

これ(当ファンド)をきっかけに、
自社の他サービスも利用してもらおうという、

「呼び水」的な役割を期待しての
設定だったのではないでしょうか。

 

 

スーパーマーケットでいえば、
目立つところに陳列してある、
特売価格の「ティッシュペーパー」に当てはまるイメージでしょうか。

 

 

 

 

あるいはもっと象徴的に、
「初の信託報酬『ゼロ』のファンドを作ったのは我が社である!」という沿革を作りたかったのでしょうか?

 

よく、
投資信託という商品では
コスト(手数料)が大事という言い方をします。

 

もちろん、これは事実です。

 

 

支払う継続コストが0.1%でも少なくなれば、
それは取りも直さず、
あなたの『取り分』(実績リターン)がそれだけ増すことを意味します。

 

 

期間限定付とはいえ、
信託報酬がゼロなのに、

『野村スリーゼロ先進国株式投信』はそれほど注目を集めていません。

 

 

もしかすると、信託報酬(運用管理費用)が無料(タダ)のファンドに、

私たち消費者は
何かしら、
胡散臭い部分を感じ取っている・・、

 

すなわち、
タダって、どこかおかしい。

という、
『健全な懐疑心』が働いているからではないでしょうか。

 

 

 

 

来年から始まるシンNISA制度に向け、
今、インデックスファンドの
『超低コスト化競争』は熾烈を極めています。

 

年0.1%台という手数料率を切り、

もしかすると、
複数のファンドで

 

年0.07%とか
年0.06%とか、

はたまた年0.05%という「数字」が踊るようになる可能性があります。

 

が、

たとえ年0.05%のファンドが登場しても、

かつて年0.5%の手数料率から、

年0.3%や年0.1%に
手数料が下がった時のような『熱狂』はもはや起こらないと予想します。

 

なぜなら、
もう十分にコスト比率は低くなっているためです。

 

 

 

 

それに、

 

・年0.3%から年0.15%に率が下がるのと、
・年0.1%から年0.05%に率が下がるのとでは、
手数料が『半減する』点では同じですが、
支払うコストの減額ベース(金額の大きさ)では、後者のインパクトはもはや小さくなっています。

 

 

これ以上、超低コスト競争が苛烈に進んで、
収益性が合わなくなり、
複数のインデックスファンドが共倒れになってしまうより、

 

インデックスファンドそのものの『存続性』をより重視して!と、感じ始めている個人投資家は案外多いのではないでしょうか。

 

【追伸】

米国では2018年にフィデリティが
こちらは恒久的に継続コスト『ゼロ』の、


フィデリティ ZERO トータルマーケット・インデックスファンド」(FZROX)の運用を開始しています。

 

こちらは純資産残高が140億ドルを超え、人気を博しているようです(これもまた不思議・・)

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