わたしが不動産投資をしない理由 パート2
2022年12月29日
こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。
前回、不動産投資成功の秘訣として、
1.「真に立地が良い」
×
2.「安く購入する」
を挙げました。
「でもカンさん。
真に立地が良ければ、粗利回りは下がる(=ある程度高く買わざるを得ない)のは当然でしょ。」
それはその通りでしょう。
2.安く購入する。では、
ある程度の『妥協』は必要かもしれません。
しかし、2のみならず、
実際には、
1.真に立地が良い。でも、
妥協している人のほうが多いのではないでしょうか。
ご承知の通り、
収益不動産の供給は、
「不規則」であり、
かつ「限り」があるため、
投資家は往々にして妥協しやすくなります。
『個別株式』との比較が
分かりやすいかもしれません。
株式は、
会社の所有権の『持ち分』の売買が可能であるため、
例えば、
ワコールという会社を
「ひとまとめで」買うか、売るか、という二択にはなりません。
ワコールの会社を
ぜひとも購入したければ、
100株分だけ買うことが可能です。
(同時に100株分だけ売るということも可能です。)
それと比して、
例えば東京都昭島市の一棟アパートは、
基本的に
『まるごとの所有権』(土地・建物)を、
持つか、売るか、買うかの選択肢しかありません。
(一棟アパートを「区分所有権形式」で登記し直せば話は別ですが。)
不動産という資産は、所有権の形態がきわめて原始的であるため、売りに出される「物件量」が限られてしまうのです。
(その反省をもとに、不動産を有価証券化したのがREITです。)
また、不動産に限らず、
株、投資信託、金(ゴールド)、暗号資産、THE NORTH FACEのダウンジャケットに至るまで、
自分が「買おう!」と思ったときに人は買いたいもの。
その結果、
「真に立地が良い」で妥協し、
×
「安く購入する」で妥協する・・。
ということが往々にして起こります。
今、そこに、そこそこの「物件」があるんだから、これでもいいんではない?
「真に立地が良く」
×
「安く購入する」を追求し切るよりも、早く購入したいという『誘惑』が勝ってしまうわけです。
上記1、2の「妥協の大きさ」に比例して、
不動産投資はうまく行かなくなる可能性が増します。
かく言うわたしですが、
実は完璧主義でして、
仮に1.「真に立地が良い」が満たされたとしても、
一投資家として
2.安く購入する。で、なかなか妥協が出来ません。
(不動産は一括投資しか選択肢がないため!)
不動産市況が安くなる時まで、
我慢強く待てるか?と聞かれても、その自信はありません。
ですので、
わたしは不動産投資を行っていないわけです。
(自分にもしも「資力」と「借入れ力」があったならば、不動産を買いたいと思った時期が二度あります。一度目は2001年と02年。二度目は2008年と09年でした。)
今の話と関連しますが、
じゃあ私はどうして『投資信託』を買っているのでしょうか?
答えはカンタンです。
「積立投資」が出来るからです。
投資の時期を5年も10年にも20年にも分散できれば、
安値で買っている? という、
良い意味で自分を麻痺させることが出来ます。
(また、積立ですから、
投資対象が安くなった時も、確実に『購入』していけるわけです)
寒中一服。
ちょっと一息入れて『視点』を変えてみませんか?
有価証券(株式など)の歴史はたかだか400年ほどです。
それに対して「不動産」という概念は、
農耕文化の創生時から存在します。
耕作のための「土地」(不動産)には、おのずと価値が生じたためです。
今日でも、
世界の200近い国すべてで、
多種多様な「不動産」が存在します。
そして収益性を有する不動産として、
『売り』に出されているモノは、
日々、何百万件と存在するはずなのです。
これほど普遍的な『投資対象』もないのに、
ほとんどの場合、
「日本の」収益不動産を購入しています。
それはなぜ・・?
不動産の取引は
『個別特殊性』が強いためです。
高所のところから述べれば、
各国で不動産をめぐる法律、税制などの法令が大きく異なるため、
不動産の物件調査、売買、その管理等において煩雑さ、難解さが伴うため、
実際的には、
ほとんどの日本の不動産投資家は、
投資対象が「日本国」の不動産に偏ります。
国の数は196ヵ国あって、
そのほとんど全てで、
売りに出されている収益不動産は数多存在するのに、
事実上、
選択肢としているのは「たった1ヵ国」。
・・ここからは「もしも」の話です。・・
もしも、
日本の投資信託法に「大きな縛り」があって、
日本の資産(日本株、日本債券、日本不動産等)を組み入れた投資信託しか買えない。
という法律があったら、
わたしなら、
投資信託など買いません。
〇 同じような地理的環境で、
〇 同じような建物形状の、
〇 同じような広さのマンション(コンドミニアム)の、
〇 同じ年間コストの、
〇 同じ税負担の、
〇 同じ程度の管理の煩雑さの、
〇 同じ「賃料」の(USドルで比較した場合)、
〇 同じ「賃料成長性」が期待できる、
例えば、
「東京」と「シドニー」(オーストラリア)の不動産が存在していて、
仮に「二つの投資対象」を比較できるとして、
シドニーの不動産のほうが(東京より)より安く買える状況であっても、実際的には東京の物件を買っているわけです。
「上場株式」のように、
話を新興国に広げればどうでしょうか?
例えば、
インドネシアやベトナムやカンボジアやインドの不動産なら、インカム(賃料収入)だけではなく、
長期投資を続けることで、
大きなキャピタルゲイン(値上がり益)も期待できます。
ところが不動産は
『個別特殊性』が強いため、
物件情報の欠如云々の問題だけでなく、
「誰に(どこの会社に)物件の管理を任せるか?」という、マネジメントの問題を乗り越えるハードルがあまりにも高いため、
結局、現実的選択として、みな「日本の」不動産を選ぶことになるわけです。
現実的には『選択肢』が
日本の不動産にほぼ限られてしまうため。
続く・・)
カテゴリ:投資の発想法