投資の発想法

20年前、香港のオンライン証券会社を訪ねた時に感じたこと

2023年5月21日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。 

今となっては信じられないことですが、

2003年当時、
日本の居住者は
海外に上場するETFに投資する術(すべ)を持ちませんでした。

 

また、国内で流通するインデックスファンドもまだまだコストが高く、その種類も限定されていました。

 

わたしは2003年に、
香港に上場する中国株式ETFを買うために
香港のBOOM証券を訪ねました。

(今ではBOOM証券は
Monex Boom Securitiesと改称し、
あのマネックスグループの一員となっています)

 

BOOM証券は当時、
香港の住宅街にぽつんとある地味な金融機関でした。

一応ネット証券らしくパソコンが3台並んでいましたが、
オフィスは整形外科の「待合室」のようでした。

 

お金の振込み作業を終えると、
陳さんという人が、
「ログインIDとパスワードの発行まで30分ほどお待ちください」とわたしに告げました。

 

わたしは他にやることがないので
文庫本を読んでいたのですが、

しばらくするとBOOM証券のオフィスに
ひとりの女性が入ってきました。

 

どうやら彼女も口座開設をするようです。
先ほどの陳さんと広東語で何やら話し込んでいます。

(そのうち)わたしとその女性は手持ち無沙汰になり、
なんとなく世間話を始めました。

 

「あなたはどこから来たの?」
「日本からです」

「えっ、わざわざここで口座を開くために?」
「まあそうです」

 

「あなた香港の方ですよね?」

「ええ、でもオーストラリアに住んでもう2年になるわ。
里帰りしたついでに、ここで口座を開こうと思って・・」

 

「どうしてBOOM証券なのですか?」

「だって オーストラリアの株式にも投資できるじゃない。
複数の通貨でお金も持てるし・・」

彼女はオーストラリア人と結婚していて、
もうすぐ自分の弟もオーストラリアに来る予定だと言っていました。

 

 

 

 

 

またしばらくすると
BOOM証券のオフィスに男性が入ってきました。
その風貌からすぐに日本人と分かります。

わたしは(今度は)彼と世間話を始めました。

 

「日本の方ですよね?」

「ええ。でもシンガポールに住んでいるんですよ」

彼は半導体関連の会社に勤めており、
シンガポール滞在はもう7年にもなるのだそう。

 

「一度日本のネット証券に口座を開こうとしたんですが、日本に住所がないとダメなんですね。

で、よく考えてみたら、
BOOM証券なら日本の株式にも投資できるし、シンガポールもOKだし。じゃあ、香港に来たついでに口座を開こうかと思って・・」

 


わたしは今でも、二人に会ったあの日のことを時々思い出します。

お世辞にも広いとはいえない証券会社のオフィスで、違う場所から来た3人がたまたま居合わせた偶然・・。

 

最初に出会った香港人の女性も、
シンガポールに住んでいる日本人も、
そしてわたしも

『ふつうのビジネスパーソン』です。

 

歴史的時間軸で見れば、

ご飯を食べるのが精一杯の生活から、
10年後の自分を何気に想像できる『日常』を手に入れて、

少しお金に「余裕」が出来てきたわけです。

 

 

そんな、生まれてはじめて証券口座を開き、「投資を始めるんだ!」というような人は、2023年現在、世界中でいったい何人くらいいるのでしょうか?

 

 

おそらく、何千万人もの人が、東南アジアでも、東欧でも、アフリカでも中南米でも、投資家の卵としてデビューしているはずです。

 

歴史上はじめて、「ふつうの人々」が
まっとうな資産運用に取り組める『インフラ』が整いつつあります。

 

これって素晴らしいことだと思いませんか?

 

投資はもはや、一部の富裕者のためのものではありません。

人生の間口を広めたい全ての人のために存在するのです。

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