要介護 ⇒ 認知症を発症してしまうと「お金」が動かせなくなります
2023年5月17日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
若くて健康なうちは、
「生」の次には「死」が来ると思っています。
ところが実際は?
『生 老 病 死』という順でやって来ます。
死は、すぐには来ません。
人生が長くなると
現実問題として、
(死に至るまでに)
病気になったり、
介護が必要になったり、
認知症になったりする可能性が増します。
「老い」や「病(やまい)」の期間がより長くなって、そのぶん「死」がうしろ倒しになる・・、
『生 老 病 死』。
それが現実なのです。
「老い」が進み、
あるいは「病」が進んで、
要介護の状態になることもあります。
わたしの母はすでに他界していますが、
病気になり介護状態になっても、
母と同居していた妹に全て任せきりでした。
介護する者の心労の大きさについては、
直接関与していなかったわたしになど、
分かるはずもありません。
先日「おけいどん」さんの以下記事を拝見して、それを再認識した次第です。
『介護うつのリスクを実感 自覚なく襲いかかる介護負担』
介護はひとつひとつは数分から数十分で終わります。
だから、まだまだできる、大丈夫…と思いがちです。
しかし、実は大きく負担が掛かっています。
何もしていないようで、
音に敏感になり、いつも気に掛けている…
この「緊張感の持続」が意外と消耗するのです。
まさに、
小さな疲労困憊が積み重なる状態でしょう。
しかも介護は、
介護の期間が長くなると
認知症に至る場合もあります。
(もちろん介護状態でなくても認知症は発症します)
ここからは「認知症」にフォーカスしますが、
仮に、
父親や母親が認知症になり、
「それがいつまで続くか分からない」状態になると、
資産管理上、厄介なことが起こります。
→「金融取引・不動産取引に制限がかかる」のです。
具体的に考えてみましょう。
多くの高齢者にとって、
主な資産は「自宅(不動産)」と「預貯金」です。
が、ご本人が認知症になると、
まず預金を引き出すことが出来ません。
当然、お金を借りることも出来ません。
お金を振り込むことも出来ません(暦年贈与などもできません)。
仮に要介護・認知症の状態で、
ご本人の症状が段々と進んでいき、
たとえば親族だけでは手に負えなくなって、「介護付き老人ホーム」に入所させるとなったとします。
そこそこサービスが良いホームに入所させようとすると、
入居一時金が1000~2000万円ほどかかることもあります。
親が認知症であると、
本人の口座から引き出せないわけです。
たとえ資産があっても、
それを動かせない『凍結』状態。
※ もちろん、株式や投資信託といった有価証券も同様です。
たいへん不謹慎な言い方をお許しください。
―生きているのに、
死んだように
お金が『動かせない』のです。―
やむなく親族のみなさんが
費用を立て替えることになります。
この状況になると、
親にはそこそこよい施設に入ってもらいたいのに、仮に親族に経済的な余裕がなければ、
言葉は悪いですが、
ランクがより下の施設に入所してもらうより仕方がありません。
(加えて、介護付老人ホームでは
多くの月額利用料がかかってきます。)
困難な状況を鑑み、
ホームの入所費用、その他けいぞく的にかかる費用を『実家の売却』で賄おうとしても、
ご本人(不動産の所有者)が認知症になれば、
不動産を売ることも、
貸すことも、
不動産を担保にお金を借りることも出来ません。
これでは八方塞がりです。
万一認知症を発症すれば、
資産管理上は、
(生きているのに、)死んだ状態と同じになってしまうのです。
上記のことを、
わたしは税理士の牧口晴一さんが書かれた書籍、
『日本一シンプルな相続対策 – 認知症になる前にやっておくべきカンタン手続き』で学びました。
同書の中で牧口さんは、
本人が健康なうちに『家族信託』を設定することを勧めておられます。
健康なうちに、
ご本人(親)が委託者、そして受益者となって、
たとえば娘さん、あるいは息子さんを「受託者」として、
画像元:石原一成 司法書士法人グループ
例えば当面介護関連で必要な金額分(預貯金)と、
自宅(土地・建物)の名義を
「受託者」に移しておくわけです。
万一に備えて保険をかけておくということ。
こうしておけば、
万一ご本人が認知症になっても、
預貯金を動かせますし、
いざとなれば、自宅の売却も出来ます。
つまり、
実質上、ご本人が元気なうちから
『相続』を始動させるという考え方なのです。
所有者は受託者(例:お子さん)に移りますが、
預金や不動産の利益を受けるのはご本人(委託者)なので安心です。
牧口さんの本はとても勉強になりました。
「家族信託」のいろは、具体的な手続きについても学べます。
最後に・・。
資産のバトンタッチ = 相続を考える際、
準備は『生 死』で捉えるのではなく、
『生 老 病 死』を意識しながら、
老・病の段階で準備をしておくことが重要です。
カテゴリ:100年ライフプラン