投資の発想法, 投資家の感情リスク

『損切り』という言葉にサヨナラしよう

2022年12月7日

こんにちは。
投資信託クリニックの カン・チュンド です。

今年の6月頃のお話です。

米国市場が急落しました。

 

大森さん(仮名)は
持っていた「ABCファンド」を
たまらず『半分』ほど売ってしまいました。

大森さんは
下落の大きさに耐え切れなくなったのです。

これはまさに
『感情』に任せて商品を売ってしまった例です。

 

が、
大森さんは

 

投資には『損切り』も必要と自分に言い聞かせました。

 

 

『損切り』・・。

フム。

気持ちはよーく分かります。

 

 

 

 

もしも大森さん(仮名)が、
「ABCファンド」の運用の仕方や、
手数料体系などにイマイチ納得がいっておらず、

市場が大きく下げた時に、
感情に任せて「その商品」を投げ売るのではなく、

 

心の内側に余裕を持って、

 

ファンド価格が下がったのは痛いけれど、
ここは戦略的に「ABCファンド」から、
別のファンド「DEFインデックスファンド」にお引っ越し(乗り換え)をしよう!

 

というお気持ちで、

 

もしも「ABCファンド」を売却されたのなら、
それは決して『損切り』ではありません。

 

 

なぜなら前者の大森さんと違って、
後者の大森さんは、

「ABCファンド」を売るのが目的ではなく、

 

より良い「DEFインデックスファンド」に
『引っ越し』をすることが目的だからです。

ココ、伝わっていますか?

 

 

 

 

カウンセリングの実務では、
外貨建ての保険商品の『損切り』についても、しばしばご相談を受けます。

 

「ドル建て終身保険」に加入して
5年になる関根さん(仮名)

 

関根さんは
40歳の時に同保険に加入し、
毎月600ドルの保険料を支払っています(年に7200ドル)

 

関根さんはさまざまな情報収集、お勉強を通じて、
この『ドル建て保険』が
割に合わない金融商品だと気づきます。

 

 

しかし目の前には「大きな障害」が・・・。

 

 

それは今、
この保険を解約してしまうと、

戻ってくるお金(解約返戻金)が
払い込んだ保険料の
6割弱になってしまうことです・・。

 

これって、
やはり『損切り』なのでしょうか? 

 

 

たしかに「ドル建て終身保険」を解約することだけが目的なら、そうかもしれません。

 

 

が、
もしも関根さんが
この保険を解約して、

 

 

 

 

以後、支払わなくてよくなる月600ドル分の保険料を、

一部貯蓄に回したり、
一部ファンドの積立投資に回すことが「目的」なら、

それは決して『損切り』ではないでしょう。

それはお金の用い方を変えることなのです。

 

 

よくお客様からは、

 

カンさん。
この保険を今解約すると、
『損』になってしまうので・・

 

という話を伺うのですが、

 

 

それって、
上記の関根さん(仮名)さんの例で言えば、

 

保険に加入した
これまでの『5年間』のみを見た実感ではないでしょうか?

 

 

 

 

関根さん。
35歳(契約) ・・  40歳(今)

 

支払った保険料 36000ドル
戻ってくるお金 21000ドル  もし今、解約したら・・

 

 

しかしこれだと、
全体図の『一部』しか見ていないことになります。

 

仮に関根さんは
この「ドル建て終身保険」を持ち続けると、

60歳まで
保険料(月600ドル)を払い続けることになります。

 

 

過去)5年間
35歳(契約) ・・  40歳(今)
支払った保険料 36000ドル

 

 

未来)20年間
40歳(今)・・・・・・・・・・・・・60歳
(これから)支払う保険料 144000ドル

 

14万4000ドルは、
1ドル135円で換算すると・・

1944万円です!

 

 

 

 

ほんとうは、

これから先、
支払い続ける保険料の『総額』を注視すべきでしょう。

 

 

関根さんが、
この「ドル建て保険」を解約すべきか否かは、

 

これから20年間、
ドル建て保険の保険料という名目のみで月600ドル、
20年間トータルで
1944万円(1ドル135円換算)のお金を払いたいのか?

 

 

それとも、

 

月600ドル相当のお金を、
一部は貯蓄、
一部は積立投資に回しつつ、
自分の、
あるいは家族の「多様なニーズ」に応えるためにお金を用いたのか?

 

この『比較』となるはずです。

 

 

 

 

 

考えてみてください。

保険料で支払う月600ドルは、
ドル建て終身保険という商品を維持するためだけに支払われます。

 

いっぽう、
月600ドル相当(月81000円・1ドル135円換算)のお金は、

 

例えば長女さんの教育費の「つみたて定期」のため、月1万円回すことが出来ますし、

関根さんご夫妻の老後の資金準備のために、
「つみたてNISA」で月3万円回すことも可能です。

 

あるいは一部を、

5年後をめどに、
義父母を招待してヨーロッパ旅行に行くための「積立」に回すことも可能。

 

 

さまざまなイベントの予定が変更になれば、
途中でペナルティーなしで引き出すことも出来ますね。

 

 

保険という商品に支払うのみの「保険料」と比べて、

月81000円というお金の、
使途の『自由度』が広がると思いませんか?

 

過ぎ去った過去の時間の中での「損得」を見るのではなく、
これから先の未来のお金の「置き場所」を考えてあげましょう!

 

 

 

 

あなたのお金は
いつでもやり直すことが出来るのです。

『損切り』という言葉にサヨナラしましょう。

 

損切りではなく、
より良い金融商品に「お引っ越し」をするのです。

カテゴリ:投資の発想法, 投資家の感情リスク

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