オルカンもスリムS&P500も、ここからが正念場!(インベスターリターンが下がり始めている?)
2023年5月25日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
2022年の6月に以下のような記事を書きました。
あらゆる投資信託にとって重要なことは、
毎月毎月『資金の流入』が続くことです。
オルカンも、スリムS&P500も、
この点すばらしいです。
実際、両ファンドとも
ファンド保有者が主に「積立投資」によって、
継続的にファンドに資金を入れていることが分かります。
純資金の流入が続けば、
運用の効率性を保ちやすいわけです。
おまけに「米国株式」も
「全世界株式」も、
3月に米地銀が相次いで破綻した頃に比べると、
パフォーマンスも回復してきています。
ファンド保有者の『定着度』です。
せっかく、
オルカンやスリムS&P500を保有しても、
例えば10人のうち複数人が
・途中でファンドを売ったりしてしまう と、
ファンド保有者の『定着率』は下がってしまいます。
(投資家全体のリターン低下につながる可能性もあります)
さらに、
ファンドの価格が安くなると売っちゃうような人が増えると、
ファンドそのもののリターン(トータルリターン)に比べて、投資家自身のリターン(インベスターリターン)が劣ることになってしまいます。
仮に、
ファンド保有者の『定着度』が圧倒的に高ければ、
―たとえば、
ほぼすべてのファンド保有者が
そのファンドを持ち続けていれば、―
ファンドそのもののリターン(トータルリターン)と、投資家自身のリターン(インベスターリターン)が『同じ』になることもあり得ます。
いや、
もっと正確にいえば、
―オルカンやスリムS&P500の、ほとんど全ての保有者が、オルカンやスリムS&P500のファンドを持ち続け、―
―かつ、つみたて投資を実践していれば、―
ファンド価格が大きく下がった時には
(同じ積立金額でも)より多くの『口数』を積み上げることになるため、
ここから『図表』をご覧いただきましょう。
まず、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)です。
昨年 2022年5月31日時点の「数字」となります。
画像元:モーニングスター
右端の『設定来』で見た場合、
投資家のリターン(インベスターリターン)のほうが
投資信託そのもののリターン(トータルリターン)より高くなっています。
素晴らしいです・・。
ところが11ヶ月後、
今年4月30日現在では
以下のように変化していました。
eMAXIS Slim米国株式(S&P500)
画像元:ウエルスアドバイザー
ファンドそのもののリターン(トータルリターン)に比べ、投資家自身のリターン(インベスターリターン)が少し劣っています。
『設定来』のところでは、
3.24%程度、
インベスターリターンが
トータルリターンに劣後しています。
eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー) 、昨年22年5月31日時点では・・?
画像元:モーニングスター
『設定来』のところでは、
インベスターリターンが
ファンドそのもののリターン(トータルリターン)に比べ、1.22%劣後していました。
それが今年4月30日現在では・・?
eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)
画像元:ウエルスアドバイザー
インベスターリターンが
トータルリターンに比べて劣後しています。
もしかすると、
『何かが』変わり始めているのかもしれません。
ただ、誤解がないように・・。
オルカンもスリムS&P500も
ともに『純資産額』が1兆円を超え、
(特にスリムS&P500は、オルカンと比較しても、ファンド保有者の『定着度』がより高いのです)
両ファンドの保有者とも、
投資家としての『耐力』を有しているのです。
これ自体は素晴らしいことなのですが、
何しろ日本を代表する「大きな投資信託」となったため、新たにオルカンや、スリムS&P500を購入する人の中には、
これまでより、
『耐力』が劣る投資家も少なからずいるだろうとわたしは推測します。
月並みな言い方をすれば?
オルカンも、
スリムS&P500も、
ここからが『正念場』なのでしょう。
投資信託という金融商品では、
ファンドという大きな「パッケージ袋」の中で、一種独特の「雰囲気」が醸し出されます。
それは、そのファンドを保有するファンド保有者たちの、総体としての『キャラ』といってもいいでしょう。
たとえば、です。
この先、「米国株式」「全世界株式」が急落した場合、
これまでオルカンや、スリムS&P500の保有者の間で明確に存在してきた『キャラ』、
・なにげに積立投資を止めたり、
・一部ファンド資産を売ったりせずに、
・飄々と構えながら、ファンドを保有し続ける、
・腰を落として、デンと居座っておこうぜ。
というような、
ファンド保有者の明確な【キャラ】を、
果たして維持していけるのか。
より具体的には、
今後も増えていくであろう、新たなファンド購入者に対して、自分たちの【キャラ】を、無言の圧として明確に伝えていけるかが問われます。
がんばれ、オルカン、スリムS&P500! 先は長いぞ!!
カテゴリ:インデックス投資全般, 投資信託あれこれ