経済よもやま話

ビッグな二人の対談:ポール・ボルカー氏とレイ・ダリオ氏(インフレ退治には「強権」が必要?)

2023年3月9日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

あなたは1979年に第12代FRB議長に就任した「ポール・ボルカー氏」をご存じですか?

 

実は以下YouTube動画で、

元FRB議長のポール・ボルカー氏と、

ヘッジファンド
ブリッジウォーター・アソシエイツの創業者
レイ・ダリオ氏の『対談』がご覧いただけます。

 

 

 

上記動画の中でボルガ―氏は、
1970年代のFRBの政策について、次のように述べています。

 

当時のFRBは
失業が蔓延するから
政策金利を引き上げ過ぎるな。というのが暗黙の了解だった。

 

 

しかしその結果10年以上インフレを制御できない状況に陥った。

 

 

 

 

 

氏が言う「10年以上」とは?

 

米国で1960年代末から始まる
「Great Inflation」(グレート・インフレーション)の時代を指します。

 

 

 

上図は米国のCPI(消費者物価指数)の推移です。

 

 

よく見ると、
高インフレに3度の大きな「波」があることが分かります。

 

 

ボルカー氏がFRB議長が就任した1979年には、
CPIは+12%近くになっていました。

 

1970年代の高インフレには
さまざまな要因が作用しています。

 

外部要因としては
二度にわたる石油ショックの影響があります。

またベトナム戦争の戦費がかさみ、米国の財政赤字が膨らみます。ドルへの信認が揺らぎ、ニクソンショックで米ドルは切り下げられました。

 

 

「ドル安」「資源高」で
インフレが高進する様は比較的分かりやすいはずです。

 

翻って今日のUSドルは「ドル高」であり、強くなり過ぎのきらいさえあります。

 

 

 

 

では、
3度の「波」の存在は何を意味するのでしょう?

 

インフレという名の高スピードを制御するために、FRBは何度もブレーキを踏みますが(=政策金利の引き上げ)、

ブレーキが踏み足りずに、
またインフレがぶり返す『構図』です。

 

インフレには粘着性があるため、
目先のデータを見て「もう大丈夫だろう」と油断をすると、またちゃぶ台をひっくり返したように物価は勢いづいてしまいます。

 

(FRBのようなエリート金融政策集団でさえ、
物価上昇を上手くコントロールするのは至難の業。。)

 

 

もう一度上記の「動画」から引きます。

 

私がFRB議長になった時、
違うアプローチで臨んだのだ。

 

もはや失業率が上がるのを心配するのは止める。なんとしても手強いインフレを抑え込まなければならない。

 

今日のFRB政策では、度重なる利上げにもかかわらず、「失業率」を上げることにさえ(まだ)成功していません。

 

 

さまざまな批判や露骨な障害を乗り越え、金融引き締めを貫徹したボルガ―氏はのちに「インフレファイター」と称されます。

 

 

1970年代のGreat Inflationのピーク時、FF金利(政策金利)は20%を超え、失業率も10%を超えました。

 

 

大恐慌以来の最悪の経済時期を不退転の決意で乗り越え、

 

 

 

 

1982年末にはようやくリセッションが終わる気配が見えてきた

 

(米国の高インフレは1982年の11月頃までくすぶっていたらしい・・)

 

そして1983年、ようやく物価上昇は3%に落ち着きます。

 

本当に長い戦いだったのです。

 

 

1970年代と今日では、
米国経済のファンダメンタルズは大きく異なりますが、
それでも『物価上昇』を抑え込むことは一筋縄ではいかないのです。

 

 

 

 

歴史は、
まったく同じ繰り返しではありません。

しかし、たびたび「韻」を踏むといいます。

今後も米国FRBの政策と米国金利の状況から目が離せません。

 

 

3月8日のウォール・ストリート・ジャーナルより。
いよいよ「高い金利」に慣れるべき時
 金利は一段の高止まりを見せる可能性

 

 

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