わたしのFP修行

その人はアドバイザーではなく、保険のエージェントです(変額年金を勧められ困っている63歳アメリカ人のセミリタイリー)

2023年1月18日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

先日MarketWatchのコラム記事を読んでいて、
「あれ? 米国でも日本と同じなんだ。」と思いました。

 

‘My adviser insists this is a good, low-risk investment.’
I’m semi-retired at 63 with $2 million saved.
My financial adviser wants me to sink half my money in an annuity. Should I do it?

 

200万ドルの資産を持つ、
セミリタイアされた63歳の女性がアドバイザーから、

『資産の半分を年金(具体的には変額年金)に移すべき』と提案されている記事です。

詳細はこちら(英語)

 

 

 

 

タイトルにもありますが、

そのアドバイザーは、


「これ(変額年金)はリスクが低くて良い投資の道具ですよ」と主張しています。

 

あなたはどう思われますか?

 

 

『変額年金は私にとって良い選択でしょうか?』という問いに対して、ファイナンシャルプランナーのクリス・チェンがこう述べます。

 

 

彼は自身をfiduciary(受託者)と称しているものの、
あなたの最善の利益のために働いていない可能性があります。

 

年金保険のような商品は手数料で販売されています。顧客の受託者であると主張して、保険商品を販売した場合、その背後には利益相反の可能性があります。

 

わたしもそう思います。

 

そもそも、
『変額年金保険』って
どんな類の金融商品なのでしょうか?

 

ここからちょっと飛躍しますねw

 

 

あなたは都内で「美味しい!」と評判の煮干しラーメン店に行って、そこのラーメンを食しました。

 

噂にたがわず
たしかにラーメンは美味しいのですが、

 

 

 

 

その店ではなぜか、

ラーメンにプラスして
「パフェ」と「豆大福」をセットで頼まないといけません。

 

合計金額は1980円に・・・。

 

 

これが『変額年金保険』です。

 

 

つまり・・、

ひとつの商品の中に、

 

・資産を「増やす」というニーズと、
・私的年金を長期に渡って「受け取る」というニーズと、
・万一に備えて死亡保障を「得る」というニーズ

 

無理やり詰め込んでいるのです。

 

 

 


そのため『継続コスト』が割高になってしまいます。

 

典型的な『変額年金』は、

保険関連費用として年1~1.5%を請求し、
運用では「投資信託」の運用管理費用として年0.5~1%程度を請求します(あくまで日本のケースです)

足し算してみてください。 

 

米国の例をリサーチしてみますと、

 

〇 保険関連費用
アカウント残高(評価額)の1.25%程度。
(死亡保険金の保証に伴うリスクを保険会社が吸収するための費用)

 

 

〇 管理費
アカウント残高(評価額)の約0.15%。
(年金契約の確立と維持、支払いの処理、記録の管理、必要な通知の送信などの事務費用)

 

 

 

〇 投資信託関連手数料
アカウント残高(評価額)の0.5%程度から3.0%程度の範囲内。
選択したファンドによって実際のコストは大きく異なる(アクティブ型の、中小型グローバル株式ファンドなどを選べば手数料は非常に割高に)

 

というような「具体例」も散見されます。

足し算してみてください。 

 

 

 

 

 

・・高くないですか?

 

 

そもそも、なのですが、

もしもあなたに

〇 資産を増やす「ニーズ」
〇 万一に備えて死亡保障を得る「ニーズ」が存在するなら、

 

それぞれの『ニーズ』に対して
過不足なく応えてくれる『道具』を、それぞれ「別個」に(低コストで)用意すればよい話です。

 

 

すなわち、

 

〇 資産を増やすというニーズ → 投資信託
〇 万一に備えて死亡保障を得るニーズ → 収入保障保険、定期保険
<ちなみに63歳、200万ドルを保有するセミリタイリーに死亡保障は要りませんが・・>

 

 

 

 

また、
〇 私的年金を長期に渡って「受け取る」というニーズは、

 

保有する投資信託を、
「ファンド定期売却サービス」等を利用して、規則的に解約して、随時受け取れば事は足ります。

 

 

最後に、
冒頭の記事内ではもうひとつ、
ファイナンシャルプランナーによる指摘がありました。

 

真のフィデューシャリーとは、
商品の手数料ではなく、顧客からの報酬によって賄われるため、

 

アドバイザーがフィデューシャリー(いわゆる受託者責任)と名乗りながら、手数料を支払う投資を推奨している場合は、赤信号となるはずです。

 

 

冒頭の自称アドバイザーはアドバイザーではなく、保険のエージェントなのです。

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